谷脇康彦(たにわき・やすひこ)  84年、郵政省(現総務省)入省。OECD事務局(在パリ)ICCP課(情報・コンピュータ・通信政策課)勤務(87-89年)、電気通信局事業政策課課長補佐(93-97年)、郵政大臣秘書官(99-00年)、電気通信局事業政策課調査官(00-02年)、在米日本大使館ICT政策担当参事官(在ワシントンDC、02-05年)、総合通信基盤局料金サービス課長(05-07年)、同事業政策課長(07-08年)を務め、08年7月より現職。ICT政策全体の総括、通信・放送の融合・連携に対応した法体系の検討、ICT分野の国際競争力向上に向けた施策展開などを担当している。著書に「世界一不思議な日本のケータイ」(08年5月、インプレスR&D)、「インターネットは誰のものか」(07年7月、日経BP社)、「融合するネットワーク」(05年9月、かんき出版)。日本経済新聞(Nikkei Net) ”ネット時評”、日本ビジネスプレス”ウォッチング・メディア”などへの寄稿多数。

2006/1/22

iCon  書評

 最近"iCon"(J.S. Young&W.L.Simon共著、東洋経済新報社)を一気に読んだ。アップルコンピュータを作り、追い出され、復活したスティーブ・ジョブスの伝記。一気に読み通してしまった。訳もこなれていて読みやすい。
 アップルがWindowsに押されながらもしぶとく生き残ってきたのは、そのユーザー本位に徹した製品作りにある。昔、大学の研究室で初めてアップルコンピューターIIを見た時のオドロキ。パリのOECDで最初にマッキントッシュに触った時の衝撃。今もよく覚えている。とにかくマニュアル無しに触る事ができた。それにつけても思い出して欲しい、Windows OSの非協力的な姿勢を。マニュアルも全然厚みが違う。さて1月20日の日経夕刊1面の「おじさんは怒ってるぞ」欄を見てポンと膝を叩いた。Windowsでお馴染みの「このプログラムは不正な処理を行ったので強制終了されます」という表現に怒り狂っている。そのとおりだ。一体俺様を誰だと思っているんだ。こっちは「所有者」、ご主人様だ。アップルの場合、こんなことはない。この本を読んだこともあって、さっそく数日前にまたアップルのパソコンを購入してしまった-----皆な最近はコンファレンスとかでレッツノートを使っているけれど、わしゃマックじゃ!-----が、そのメッセージの優しいこと。「さぁ、一緒になんとかしましょう」的な前向きさがある。ご主人さま本位で楽しい。まちがっても「不正な処理」などと歯向かってこない。ここで気がついた。そうか、アップルのパソコンはご主人本位の「萌えパソコン」なのかも知れないな。
 話が全くそれてしまった。こうしたアップルのユーザー本位の姿勢はジョブス自身の哲学に基づくものだろう。そもそもゼロックス研究所のGUIを見せてもらってこれをベースにアップルのGUIが出来上がったという話。彼が結局アップルに呼び戻されることとなったのは当時の彼の会社ネクスト社のOSであるネクストステップをアップルに搭載することが求められたから。そして、昨今のiPodの成功。これもユーザーの立場からコンテンツのネット配信における著作権保護をどの程度緩くすればよいか、iTunesというソフトをどう使い勝手よくするかといった事を深く考えたことで広く支持を得たと言えるだろう。マックというとパソコンのハードのイメージがあるけれど、アップルの競争力、そしてジョブスの成功のきっかけはソフト関連だ。
 パソコンはその中身を生産している部品メーカーはほぼ同じで大同小異。OSの違いだとか、その上で動くアプリがより大事になってきている。更に、ブラウザーのグーグルやヤフーがワープロソフトなどのアプリケーションを提供するとか。どんどん、上のレイヤーに重要な要素が移行している。ブロードバンド時代のビジネスモデルは更に急速に進化し続けていくことだろう。
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