貞松・浜田バレエ団の公演「ラ・プリマヴェラ〜春」を明石のアワーズホール(明石市立市民会館)で見ました。
「ラ・プリマヴェラ」は春を迎える貞松・浜田バレエ団恒例の舞台で、いつもは本拠地の神戸で上演されるのですが、今年はお隣の明石市民への初めてのお披露目プログラムになりました。
有名バレエ曲のパ・ド・ドゥを並べる「名曲コンサート」(第一部)を皮切りに、20世紀を代表する振付家の一人バランシンの「セレナーデ」(第二部)、そして貞松正一郎さんの新作「ラグタイム」(第三部)の三本立ての構成でした。
「名曲コンサート」ではソリスト級のダンサーや期待の星が次々と高い技術と豊かな表現力を見せてくれます。
みなすばらしいパフォーマーですが、今年とりわけ輝いて見えたのは、「ドン・キホーテ」のキトリとバジルを踊った廣岡奈美さんと武藤天華さんのコンビではなかったでしょうか。
武藤さんは2006年の文化庁芸術祭新人賞を受賞した、いま注目のダンサーですが、大きな賞を受賞することがダンサーをこんなにも一気に成長させるものかと、じっさい、深い驚きを経験しました。
もとから動きのシャープな人でしたが、そこにいっそうの磨きがかかり、表現の奥行きが大きくなって、これはまさしく自信のなせるわざでしょう、気品と風格が加わりました。
廣岡さんの伸びやかなパフォーマンスも、ひとつひとつが持続の長い残像をきれいに遺して、美しい音楽を見るようでした。
「セレナーデ」は、ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパルだったジュディス・フューゲイトさんを指導に招いての上演です。
幾何学的な美しさの奥から深い神話世界が浮き上がってくるような、モダンで神秘な作品ですが、その重層的な構造が無上の透明感とともに表現されました。
バレエ界の世界的な遺産を、わたしたちのバレエ団がこの神戸で完璧な形で継承していく、その大きな意味は市民にとっても誇りです。(このプログラムの意味については、稿を改めてSplitterechoのWeb版に書くつもりです)。
「ラグタイム」は、場をパーティーに設定して、そこでの集いのひとときをダンスでつづっていくという趣向です。
テンポのいい音楽に合わせて、バレエのテクニックを思うぞんぶん駆使しながらの展開です。
シリアスな作品ばかりではなく、こういうポップなプログラムも軽やかに明るくこなす、そんなレパートリーの幅広さを印象づける舞台でした。

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