朝の四時、珍しく目が覚めた。いつもはどうしょうかと迷うのが常なのだが、今日は洗顔し、支度をして、躊躇なく車に乗った。高速を走り、相模湖インターでおり、道志へと向かう。下から登ろうか、テレビ中継塔まで走ろうかと考えながら走っていく。結局、曙橋から細い林道を走り、テレビ中継塔のある広場に車を止めた。
檜林を歩き、広葉樹林の中に入ると、斜面は急になり、すぐに汗が出てきた。間もなく、小さな東屋の立つ『菜畑山』山頂に飛び出した。丹沢の山並みが広がっている。西側には、雲の掛かった富士山が眺められた。手前に今倉山も見えている。山頂南東斜面は、草原になっていて、花が多かった。
ツリガネニンジン、ヒメジオン、キオン、キンミズヒキ、ヨツバヒヨドリ、コオニユリ、タムラソウ、シシウド、シラネニンジンなどなど、見ていると、気持ちが明るくなる。
長い下りを歩き始める。まだかまだかと思うほど、鞍部までの下りは長かった。その上に急だった。小さなコブを一つ越し、登り返していく。此の登りの斜面も急だった。汗がかなり絞られた。登山道脇に、青紫の鐘状の花を下げて、ソバナが顔を見せる。
一歩一歩足を置いていく。荒い息で足元を見ると、可愛いタマガワホトトギスが風に細かく揺れていた。タマガワホトトギスは次々と現れた。やがて、標識のある、『ブドウ岩ノ頭』に登り着いた。山頂は、更に奥に入った所だった。
ザックをおろし、喉を潤しながら風を受けた。お稲荷さんを口に入れる。美味しい。のんびりと20分も休んでしまった。ザックを担ぎ、下り始めて、またまた驚いた。かなりの下りだった。風車の様な花を付けたオクモミジハグマを見つけた。
鞍部には道志口峠の標識があり、再び急な斜面を登り返していく。ゆっくりゆっくりと足をあげて行く。笹が多くなり、道を被る様になってきた。何度も大きなアップダウンを繰り返して、やっと『赤鞍ヶ岳』山頂に登り着いてホッとした。地図にある朝日岳の文字は何処にも見られなかった。
しばらく休んでから、もう一つの赤鞍ヶ岳を目指す。少し下った分岐の道標は朽ちて読めなかったが、方角的には間違いないと、左尾根の踏み跡を歩き始めた。途中、巌道峠を示す道標が一つあっただけだった。登山道には幾つかモミジガサが見られた。やがて、三角点のある『赤鞍ヶ岳』に着いたが、山名標識は文字が霞んでいて分からなかった。地図によると山名をワラビタタキとも言うようだ。
少し先、笹のトンネルを抜けた所に赤倉雨量観測所の建物があり、手前の草地で休んだ。戻りが大変だなと思いながら、重い腰をあげて来た道を歩き始める。強い風が吹いて来て、雨が降ってきた。雨はかなり強くなり、上だけ雨具を付けた。その雨も、菜畑山に戻り着くころには止んで、青空が広がり始めた。しかし、きつい登り返しだったが、菜畑山への登り返しが一番きつく、何度も足を止めた。
東屋で長い時間休んでから、今倉山への稜線を歩きだす。こちらは気持ちいい尾根歩きだった。アップダウンも少なく、風を受けながらのハイキングだった。キバナアキギリが登山道脇に小さなを花を見せている。一面下草に覆われた場所になるとフシグロセンノウの朱色の花が緑に映えて一際目立っていた。展望の無い『水喰ノ頭』に立ち、菜畑山に戻った。
東屋には夫婦者らしき男女が居た。頭を下げ、登山口に戻った。今日は花を探して写真を撮ったりの山歩きだったので、けっこう時間が掛かった。しかし、赤鞍ヶ岳の方は、笹が多くあまりいい山歩きだったとは言えないが、予定通りの歩きができ、満足ではある。

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