先日EUインスティチュート関西主催で
ドイツの文化政策の研究者でオペラ演出家・製作者でもある
マティアス・テーオドル・フォークト教授の講演が
神戸大学で行われました。
フォークト教授について紹介を。
ザクセン文化インフラストラクチャー研究所所長、
ツィッタウ/ゲルリッツ大学(ドイツ)経済学部
文化政策・文化史担当教授。
1959年ローマに生まれ、
ドイツで成長。音楽学、哲学、ドイツ文学をミュンヘン(修士)、
パリ、エクサン・プロバンス、ベルリン(博士)で学ぶ。
経済鑑定人、チーフ学芸員(バイロイト音楽祭)、
ドイツ、スイス、オーストリア
(ウィーン国立歌劇場、ザルツブルク祝祭)、
イタリア(ヴェネチアビエンナーレ、
ミラノスカラ座)、ブルガリア、ロシア、中国での
演出家としての活動をはじめ、
5ヶ国語による編著者としての約50作の著書および論文など、
実践と理論を架橋する研究者。
3つに絞ってその内容・感想を書きます。
(1)
講演タイトルは
「旧東ドイツ国境都市ゲルリッツ−ズゴジェレツの文化政策」
私の予想では「ここではこんなことしていまーす」的な
講演かと思いきや、
最初は「政治(政策)」とは?、「文化」とは?
という概念の話。
「政治(政策)」の概念として、有名な?ヘラクレイトスの
「争いは万物の父」について解説。
ちなみにこれは誤訳であるとフォークト教授も
通訳の藤野一夫神戸大学教授も言っていました。
またアウグスティヌスなど古代ギリシャ哲学も引用して解説。
「文化」の概念としてはゲーテの「ファウスト」を例に解説。
とかく政治だの文化だのという言葉を
私達は簡単に使いますが、
概念をしっかりと理解すべきと感じました。
(2)
具体的な話は今EUが進めている「欧州文化都市/首都」に。
1985年から毎年1都市を「欧州文化都市」と定めて
文化政策振興を行っています。
フォークト教授が住んでいるゲルリッツは
ポーランド・チェコと境界を接する都市で
文化遺産も沢山あり、「境界都市」の利点を活かして
パスポート見せるだけで自由に往来出来る
都市づくり・文化政策をしています。
2010年の欧州文化都市に立候補したのですが、
残念ながらエッセンに次いで第二位でなれませんでした。
ちなみに欧州文化都市には
ゲルリッツ(ドイツ)−ズゴジェレツ(ポーランド)として
二つの都市共同体として立候補している唯一の所です。
ゲルリッツ−ズゴジェレツのシンボルマークが
正六角形を二つ並べたマークなのですが
これは二つの都市を表しているとともに
ゲルリッツ−ズゴジェレツがEUの文化都市の中心だという
気概を表したマークでもあります。
私はこれを見てドイツの地理学者クリスタラーの提唱した
「中心地理論」を想起しました。
(3)
EUというと、私達がニュースで見る限りでは
政治経済的な「駆け引き」がされているところが
とかく目に付きます。
確かにそれは一方では事実でしょう。
しかし少なくともヨーロッパの指導者層や知識層は
困難を少しずつ解決しながらも
EUという枠組みを構築しようという方向性を感じました。
最後に余談。
私は関空にフォークト教授と奥様を迎えに行ったのですが
奥様は典型的なゲルマン美人のアートマネージャー。
フォークト教授は髭をはやしているので老けて見えますが
まだ40代です。
葉っぱを自分で紙に巻く紙巻き煙草愛用者。

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