退院して、体調も少しずつ戻ってきています。残念ながら12月3日の秋田市で開催される、おんぷの会クリスマスコンサートの出演はキャンセルさせていただきましたが、それ以後のコンサートには復帰できそうです。
そして、やっと、2011年のスケジュールの計画を考える余裕が出て来ました。正月明けには、大きな治療もひかえていますが、3月には恒例の50分コンサートを、6月には神奈川県民ホールでのリサイタル・・・と、3か月無事に過ごせたら次の3か月の計画を立ててゆくような目標を立てていきたいと思います。
さて、今回の入院中は、さくらももこさんのエッセイと、金子みすゞさんの詩を読んで過ごしました。特に、私の好きな作品のひとつとして歌っている「夜ふけの空」の作者でもある金子みすゞさんの他の作品にも触れることができ、感動しました。
音楽を聴いて、これまで何度も感動して来ましたが、「詩」だけを読んで、こんなに心が洗われた思いをしたのは、私にとって、とても珍しいと思います。
私は、フランス歌曲が好きなので、ボードレールや、ヴェルレーヌ、ランボーの詩を勉強しましたが、辞書で意味を調べたり、翻訳を参考にしたりしましたが、心から共感するというレヴェルにはなかなか達しません。コンサートで歌っても、毎度、「本田さん、もっとフランス語の発音を勉強したらどうかしら?」って言われて来ました。
歌っている本人がフランス語に慣れ親しんでいないのに、発音をどうにかしたところで、聴いている方に、私は何かを伝えることができるんだろうか・・・?背伸びをして、オペラ・アリアでも歌っているかのようではないだろうか・・・?
それでも、プーランクやドビュッシー、フォーレの作品は好きなので、コツコツ勉強するとして、今は、自分が自信を持って歌える曲を深めていくことが大切なように思います。それが、金子みすゞさんの詩だったり、日本語の作品だと確信してきました。
病気のことと演奏活動を分けて考えるようにしてきましたが、これまでの経験が音楽に与える影響は、もう、すでに大きなものがあるように思います。もちろん、音楽の作品の良さを引き出すことが私の仕事ですが、もうちょっと肩の力を抜いてもいいんじゃないかって思えてきました。
どうしても、歌唱法や発声、音楽の様式(スタイル)を考えると、これまで学んできた標準的な枠を超えてはいけない、こんなふうに演奏すると批判を浴びると、必要以上に意識しすぎていたところもあります。これは「客観性」を保持することにおいて、とても大切なことだと思うので、これからも、主観性と客観性のせめぎ合いを続けることになるのでしょうが、「肩の力を抜く」、そして、自分に相応しいプログラムを組んで演奏会を行なう、それが2011年の課題にしたいと考えています。そして、それを1枚のCDにまとめることができたらいいな、と思っています。
こんなことを具体的に考えるきっかけになった、金子みすゞさんの詩。
金子みすゞ詩の世界みすゞこれくしょん©HeartFactory