タイガースが好きになってもう50年を超えます。
妻との歳月よりずっと長い恋愛です。
その半世紀にあまる恋のなかで、ゆうべほどつらい思いをしたことはありません。
ジャイアンツに11対1で惨敗した、その敗戦のことをいっているのではありません。
甲子園球場を野球の聖地というのなら、昨夜のようなゲームはむしろ負けてよかったといえるでしょう。
いたたまれない思いにさらされたのは、タイガースの先発・ボーグルソン投手の汚い投球のせいなのです。
試合は巨人がボーグルソンを打ち込んで、4−0の優位のまま4回の表まで進んでいました。
ツーアウトでセカンドの塁上に二塁打をはなった巨人8番のホリンズが立っています。
バッターはピッチャーの内海です。
まずヒットを打てるバッターではありません。
ところが劣勢のボーグルソンは、その内海投手の頭を狙って投げたのです。
汚いビーンボールです。
ヘルメットが吹っ飛びました。
巨人ファンもゾッとしたでしょうが、ゾッとしたのは阪神ファンも同じです。
さいわい頭は直撃からまぬかれて大事に至らなかったのが何にもましての救いではありましたが、球場にもテレビの前にもとてもいやな空気が漂いました。
ボーグルソンの汚れた一球(Dirty ball by Bogelsong)が、ことし数々の名場面を築いてきた巨神の最後の一戦(24回戦)を台無しにしたのです。
今朝の新聞によりますと、ボーグルソンは「故意ではなかった」と弁解しているということですが、それはウソです。
意志の乗ったストレートがバッターの頭を狙ってまっすぐに進んでいきました。
すこし野球を見慣れた者にならわかることです。
そして投げ終わるか終わらないかのうちに、彼はもうマウンドを降りてベンチへ向かっていました。
「危険球」とアンパイアからジャッジされるのを、すでにわかっていたからです。
内海投手には、謝罪のカケラも示さずに、です。
むしろ顔には衆人環視のなかで悪意を遂げたもの特有の、あのギラギラした、悪魔的な表情が浮かんでいました。
テレビカメラのクローズアップをごまかすことはできません。
汚い一球のショックがファンだけでなく、現場の選手にも広がっていたことは、その4回の裏に赤星、シーツ、金本、という阪神の中軸バッターが、まるでフワーッと気の抜けたような三振にそろって倒れてしまったことでもわかります。
汚いボールは敵方ばかりでなく、味方の心も深く傷つけてしまうのです。
金本を中心に高貴な輝きさえ放ってきたタイガースの奇跡に、このアメリカからの新参投手は大きな汚点をつけたのです。
もしこのシーズン大詰めのデッドヒートで阪神が尻すぼみになっていくようなことがあったなら、ボーグルソンのこのダーティーな振る舞いがその大きな理由になるはずです。
ジャンといい、ボーグルソンといい、故意に死球を投げるような投手を引っ張ってくるのは、球団フロントの管理能力の問題でもあるでしょう。
それはぼくたちの猛虎魂への侮辱ですし、それどころか野球そのものへの侮辱です。
そういう汚い選手の契約はもう更改すべきではありません。

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