この日、神崎テレビでアナウンサーをしている美住涼子は普段のスーツから少しラフな私服で現場へと向かった。今回はアナウンサーやリポーターなどのテレビ局サイドの取材ではなく、新聞などに載せる記事を書くための取材であった。その待ち合わせ場所は東海電気鉄道神崎駅。美住も野乃原駅の近くにある自宅から仕事場のある神崎市まで、車ではなく愛菜線で通っている。見慣れた青系の塗装の電車と最近リフレッシュしたかのように塗装変更された東海電気鉄道の路線バス、車も多く行きかうこの駅で、バス会社『青葉台交通』の担当者を取材する事になっていた。取材する表題は『地域住民を守る路線バス会社』である。
美住自身も東海電気鉄道が路線バスに関するいざこざがあったときに取材をしたことがあり、その会社の事情は一応知っている。和解してから一応は『一員』となっているが、その子会社は親会社であるはずの東海電気鉄道とは提携会社として距離を置いている。株保有率などで見ても親会社ではない…。
「なぜ、そんなに複雑なのだろう」
その疑問も隠せないまま、待ち合わせ場所となっているバス乗り場へと向かった。

0