神戸・王子公園の原田の森ギャラリーで開かれているこうべ芸文美術展に行ってきました。
神戸で活躍する作家たちがこぞって出品している展覧会ですが、なかでも東浦好洋さんの「遠い日〈二つの視角〉」は昔の港の風景を写実的に描いた油絵で、この街に住む者にはとても懐かしい作品でした。
白いデッキを真ん中にはさんで前後の甲板にマストが配されている大型の貨物船(あるいは貨客船?)は、大きな高い煙突から推してもどうも戦前のつくりですが、今のコンテナ船に比べてやっぱり風情があるんですね。
図体が大きくて足も速い現在のコンテナ船は確かに海運の効率を飛躍的に高めましたが、船型からいえば巨大な鉄の板にエンジンをつけただけの構造で、だからイカダに退行してしまっているわけですよ。詩情というものがないんです。
じっさい、美学がありました、昔の船には。
船乗りたちも、いかにもオレは海の男だ、ってカッコつけてね。
街を歩いてても特別な風が吹いていた。
いまはもう船員も普通のサラリーマンとぜんぜん区別がつきませんが。
でも、想像どおりあの絵の貨物船が戦前の船なら、たぶん戦争で沈んでしまっているでしょうね。
神戸港をにぎわしていた商船も戦争が始まると兵員や武器の輸送に徴用されて、バシー海峡あたりでみんな爆沈されたんです。

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