ここのところ、メールやネットで「この情報が信頼に足りるので共有しましょう」といっていろいろなリンクが紹介されているので「どれどれ」と読んでみると「本当に信頼してだいじょうぶのかなこれ」と思うような内容だった、ということが何回かあり、情報の海をじょうずに泳ぐのは難しいなあと思っていたが、今日は噴飯物のブログにいきあたった。TwitterやFacebookでリンクが回っている記事だという。
3月22日付けの記事でタイトルが
「退避勧告を一切出さなかったスウェーデン大使館」
いわく。
世界で最も平和なスウェーデンは、東京にどっしり腰をすえ、在日スウェーデン人への退避勧告を一切出しませんでした。フィンランドでさえ、東京とその以北からの退避勧告を出したのに、スウェーデン政府は一切しなかったのです。
あ、あの〜
…完璧に間違っている。スウェーデンの外務省は16日に福島原発から80キロ圏内にいるスウェーデン人に避難を勧告する声明を出しているし特別機も準備した。テレビでも新聞でも報道していたのだから間違いないし政府のホームページにも書いてある。
でも、これを書いた人はあえて「退避勧告をしなかった」(過去形になっているのも不思議)スウェーデンがどんなに賢くて勇気のある国かということをどうしても語りたいらしく、自国民に対して原発80キロ圏内からの退避を勧告した「好戦的なアメリカ」とスウェーデンを比較対照していろいろな考察をおこなっているが、つっこみどころ満載。読みたい方は上のタイトルで検索してみてください。
しかしこの「避難勧告しなかったスウェーデン」の記事を信じてしまう人はいるのだろうか。「こんなことを書いてもちょっと検索すればスウェーデン政府のページにいきあたるはずなのに」と思って
政府広報のページを覗いてみたら…この件にかんする外国語訳がない。日本への渡航を避けるようにという勧告も原発80キロ圏内からの避難の勧告も250キロ圏内におけるヨウ素錠剤服用の勧告(追記 これは解除された。3月29日。)もスウェーデン語では書いてあるが英語のリンクにその記事が見つからない。
もしかして、と思って日本のスウェーデン大使館のページを読んでみたら…これも同様で、スウェーデン語のページには避難勧告や大使館における錠剤配布などが書いてあるが日本語のページにはまったくそれらしきことは書いてない。というか、震災のこと自体まったく何の記述もない。確かにこれを読んでスウェーデンは震災や原発事故にもまったく動じず「東京にどっしりと腰をすえて」いるのか、と思い込む人がいてもおかしくないかもしれない。(注 これは冗談です)
とにかくこの日本語のページ、もともと更新が少ないのだろうか、去年某日本人がスウェーデンの勲章を授与されたというニュースなどが最初のページにのっている。そして最新情報のところには「「ニット&ウール」展とかテキスタイルデザインの展覧会のお知らせがあるだけ。
もちろん大使館が優先順位をまず在日スウェーデン人の安全の確保においていることは全く不思議はないと思うけれど、この日本語のページを見るとまるで日本には何事も起こっていないかのような錯覚に陥るのが解せない。12日経過した今も被災に対する記述もメッセージ(大使や首相のコメントとか)も一切ないというのは…上の勘違いブログほどではないとしても、かなり理解に苦しむ。
<追記>…と書いた数時間後にスウェーデン大使館の日本語のページが更新された。3月24日。
<もうひとつ追記>もしかして私が書いたことが誤解をまねいているのではないかと心配になったので書いておくが、私の知る限り在日スウェーデン人に対するスウェーデン外務省の勧告そのほかの情報の伝達は迅速に行われていたと思う。私が大使館の日本語ページが更新されていないこと(当時)について理解に苦しむと言っているのは「日本に対してお見舞いの言葉ぐらいあってもいいのでは」と思ったからである。

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