柳沢きみお「グッドガール」・「妻をめとらば」
柳沢きみお作品紹介の3回目、前回は成人系の「不倫モノ」を紹介しましたが、今回はオーソドックスな「恋愛モノ」から2作ご紹介しましょう。
@ 「グッドガール」 (★★★☆☆)
高校2年生の主人公「寺山修」くんの、「恋人探し」をモチーフにした、ほのぼの青春グラフティ。
一部シリアスな部分はあるものの、「翔んだカップル」のようなドロドロとした恋愛展開はありません。
脇役の「正助」、「賀毛」、「佐山」達も実にいい味を出しています。
過ぎ去りし高校時代の、「女の子への憧れ」といったものを、ちょっとホロ苦く思い出させてくれる良い作品だと思います。
本作は柳沢氏の出身地である新潟県の「五泉市」や「村松町」あたりを舞台に描かれているので、今は無き「蒲原鉄道」なども登場します。
ちなみに私は「五泉市」の自動車学校で免許を取るために一ヶ月ほど「合宿」したので、ここは実になじみ深い土地。
ただ、どういうわけか五泉市では柳沢きみおの知名度はほとんどありませんでした。
A 「妻をめとらば」 (★★★★☆)
主人公「八一」の足かけ10年に及ぶ結婚相手を求めての奮戦記ですが、なかなか考えさせられるセリフや展開も多く、柳沢氏全盛期の傑作でしょう。
「村雨」や「青山」たち「脇男」も、実に味のある良い仕事をしています。
今は亡き「古尾谷雅人」の主演でテレビドラマ化されたこともありました。
「八一」の前を実に多くの女性が通り過ぎて行きますが誰一人として結ばれることなく、最後は・・・・・心臓麻痺??
個人的には「めぐみ」の登場から「広美」との再会、そしてその後の顛末あたりが本作最大のクライマックスだと思っています。
閑話休題・・・・・
氏の作品の重要ファクターのひとつに、一人暮らしの男のもとへ突然「家出娘」が転がり込んでくるという設定があります。
彼女等は、時に1エピソードとして展開に花を添え、時にストーリー全体に絡んでくる重要キャラクターとしての役割を果たしています。
家出娘を囲うなどという、実際の生活では天文学数値的にあり得ない、ある種の男のロマンをここでは見事に疑似体験化させていて、もし「こんなことがあったら・・・・・。」という願望をチクチクくすぐってくる氏ならではの名プロットです。
何人かその「家出娘」をご紹介しましょう。
「瑠璃色ゼネレーション」の脇役で、目下離婚争議中の「井原」と夜の街で知り合った、中3生の少女売春娘「春江」。
「井原」の性格が気に入り、しばらく居候することに。
現代娘らしく、去り際も実にあっさりしていました。
「妻をめとらば」の主人公「八一」のもとに転がり込んできた、中3生の家出娘「広美」は、実は良家のお嬢さん。
両親の不仲に嫌気がさして、深夜家を飛び出していたところに「八一」が通りがかり・・・・・。
この6年後、「めぐみ」と婚約の決まった「八一」は渋谷の街中で大学3年となった「広美」とばったり再会します。
「めぐみ」との婚約問題と「広美」の愛との狭間に苦しむ「八一」と、その後の顛末は本作最大のクライマックスでしょう。
ネタバレになるといけないので、ここは是非コミックを読んで下さい。
「俺にはオレの唄がある」の主人公、「瀬上」の財布を抜き取ろうとした少女「初美」。
身体を迫ってくる義父より逃れての家出だった。
柳沢氏の家出娘の中ではかなり暗い影を落としている娘だが、これで中学2年生というからかなり成熟している。
やがて「瀬上」と「初美」は♂♀するが、その後どうなったかは話が未完のままなので不明。
「寝物語」の「吉村」が一時世話をすることになった名前不詳の17才の家出娘。
かなりノー天気で陽気な性格で肉体もオープン。
「吉村」の生活をさんざん掻き乱して疾風の如く去っていきますが、彼女の去った後、「吉村」には一抹の寂しさが・・・・・。
次回は「俺にはオレの唄がある」、「青き炎」、「短編集」あたりをご紹介しようかと思っています。

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