内田みきさんの個展が神戸・ハンター坂のギャラリー島田で開かれました(2009年2月14日〜19日)。
新しい感覚の絵画です。
アクリル絵の具の作品ですが、もともと平滑(水平)な画面が持ち味のそのアクリル絵の具で、なんと油絵のような厚いマチエールを作っていくのです。
むろんアクリル独特の効果がくっきりと出て、とてもエッジの利いた鋭いマチエールが現れます。
それも、すこぶる精緻(せいち)に作られていくのです。
白を主体にした広く明るい空間の部分と、微細なマチエールで生まれた密度の高い形象の部分、そのふたつのバランスが絶妙です。
それはサクラやフジの花の満開のようにも見え、海流のなかに浮かぶサンゴ礁の島のようにも見え、宇宙から見下ろす列島のようにも見え、つまり見るひとの想像力によって、いろんな物語がそこで展開するのです。
自在に、伸び伸びと展開します。
注目すべきは、まさしく素材(アクリル絵の具)が素材の姿のままそこに置かれて、そこに無限のビジョンが浮かび出てくる、素材と表現とのその“並行関係”です。
静物や肖像や風景を描く具象画とは、むろん根本的に違います。
けれど、心情や感情やあるいはなにかのイデーを表現する抽象画とも違います。
具象画も抽象画も、絵の具(素材)を絵の具を超えるもの(表現)に仕えさせようとする点では、同じスタンスにあるのです。
内田さんは、その従属関係をほどくのです。
内田さんの作品は具象や抽象といった従来のジャンルでは、もう分類の不可能な作品だということです。
それがこの画家の最も重要な特徴です。
激動の続く美術界を象徴する作品ともいえるでしょう。
少し時間をかけて、内田イズムの意味するものをちゃんと掘り下げてみたいと思っています(あらためて姉妹サイトのSplitterecho Web版に掲載するつもりです)。
内田みきさんのサイトは
http://miki-art.com/

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