塩原温泉ビジターセンターで知った山のうち、(寺山)だけが残っていた。そろそろ塩那スカイラインのゲートが閉まる頃なので、重い腰を上げた。今日も天気は良く、塩原の山々の紅葉が真っ青な空に映えていた。第一ゲートを過ぎ、クネクネとスカイラインを上がって行く。ミズナラやモミジの葉が綺麗だ。高度が上がるにつれ、高原山が大きくなってきた。日留賀岳が青いキャンパスに見事な三角の山形を見せている。

●塩那スカイライン●
景色を楽しみながらしばらく走ると、終点の土平園地に着いた。既に2台の車が止まっていて、ザックを背負った男女が丁度、山に入っていくところだった。

●土平園地●
一服してから、支度を始める。小笹の中を歩き出すと、間もなく、うっすらと雪が出てきた。天気が良く、陽の当たる場所では、雪は、全く消えていた。気持ちいい歩きがスタートである。

●春の様に暖かい道●
しばらく歩いていくと、弥太郎山が見えてきた。気分良く歩いていくと、やがて、鉄塔の立つ尾根に出た。弥太郎山が大きく見える。

●尾根から見る弥太郎山●
ここからしばらく下り、右の尾根に沿って歩いていく。平らな道になり、やがて、少し下ると、(塩原自然歩道の植物)と書かれた看板の立つコルになり、ここからは、七号鉄塔への斜面の登りになる。

●看板の立つコル●
白くなった道を登り始めると、前方に先ほどの男女の後姿が見えてきた。ジグザグに登って行く。途中、東電の黄色のプラスティック柱の立つ場所の右手の笹の中に踏み跡のようなものを見つけた。黄色のテープも下がっている。ここが(自然歩道)かも知れないと、道から離れ、笹の中へと入ってみる。

●廃道の自然歩道跡●
笹の中を歩き始めるが、すぐに踏み跡は無くなった。峠のようなところに立つと、先は切れ落ちていた。仕方なく、左へと笹の中を歩き出す。すると、所々に踏み跡が現れた。しかし、急斜面なので、滑ったら、やばい。

●斜面を歩いていく●
しばらく歩いていくと、崖のような場所に出た。沢状の場所に下り、渡っていく。こんな所に(自然歩道)があったのか。

●沢状の場所から上を見上げる●
沢を横切り、少し笹の中を進んでいくと、はっきりした道形が現れた。しかし、それもすぐに終わった。やがて、平になり、朽ちた道標の立つ場所に出た。(左、土平・右、沢渡)と読める。鉄塔に上がらずに済んだので、時間は短縮できたが、帰りは歩きたくない。

●自然歩道の道標●
小笹の中の踏み跡を歩いていく。間もなく、急な下りが始まる。笹の中に、朽ちた木段がある。明るく気持ちがいい。しかし、両足の親指の爪が半分はがれていて、カットバンで巻いてあるのだが、くだりになると、爪が当たり、痛みが出る。

●笹尾根の気持ちいい下り●
ゆっくり、ゆっくり、爪先に気を使いながら足を置いていく。ここで、一本立てる。風が出てきて、辺りが急に賑やかになってきた。熱いコーヒーがなんと美味しいことか。

●急な斜面で、一息つく●
ザックに鈴をつけ、更に下り始める。しばらく歩いていくと、前方に目指す山が見えている。尾根が広くなった所で、右へと方向を変え、沢に下りた。地形図を見て、沢の先の笹尾根へと上がり、歩いていく。

●斜面から見た寺山●
笹の中を適当に歩いていくと、柱だけになった道標の残骸が立っていた。道形は無いが、ここを自然歩道があった様である。地形図を見て、深くなった沢の上の縁を歩いていく。

●沢の縁を歩いていく●
しばらく歩くと、崖になり、端を歩いていく。うっすらと踏み跡が見える。いよいよ山頂への登りである。広い斜面が広がっている。

●急斜面の登り●
真っ直ぐにピークを目指して足を上げていく。しかし、急な斜面である。凄い汗である。やがて、狭い笹の中のピークに登りついた。赤のテープが幾つも付けられていた。結構、訪れる人が居るようだ。木々の中、展望は良くないが、暖かくて、気分のいい『寺山』山頂だった。木々の間に、白倉山が見えるが、八汐ダムは眺められなかった。笹の上に腰をおろして、食事とした。 暖かいコーヒーを飲みながら、お握りを口に運ぶ。イヤー、極楽、極楽である。予定した時間より、30分早く届いた。いい気分になっていると、後ろでガサガサと音がした。熊さんか、鹿さんか、はたまた、サルさんかと思って、振り返るが、何も見えない。立ち上がると、なんと、四匹の日本カモシカさんがこちらを見ていた。写真を撮ろうと手をポケットに入れる瞬間、さっと笹の斜面を下っていった。

●寺山山頂にて●
帰りに、鉄塔まで登り返し、更に、鉄塔の立つピークに立った。狭い山頂からは、鴫内山から黒滝山へと続く山並みが眺められた。ここまできたのだからと、『弥太郎山』にも歩いてみた。ここで、一時間近く時を過ごした。風が強いのだが、空に浮かぶ雲はゆっくりと動いている。遠く、日留賀岳の姿が眺められる。いつまでも、飽きない山頂だった。しかし、何処で失くしたのだろう、帽子が無い。

●黒滝山の山並み●

●弥太郎山山頂●

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