2007/3/28
希望枠廃止:ようやく決着 プロ野球界もついに結論出す(毎日新聞 2007年3月28日)
http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/pro/news/20070329k0000m050059000c.html
今秋からの「希望入団枠」廃止が28日、ようやく決まった。西武の裏金問題発覚以来、迷走してきたドラフト制度の改革論議。21日の代表者会議では7時間半の議論を尽くしながら、今秋からの廃止を打ち出せなったプロ野球界も、アマチュア球界やプロ野球選手会、ファンの反発や批判の声の大きさに屈し、ついに結論を出した。今後はフリーエージェント(FA)制改革と一体化した、新制度の検討に議論は移る。
大学・社会人選手が球団を自由に選べる「希望入団枠」の原形である「逆指名制度」が導入されたのは93年。この年に始まったサッカー・Jリーグのブームに、プロ野球界は危機感を覚えた。従来から新人獲得の自由競争化を訴えていた巨人と西武が、野球機構脱退−新リーグ結成までチラつかせ、短期間で逆指名制度とフリーエージェント(FA)制度の導入を実現した。
もちろん巨人、西武の思惑だけで両制度が実現したわけではない。サッカー人気が急速に高まり、野球は底辺の競技人口を奪われつつあった。そこで選手にチーム選択の自由を与えることで、若者を引きつけようとした面もある。
逆指名制度は、新人獲得資金の高騰を招いた。93年秋のドラフトでは逆指名で入団した選手の契約金が最高1億6000万円まで高騰。吉国一郎コミッショナー(当時)が「常軌を逸している」と批判する事態を招いた。有力新人から逆指名を得るために、各球団はアマ選手の囲い込みを行い、04年の一場問題、今回の西武問題のような裏金を生む余地ができた。
逆指名制度とFA制度は人件費の大幅増を招き、球団経営を圧迫した。それでも逆指名制度が続いたのは、大きく二つの理由がある。資金力のある球団は有力新人を獲得しやすい。逆に資金力の乏しい球団は、逆指名制度がなくなれば、FA権取得期間が短縮されることを恐れたのだ。
さまざまな思惑が絡んだ逆指名制度だが、西武の裏金問題をきっかけとした世間の逆風の中で、ついに終わりを迎えた。
◇根来コミッショナー代行が会見…「大局的な判断もあった」
根来泰周コミッショナー代行の会見は、28日午後5時から始まった。
根来代行によれば、21日の代表者会議で各球団に対し「この秋、仮に希望入団枠が残っても、制度を使うつもりがあるのか」と尋ねたという。しかし、各球団からは反応がなかったため、今秋からの希望入団枠廃止については明確な決定ができないまま、代表者会議は終了した。
その後、ほとんどの球団が同枠を使用しない旨をコミッショナー事務局に連絡してきた。そこで今秋からの同枠廃止を前提にしたドラフト制度を策定しようと、セ・パ両リーグの理事長が各球団と折衝したが、まとまらなかった。このため根来代行が仲裁案を作成し、12球団の内諾を得たという。コミッショナー事務局関係者によれば、最後の球団の内諾を得たのは、根来代行の会見の約2時間前だった。
根来代行は「セ・リーグも30日に開幕する。こういう問題をいつまでも引きずっていれば、プロ野球に対する認識も悪くなるという、大局的な判断もあった」と語った。今秋のドラフト会議実施方法の細部については今後、実行委員会などで詰めていく。
また来季以降のドラフト制度については、FA制度と一体化させ、海外流出対策も念頭に置きながら、論議していく。そのためにコミッショナー指揮のもとに委員会を設置する。委員会の編成は、根来代行が「12球団が集まって議論しても、なかなかまとまらない。全国を対象にしている球団、地域密着型の球団など、球団の特性をうまく合わせて少人数で作りたい」と語ったことから、巨人、ソフトバンク、楽天、広島などをメンバーとし、6球団程度で構成されると見られる。
◇巨人が譲歩
希望入団枠の今年からの廃止に消極的だった巨人が譲歩した。東京都内のホテルで取材に応じた巨人の滝鼻卓雄オーナーは「コミッショナー代行案が発表されたなら、巨人も従う」と語り、「案が示されたことに対してノーとは言わない。一体改革の方向性をコミッショナー代行が見せてくれたのなら、それで大いに進めていきたい」と説明した。
21日の代表者会議で、大半の球団が同枠の即時撤廃を主張したが、巨人は「全体の制度設計をすべき」と慎重な姿勢を示した。26日には滝鼻オーナーが、全日本アマチュア野球連盟の松田昌士会長と会談し、即時撤廃を改めて強く要望されたとみられる。さらにパ・リーグが同枠を返上する動きを見せるなど、巨人は苦しい立場に追い込まれていた。
ただ、巨人が強く求めていたFA権取得期間短縮について、仲裁案には新制度はドラフト制度とFA期間の一体的改正について議論することが盛り込まれた。滝鼻オーナーは「新人選択制度、FA、そういう選手移動に関する問題は全体できちっとしたものを確立したい。部分的に手直しすると、問題が出てくる」と、これまでの主張を改めて述べた。【田中義郎】
今秋から「希望枠」廃止…根来コミッショナー代行が発表(2007年3月28日 スポーツ報知)
http://hochi.yomiuri.co.jp/baseball/npb/news/20070328-OHT1T00201.htm
日本プロ野球組織(NPB)の根来泰周コミッショナー代行は28日、東京都内で緊急記者会見を行い、ドラフト制度の希望入団枠を今秋のドラフト会議から廃止すると発表した。21日の12球団代表者会議では、大学・社会人の一部有力選手を自由に獲得できる希望枠廃止は来年からと決めた。しかし、アマ球界など各界の反発を受けて、即時廃止に繰り上げた。
根来代行は会見で〈1〉今秋のドラフトから希望枠を廃止〈2〉今秋のみの特例として大学生・社会人の1巡目が重複指名の場合は抽選〈3〉高校生は従来通りで1巡目指名重複は抽選―などの案を示し、12球団に受け入れられたという。
正式には4月2日のプロ野球実行委員会で決まる。希望枠の廃止で、1993年の逆指名制度導入から始まった「一部アマ選手の選択の自由」は消滅する。
根来代行は仲裁案の中で〈4〉新人獲得時の違反行為への制裁を通達として出し、今秋から適用〈5〉アマ球界に対し、日本のプロ野球を経由しないで大リーグなど海外に新人選手が流出しない措置を要請する―方針も示した。
根来泰周プロ野球コミッショナー代行「セ、パ両リーグの理事長が奔走して努力したが、若干煮詰まらないものがあった。この辺で見切り発車というか、きちっとした方がいいと思い、仲裁案を作成して12球団の内諾を得た。いつまで引きずっていてもプロ野球に対する認識も悪くなる。大局的な判断」
日本ハム・島田利正チーム統轄本部長「希望枠撤廃はほとんどの球団の総意だったので一歩前進したと思う。問題は希望枠を撤廃することではなく、不正をなくすことなので、今後2度とこのような不正が起きない仕組みづくりなど問題は山積み」
ソフトバンク・角田雅司球団代表「パ・リーグは撤廃するつもりだった。まずは世論のことを考えて、今取るべき行動は希望枠撤廃だ。FA短縮の話も出てくるだろうが、そこは議論しなければならない。地域密着で生え抜きを育てているうちとしてはつらい」
ロッテ・瀬戸山隆三球団社長「本年より希望枠撤廃を決定していただいたことは大歓迎。来年からのドラフト制度についてはコミッショナー代行のご指導のもと、12球団、アマチュア球界と連携を取り、できるだけ早い時期に作り上げる努力をしたい」
オリックス・機谷俊夫球団代表「12球団まとまって今季から希望枠を撤廃するのならオリックスとしては受け入れますという話をした。FA短縮は今後の議論で良いと思う。理想は完全ウエーバー制度。プロが注目されるという意味では、1巡目は抽選でも良いかなと思う」
楽天・米田純球団代表「細かいことは実行委員会で話し合うが、希望枠がなくなることは了承する。うちは終始一貫してドラフト一括開催、完全ウエーバー制を主張しているが、コミッショナー(代行)案は受け入れる。まずは一歩前進というところ」
西武・太田秀和オーナー代行「仲裁案が出たことを真摯(しんし)に受け止めています。各球団の総意に従わせていただきます」
滝鼻卓雄・巨人オーナー「コミッショナー代行の考え方を早く出してもらいたいと願っていた。仲裁案を出してくれて12球団が合意したということだから、一つの区切りじゃないか。セの開幕前に一段落し、ファンのみなさんに明るい雰囲気で観戦してもらえる」
中日・伊藤一正球団代表「何の異論もない。付け入られるすきのある制度はこういう事態になった以上やめるべきだ。大多数の球団の意向が通ったということでしょう」
阪神・宮崎恒彰オーナー「とりあえず一番要請されている希望枠撤廃を決め、それから後のルールを決めていけばいい。コミッショナーもリーダーシップを発揮して、話をまとめようとしている。球界のためにも好ましい」
広島・松田元オーナー「球界の混乱を収めるためには撤廃もやむをえない。ただし完全ウエーバーは反対。フリーエージェント(FA)の期間短縮も反対。FA権自体が諸悪の根元だと思ってる。FAの短縮を取るか希望枠を取るかだったら、うちは希望枠を取る」

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