これまで、幼少期、思春期に私の人生を変えた5曲を紹介してきました。今日は初めて衝撃を受けた声楽曲にういて書こうと思います。
山形大学浪人中の19歳の時、声楽は受験科目の1つで、副専攻だったのですが、先生が誉めて下さるので、レッスンは毎週休まず通っていました。
そこで、レッスンが終わったあとに小野真弓先生が、 「本田くん、素敵な曲があるから聴いていかない?」と1枚のLPを出してきました。 それはシューマンの「ミルテの花」という25曲から成る歌曲集でした。シューマンが結婚式前夜に、妻となる愛するクララのために一夜で書き上げたといわれています。
その時は第1曲の「献呈」(捧げる詩)を聴かせてもらいました。なんだかよく分からないのですが、鳥肌が立ち、味わったことのないような感動に包まれました。これ以上にないハッピーなリズムに優しさと切なさが移り変わるメロディー、詩は「これ以上にあなたを愛するなんてできない、自分のことより大切なあなた!」と愛のすべてが込められた作品でした。
演奏はルチア・ポップでオペラでも各年代ごとに自分声に合った役柄を演じていました。あの時、この曲を聴いていなければ、声楽は受験科目のひとつだっただけに過ぎず、私の人生も大きく違っていたでしょう。
この曲を聴かせていただいたのは、センター試験の2〜3日前のことで、これから1週間も経たないうちに私はピアノ専攻から声楽専攻に志願変更し、山形大学で歌の道を選んだのでした。
実際、私がこの曲を人前でうたうようになったのは、初めて聴いた時から10年後となりました。