2006/1/29
通信放送融合問題 ブロードバンド政策
1月26日(木)、慶応大学において通信・放送融合をテーマにコンファレンスが開催され、私もパネリストの一人として出席し、問題提起をした。その内容は5項目。
第一に、そもそもメディアとは何かという問題。既に個人の映像ブログやビデオ系ポッドキャスティングも続々登場し、個人のコンテンツもネット経由で国境を越え、誰にでも提供できる時代。象徴的なのはホワイトハウス記者会。昨年からブロッガーも記者クラブの一員。個人がコンテンツを流すと表現の自由が保障されるけれど、いわゆるメディアについては公共性とか中立性が適用される。これはどう理解すれば良いのだろうか。
第二に、規制の同等性をどう確保するかという問題。競争政策の観点から見れば、ユーザーから見て同じサービスには同じ規制を適用すべき。我が国では電気通信役務利用放送法を整備し、CS放送やCATVについてはハードソフト分離型の競争モデルを導入した。今後、IPマルチキャストをはじめとする多様なサービス供給形態が登場する中、この役務利用放送法の枠組みを維持するだけで十分か、あるいは包括的な融合法制が必要なのか考える必要が出てくるだろう。
第三に、市場が融合する中で市場のドミナンス性をどう考えるかという問題。最近は垂直統合型のビジネスモデルが多数登場しており、これを契機として市場の垣根が取り払われ、実態としての融合が進展している。簡単に言えば通信放送市場全体、もう少し詳しく言えば、通信・放送の伝送路、伝送サービス、プラットフォーム、コンテンツ等の各レイヤー(事業領域)のどこかにドミナンスが存在し、それが他の領域にレバレッジをかける可能性をどう考えるか。
第四に、ブロードバンドインフラのコストは誰が負担するのかという問題。最近では一部のヘビーユーザーやリッチコンテンツの供給者が帯域の多くを占有する事態も出て来ている。ライブ系のコンテンツ配信も多い。ピーク時を見込んだ設備キャパシティを整備するとして、他方、ブロードバンド料金は定額制で均等負担。とすると、一部のユーザーやコンテンツ供給者のためにブロードバンドユーザー全員がコスト負担しないといけない。アメリカでは「ネットワークの中立性」といわれる議論。このネットワーク「ただ乗り」論についてどう考えるか。
第五に、通信・放送融合問題を国民にどう伝えるのかという問題。アメリカでもFCC(連邦通信委員会)がメディア所有規制の見直しを数年前に決定した。「今やインターネットの時代でメディアの独占性は薄い」というのがパウエル委員長(当時)の主張。しかし、これに地方の住民は「放送のローカリズムが壊れる」として猛反発。連邦議会には抗議の手紙が殺到。ついに連邦議会はFCCの決定を覆すこととした。通信・放送問題は国民にとても身近な問題だ。国民利用者のコンセンサスを得る努力が必要ではないか。
この会議では経済産業省の境さん、中村伊知哉さん、TBSの前川さん、日経デジタルコアの坪田さんらをはじめ、参加された約50名の皆さんと議論。とても有意義なものだった。モデレータの金先生も議論を上手く整理された。関係者の皆さんに心から感謝したい。
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第一に、そもそもメディアとは何かという問題。既に個人の映像ブログやビデオ系ポッドキャスティングも続々登場し、個人のコンテンツもネット経由で国境を越え、誰にでも提供できる時代。象徴的なのはホワイトハウス記者会。昨年からブロッガーも記者クラブの一員。個人がコンテンツを流すと表現の自由が保障されるけれど、いわゆるメディアについては公共性とか中立性が適用される。これはどう理解すれば良いのだろうか。
第二に、規制の同等性をどう確保するかという問題。競争政策の観点から見れば、ユーザーから見て同じサービスには同じ規制を適用すべき。我が国では電気通信役務利用放送法を整備し、CS放送やCATVについてはハードソフト分離型の競争モデルを導入した。今後、IPマルチキャストをはじめとする多様なサービス供給形態が登場する中、この役務利用放送法の枠組みを維持するだけで十分か、あるいは包括的な融合法制が必要なのか考える必要が出てくるだろう。
第三に、市場が融合する中で市場のドミナンス性をどう考えるかという問題。最近は垂直統合型のビジネスモデルが多数登場しており、これを契機として市場の垣根が取り払われ、実態としての融合が進展している。簡単に言えば通信放送市場全体、もう少し詳しく言えば、通信・放送の伝送路、伝送サービス、プラットフォーム、コンテンツ等の各レイヤー(事業領域)のどこかにドミナンスが存在し、それが他の領域にレバレッジをかける可能性をどう考えるか。
第四に、ブロードバンドインフラのコストは誰が負担するのかという問題。最近では一部のヘビーユーザーやリッチコンテンツの供給者が帯域の多くを占有する事態も出て来ている。ライブ系のコンテンツ配信も多い。ピーク時を見込んだ設備キャパシティを整備するとして、他方、ブロードバンド料金は定額制で均等負担。とすると、一部のユーザーやコンテンツ供給者のためにブロードバンドユーザー全員がコスト負担しないといけない。アメリカでは「ネットワークの中立性」といわれる議論。このネットワーク「ただ乗り」論についてどう考えるか。
第五に、通信・放送融合問題を国民にどう伝えるのかという問題。アメリカでもFCC(連邦通信委員会)がメディア所有規制の見直しを数年前に決定した。「今やインターネットの時代でメディアの独占性は薄い」というのがパウエル委員長(当時)の主張。しかし、これに地方の住民は「放送のローカリズムが壊れる」として猛反発。連邦議会には抗議の手紙が殺到。ついに連邦議会はFCCの決定を覆すこととした。通信・放送問題は国民にとても身近な問題だ。国民利用者のコンセンサスを得る努力が必要ではないか。
この会議では経済産業省の境さん、中村伊知哉さん、TBSの前川さん、日経デジタルコアの坪田さんらをはじめ、参加された約50名の皆さんと議論。とても有意義なものだった。モデレータの金先生も議論を上手く整理された。関係者の皆さんに心から感謝したい。

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