バス停のちょっと手前に飲み物の自動販売機があるんです。
カワラぶきのふつうの民家の玄関口のすぐわきにあるんです。
おととい、散歩の帰りにそこで三ツ矢サイダーを買ったんです。
百円硬貨一枚と十円硬貨二枚を入れて、ボタンを押して、ドスン…。
すると、そのときのことでした。
すぐ横のガラス格子の引き戸がガラッとあいて、頭のはげた小さなおじいさんが顔を出して、言ったんです。
「ありがとうございました」
いきなりのことでびっくりしましたが、おじいさんが戸をあけようとしていたところにぼくがちょうどぶつかったんだろうと、すぐそんなふうに考えました。
まあ、とびっきり偶然ということでもないでしょうから、家に帰ったころには無論そのことはもうほとんど忘れていました。
おじいさんがあのちびまる子ちゃんのおじいさんそっくりなひとでしたので、その顔が少し尾をひいて残っていたかもしれませんが。
そして、これはきょうのことです。
また散歩の帰りにそこの自動販売機で三ツ矢サイダーを買ったのです。
きょうは五十円硬貨二枚と十円硬貨二枚を入れて、ドスン…。
すると、また引き戸がガラッとあいたんです。
そしてまた、おじいさんが顔を出して、言ったんです。
「ありがとうございました」
すると、どうしてなのか、こんどはギョッとしたんです。
なにか恐怖に近いものがザザッと体を走りぬけていったんです。
くどいようですが、ほんとうにちびまる子ちゃんのおじいさんそっくりな顔(むしろ頭?)なんです。
あさってもまた散歩にいきます。
ですが、あそこで三ツ矢サイダーを買う勇気がそのときに出るか、いまそれを思案しているところです。

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