東海電気鉄道には、珍しい列車が時折運転される。
時間は23時過ぎ。神埼駅を出発する東海電気鉄道線の終電は、いずれも春菜線で、上り(東静高速鉄道線直通・三島方面行)が23時丁度、下り(快速・柚子原行)が23時16分発。
愛菜線が23時10分の石川町行き、今坂線は22時30分、青葉台線は22時20分発、舞方線は23時20分発の舞方行きがそれぞれ終電となる。基本的に、今坂線と青葉台線は、上りと下りの終電を兼ねており、向こうの終点駅で折り返し、最終的に神崎駅には23時30分ごろに戻ってくる。春菜線・愛菜線・舞方線のそれぞれの終電は、翌朝の始発電車として折り返すため、それぞれの終点駅に到着後は、点検の後に短い眠りにつく。
その中で、その珍しい列車が運転されるのは、春菜線の下り最終電車で、唯一、途中駅を一部通過する、快速電車として運転する。編成は、早朝の輸送実態を考慮して、4両編成で運転。時折、珍しい列車へと、この終電快速電車は姿を変える。

この列車は時折、先頭に電気機関車であるEL6500形が付く。
この際、動力は先頭の機関車のみとなり、後ろの電車は引っ張られるような形となる。室内灯とドア扱いなどのため、電車も一応は電気が通る。
柚子原到着後、電気機関車は切り離され、電車は始発電車の発車するホームへと入換作業を行い、点検を終えたのちに留置措置が取られる。
一方の電気機関車は、電車から切り離されると、同じように入換作業を行う。そして、ある車両と連結する。

柚子原駅に留置されている、旧1000形は既に引退済みのために車籍がない機械扱いであり、駅間を移動する際には自力走行は不可能となる。
そのため、最終電車に機関車を前付けして送り込み、機関車は旧1000形を連結して折り返し、神崎総合車両基地までの回送列車として走る。回送の理由はイベントでの展示やメンテナンスであり、基地や比較的広い駅の構内での自力走行は一応できるようである。ただし、本線上の走行は、線路閉鎖などの手続きを行った上での特殊な措置を講じなければ出来ない。その車両の回送のために仕立てられたものであった。
ちなみに、この電気機関車に前付けされた電車に乗務する運転士は、乗務しないのではなく翌日の始発列車の運転士を担当するため、先頭の電気機関車或いは電車に車掌とともに乗務し、柚子原での入換作業の後は仮眠をとる。
この奇妙な列車は、旧1000形1編成の静態保存車両が移動する限り、存在することになるだろう。

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