2016/3/3

為にする議論 & 『中国の歴史09』7  お勧めの1冊

<為にする議論>
先日の福島の事故について、池田信夫氏がアゴラで『福島第一原発事故は「メルトダウン」ではない』との議論を展開している。
http://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/4381/trackback
http://agora-web.jp/archives/1671528.html

同氏の意見は常々参考になると考えているし、それなりにリスペクトできると考えているがこの記事はイケマセンね。まさに「為にする議論」

同氏は「炉心溶融とメルトダウンを混同し」と間違いを指摘するが、どのサイトを参照しても、「炉心溶融」の英語訳にはmeltdownの一字が入っている。英語と日本語の違い、あるいは定義をめぐる難しさはあるが、無理な「こじつけ」はやめた方がいい。第一それならば「炉心融解」の別の英訳は何なのか? あるいはmeltdownの別の日本語訳は?

実際にwebで調べてみると、機械工学英和和英辞典での「core melt through」の意味は「炉心溶融」であり、同じ用法は特許庁でも使用されている。東電のプレスリリースに「メルトダウン」という言葉は出てこないと強弁しても、無理な論理。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2016/1267653_7738.html

ではなぜ同氏がこのような議論を進めるのか? それは明らかなこと、同氏が最初からの原発推進論者で「はじめに結論ありき」だからだろう。


『中国の歴史09』7
朱元璋が1380年に編成した「戸」は人民の労働力を直接帝国が支配するメカニズムで、それまでの元の築いていた「金」を用いた貨幣経済による経済合理性と反するものだとか。p180 それゆえ、皇帝の恣意的なプロジェクトも多く、その好例が万里の長城だとか。

ただし、この「戸」制度は明朝の朝貢貿易をうまく説明できると著者はいう。つまり、これまでの研究では朝貢貿易は明朝の出超貿易であると論じられることが多かったが、明朝が下賜した産物は「戸」から徴収した生産物で(貨幣経済によるものではないので)価格のないもの。つまり内廷からみれば「出超」という感覚はなかったと。p183


そのように説明されると朝貢貿易も長城もよく理解できる。これまで、万里の長城については精神的なものを強調した説明を聞いたことがあるが、それではどうしてもあの長大な長城を説明すうのは難しい。その後、遊牧民の家畜の移動を阻止するものとしての長城の説明はそれなりに納得できるものだったが、それはあくまでも秦時代の数メートル程度のものまで、明時代の巨大なものをうまく説明できなかった。しかしここにきてようやく後者を納得できる説明に出会った。

我々は万里の長城を議論する時、目の前にある現実の長城を見ながら議論する。これは間違いではないのだが、実はその長城の多くは明代に造られたもので「土手に毛が生えた程度」の秦代の長城を思い浮かべない。このことは注意すべきこと。

最初の話に戻れば、この明時代に新たに構築された「戸」システムもやがて「綻び」が生じ連鎖的に「戸」制度に基づく里甲制、衛所制、開中法が矛盾をきたし、たまたま日本の石見鉱山で発見された「銀」が大量に輸入されるようになったことから、この輸入銀を用いた貨幣経済を用いた運営に移行せざるを得ない状況が生まれたとか。p199
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