谷脇康彦(たにわき・やすひこ)  84年、郵政省(現総務省)入省。OECD事務局(在パリ)ICCP課(情報・コンピュータ・通信政策課)勤務(87-89年)、電気通信局事業政策課課長補佐(93-97年)、郵政大臣秘書官(99-00年)、電気通信局事業政策課調査官(00-02年)、在米日本大使館ICT政策担当参事官(在ワシントンDC、02-05年)、総合通信基盤局料金サービス課長(05-07年)、同事業政策課長(07-08年)を務め、08年7月より現職。ICT政策全体の総括、通信・放送の融合・連携に対応した法体系の検討、ICT分野の国際競争力向上に向けた施策展開などを担当している。著書に「世界一不思議な日本のケータイ」(08年5月、インプレスR&D)、「インターネットは誰のものか」(07年7月、日経BP社)、「融合するネットワーク」(05年9月、かんき出版)。日本経済新聞(Nikkei Net) ”ネット時評”、日本ビジネスプレス”ウォッチング・メディア”などへの寄稿多数。

2006/11/26

今年も残り少なくなってきました  エッセイ

今年も後1か月。早いものである。仕事の話は抜きにして、今年もあちこちの展覧会に顔を出した。先週は上野のダリ展を見てきた。フロリダのダリ美術館にも2年前に行ったので見たことのある作品も多かったが、今回は本家スペインのダリ美術館から多数出品されており、なかなか見ごたえのある展示だった。それにしても開館直後に行ったというのに、あの混雑は何だ!ダリってそんなに人気だったっけ?でもまぁ、作品を見ていて、映画の背景に使われた絵があって、「これヒッチコックのなんていう映画だったっけ」と考えていたら、後ろにいたおばあちゃんが「あぁ、白い恐怖のあれね」というので、そうそう、ヒッチコックの「白い恐怖!」と納得。思わずおばあちゃんを抱きしめそうになってしまった。

さて、日本のモダンアートということでは、9月の束芋展もよかったが、なんといっても出色は10月にはるばる青森弘前まで足を延ばした奈良祥智展だ。当日、集中豪雨の影響で電車がキャンセルされたりする中、ヘロヘロで会場到着。奈良祥智は今や世界で有名なアーティストだが、小さい小屋に自分の作品を飾り、小屋それ自体がひとつの作品になっている。その小屋を今回は数十も集めた、これまでの作品の集大成となった。弘前は奈良の故郷だが、その弘前の造り酒屋のひろいレンガ倉庫に小屋たちを集めて展示。倉庫それ自体がひとつの奈良ワールドになっていた。東京から来ていると思われるお客さんも多く、特に20代NY前半から半ばくらいの若者が多かったようだ。この奈良祥智や村上隆の作品に初めて触れたのは、実はNYのMOMAだった。MOMAで一際注目される展示が彼らの作品だった。今、日本のモダンアートやコンテンツが注目されている。もっと文化の発信をやっていきたいものである。
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2006/11/26

米国中間選挙も終わって  エッセイ

米国中間選挙が終わり、やはり民主党が勝利した。下院での優勢は読めていたものの、上院でも過半数を獲るかどうかは正直よくわからなかった。イラク戦争からの撤退論という民意を反映したものだろう。

連邦議会では多数派の政党がすべて委員会の委員長を占める"winner takes all"の制度が採られている。このため、テレコム関係でも上院委員長は日系のイノウエ上院議員、下院委員長は強硬派としても知られるディンゲル下院議員が委員長に就任する予定。すでにAT&TとBellSouthの合併問題、メディア所有規制の再見直しなどの問題について、軌道修正が示唆されるコメントが相次いでいる。来年1月から新しい会期に入る連邦議会。ネットワークの中立性を巡る議論をはじめ、これまで以上に民主党的な色彩の強い政策展開が行われていくだろう。

既に米国ではThanksgivingの休暇。米国連邦議会は、今年いっぱい、既にレームダックセッションであり、予算案以外は特段の動きはないだろう。そのThanksgiving Dayの休暇も終わろうとしている。Thanksgiving Dayには皆な実家に帰ってプレゼントを交換したり、七面鳥を食べたり。この時期、高速道路はプレゼントと思われる包みを満載した車であふれる。その七面鳥。グレービーソースをかけて食べる。「あれ、本当においしいと思ってんの?」て一度米国の友人に聞いてみたら、「あんなまずいものはないんだ」と吐き捨てるように言っていた。やっぱりそうなんだと妙に合点した。でもって、その翌日になると、After Thanksgiving Dayのセールが朝6時くらいからデパートで始まり、大騒ぎになる。そして、一気にクリスマスモードへとなだれ込んでいく。DCの人気FMステーションも12月に入ると、クリスマスソングしかかけない。町もクリスマスのイルミネーションでいっぱいになる。

東京でもクリスマスのイルミネーションが点灯し始めた。通勤経路に位置する歌舞伎町も、夜は白い光の列のイルミネーションが点灯。話はそれるが、歌舞伎町は特に朝の雰囲気が面白い。ホストクラブで朝まで飲んだお姉さん達がホストさんに送られてタクシーで帰っていく。一日の仕事を終えたホストさん達が路上でタムロしている。なぜかホストさんの格好は黒いスーツの上下に、先のとがった靴。髪はあくまで空に向かってツンと立っている。歌舞伎町の朝のもうひとつの名物はカラスの大群。ホストとカラス、2つの黒がシンクロしている。やがて、仕事を終えたホストさんたちは大久保方面の自宅へと家路を急ぐ。手にはドンキホーテの黄色いビニール袋が握られていることが多い。朝の牛丼屋で丼をかきこんでいるお兄さんたちも。ホストの仕事も大変そうだ。それにしても、朝まで飲んでいるお姉さん達はホステスさんだろうか。結構かわいい。とすると、サラリーマンからホステスのお姉さん達へ、お姉さん達からホストのお兄さんへ、と一晩のうちに所得移転が発生し、日本のGNPを引き上げているということか。経済学を学ぶ若い諸君は歌舞伎町で生きた経済を学んでみてはどうだろう?

今回は出だしのテーマからまったく外れてしまった。なんで中間選挙から歌舞伎町のホストさんの話になったのかよくわからないが、ま、いいか。
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2006/11/5

米国中間選挙を前にして  エッセイ

通勤途中はポッドキャスティングで米国ABCとNBCのニュースを聞いていることが多い。それぞれ約20分くらいでよくまとまっている。これにNew York Timesのheadlineを読み上げる5分番組も要領よく整理されていて有益だ。CNN pipelineでネット上でCNNを観ることもできる。なんかアメリカに住んでいた時よりも米国のニュースをよく聞いているような気がする。そして、最近の話題はなんと言っても中間選挙だ。

アメリカで選挙というとかなり盛り上がる。住宅の周りには「私は誰々をサポートします」という看板が家の前の芝生に立っている。04年の大統領選の際には近くを散歩していたら、お向かい同士の家で「ブッシュ支援」と「ケリー支援」の看板が立っていた。その後、ご両家は仲良くしているだろうか。ちなみに、子供の通っている高校や中学校では、ほとんど親が民主党支持者なので全くアメリカの実態を反映していない。DC近郊のメリーランドやバージニアに住む知識階級と一般のアメリカ国民は相当違うものだ。

一度投票所にも見学に行ったことがあるが、メリーランド州のとある投票所では電子投票が導入されており、投票の手順が英語、スペイン語、ドイツ語、韓国語の4カ国語で記載されていた。タッチパネルのスクリーンを押していくと、自動的に投票が完了する。一回の投票で、国会議員からカウンティの教育委員、はたまた州法の改正に関する住民投票まで、あれこれの投票をするので結構一人当たりの時間がかかる。面白いのは、投票所の前にも「誰々に投票しよう!」というプラカードを持った人達が多数詰め掛けて雄たけびを上げていることだ。この電子投票、結構問題が多く、小生が見学した際にも結局そのあと壊れたらしい。また、開票がいつもより遅れたと聞いたので何故かと聞いたところ、データを収容したカードを持った車が押し寄せて大渋滞したからだとも聞いた。真偽のほどは定かではないが。

投票する項目が多いということは、各党とも間違った投票をされては困るということになる。大使館で私の秘書をしてくれていた彼に聞くと、彼は民主党員なのだけれど、党から投票用紙と同じ様式に、どこをチェックすればよいのか、イエスかノーか、というのを懇切丁寧に書いた紙をもらって、そのとおりにチェックすることになっていた。これなども日本でやったら多分ダメなんでしょうね。

今回の中間選挙でも話題になっているのがネガティブキャンペーン。兎に角テレビでのネガティブキャンペーンは凄まじい。今回も選挙終盤になって民主党ケリー上院議員の失言(かとうが微妙なのだけれど)問題で、また盛り上がった。04年の大統領選でも、もはや民主党候補は確実と思われたハワード・ディーン候補が、ワイシャツを捲り上げて、「DCに行くぞぉ、イェー!」とかなり素っ頓狂な声で叫んだのが繰り返しテレビで流れ、「こんな感情の高ぶりを見せる人で大丈夫か?」という懸念が高まり、ディーン人気は急速に遠のいていった。その際、ネット上で人気を集めたのがディーン候補の「イェー!」演説をサンプリングしてラップにした曲。これが実にうまく作られていた。最近では、こうしたネット上の中傷合戦に加えて、YouTubeもかなり使われているようだ。

通信業界の規制組織であるFCCを今悩ませているのは、AT&TとBellSounthの合併問題。10月の定例会合でまとめる筈が深夜に及ぶ交渉の結果まとまらず、中間選挙前の11月3日に会合を繰り上げて開いたものの、依然調整は進まず、結局、中間選挙前の決着は見ることができず、12月会合に先送りされた。民主党委員2名の頑張りは政治的アピールの色彩が強い。そこで議論されているのが「ネットワークの中立性」の議論だ。米国でのこの議論はかなり政治のニオイがする。米国の通信政策も、この中間選挙の結果次第で流れが変わる可能性もあり、注目が必要だ。
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