前回は彼女Greta Thunbergが大西洋を渡る前にそのMalizia IIというヨットの持ち主がBMW社他であることで突っ込まれていたことを書いたが、結局それはかつての所有者のことであり、もう塗装をし直したので特定の会社の宣伝になるようなことはない、ということが説明されて話は下火になり、彼女はそのヨットで二週間あまりかけて大西洋を渡って無事にニューヨークに到着した。…それはいいのだが、出航の二日後に「Malizia IIはアメリカ到着後にすぐヨーロッパに戻す予定」とちょっとびっくりの報道がされた。スウェーデンに戻ってくるときにはそのヨットはアメリカにはいないということらしい。カナダにも行くのだからグリーンランドに渡ったらいいのでは?と思ったけれど、グリーンランドからスカンジナビアまでヨットでというのは無理かもしれない。新しいヨットをチャーターするのだろうか。
(追記 この件でも意地悪くたたかれていたが、昨日(11月13日)ヨットでアメリカを出発したというニュースをテレビで見た。これで急遽チリからマドリッドに変更になったCOP25にも参加できることになりそうだ。帰りのアシがなくなったことについて彼女がTwitterで助けをもとめたところ、オーストラリア人のカップルがグレータとその父親をのせて大西洋を航海することを申し出たという。この二人はyou tuberらしいので、動画で航海の様子が発信されているのかもしれない。二人のカタマランの名前は La Vagabonde)
これはアメリカに到着した彼女についてのアメリカCBSニュースのまとめ。
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アメリカに到着し、ニューヨーク市での国連気候変動サミットに出席して行った彼女の演説があまりに迫力があったために、それまで彼女を知らなかった層にも彼女の名前は知られるようになった。
スウェーデンのテレビでもそうだったが、彼女の感情がほとばしっている"How Dare You!"の部分がやたらととりあげられて報道されていて、周到に準備して語った気候変動の現状や分析の部分まで聞いていない人もいると思うので、全訳のついたリンクを張っておく。
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そして今や-やっぱりという感じだが-勘違いや事実誤認による偏見に満ちた彼女に関するコメントが世界中にあふれている。日本で、外国で、そしてスウェーデンのメディアでも読んでいて首を90度かしげしまうような言葉がまき散らされている。
彼女に対する批判として、まあわからないでもないと私が思うものは「怒りや憎しみでもって地球を平和にすることはできない」というやや哲学的な言葉だ。グレータはこれまで行った数々のスピーチの中でも大人たちを鋭く糾弾、断罪してきたが、今回はいつになく厳しかった。
人間が共に生き続けるためには怒りではなくて愛や理解が大切だ…というのは正しい理屈だと思う。しかし、彼女を突き動かしているものは地球が破滅に向かっているという強い危機感と、それを容認している大人たちへの憤怒なのだ。私たち大人たちがまともにならなければ彼女の怒りはおさまることはない。
前にも書いたように、気候変動に関する会議に出席した際に会った政治家や有名人が「あなたのようなこんなに若い女の子が地球の未来を考えているなんて本当に素晴らしい!」と彼女を称賛はするものの、ろくな行動は始めようとしないことに対して彼女はいらだっていた。そんなことを言ってほめてもらうためにポーランドやフランスやイギリスにわざわざ来たわけではないのだ!アメリカについてからも彼女といっしょに自撮りをしたがる政治家たちに疲れている、という報道がされていた。そういう馬鹿な大人たちを見ていて彼女の怒りがつのって爆発するのは当然ではないだろうか。
…とは言っても、トランプ大統領の皮肉ツイートをそのまま自分の紹介文にしてしまった(一時的に)りするところを見ると、彼女がいつも怒り狂って吠えているわけではないということもわかる。この返し方はナイスだ。
その他は「学校をさぼりたいだけだろう」「先進国で何の苦労も知らずに育った金持ちのくせに」「あんな子供が気候変動について客観的な考察ができるわけがない。誰かブレーンがいて操られているに決まっている」「親が有名人だから親がメディアに売り込んだのだ」などどれもとりあげる必要がないような無責任なヘイト発言だと思う。さらに彼女がアスペルガー症候群ほかを持っていることについても無知な中傷コメントが目立つ。
ちょうど昨日テレビのトークショー(収録はニューヨーク。映画監督のマイケル・ムーアも出演)でカナダに出発する前の彼女が出演していて、ホストのFredrik Skavlan(ノルウェー人)に「あなたに対する批判やヘイト発言をする人がいるがどう思うか。」と尋ねられた。
彼女は「もちろん苛立ちます。」と答えた。「−人々がそういうことをツイートしたりして時間を使うことに。その時間をもっと有効なことに使うことができるはずです。」…本当にブレない、この人。
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