2007/3/30
FAを含め徹底論議を(2007年3月29日 朝日新聞)
【解説】会見で、根来コミッショナー代行が言った。「セの大球団も今年の帝望枠を使わないと言った。使わないのに、制度を置いておいてもしょうがないわけだから」
セの大球団とは、明らかに巨人だ。ここが折れたから、今年からの帝望枠廃止が決まった。これまでプロ野球界は、巨人の意見が少数派でも、数の論理ではなく巨人の意向に流れることが多かった。それが今回は多数派が勝った。希望枠という制度を形骸化する方法があったからだ。巨人だけが待望枠を使えば、残りの11球団はウェーバーになる。21日の代表者会議の後、ロッテの源戸山球団社長を先頭に多数派が「使わない」と公表したことで、巨人の孤立感が強まった。
ただ、08年以降の制度改革となると、簡単にはいかない。巨人は元々、待望枠自体にはこだわっていない。「FA取得年数の短縮とセットでなけれはだめ」と言っているのだ。一方で、広島など育成が基本のチームにすれば、FA短縮は1年でも譲れない。いくら少人数で議論をしても、全員が納得できる制度ができるのは考えにくい。
入り口の自由の待望枠(最初は逆指名)。出口の自由のFA。選手の権利に見えるこの二つの制度が、日本では巨人の主導で93年に同時に生まれた。元々は、そこに矛盾があるのだから、片方がなくなったから、片方を短縮、という議論も矩絡的だ。根来代行が言う、「FAの理念から議論を尽くしましょう」を実現することが、望まれる。(志方浩文)
「大歓迎」「なお不十分」の声
プロ球団
「一歩、前進した」。今年のドラフト会議から待望粋がなくなることに、プロ球団の多くは賛同の意を表明した。
パ・リーグ各球団で希望枠を「返上」することを主張していたロッテの浦戸山球団社長は「大歓迎。来年のドラフト制度については、12球団、アマ球界と連携を取り、できるだけ早い時期に作り上げる努力をしたい」。日本ハムの島田チーム統轄本部長も「撤廃ははとんどの球団の総意だった」と歓迎。ソフトバンクの角田代表は「野球界の被るべき行動」と話した。
すでに「返上」の意思を明らかにしていた中日の伊藤代表は「球団の主張していた通りに(撤廃が)決まって良かった。FAを触りだしたら、何も進まない」。横浜の山中専務も「我々のほか、アマ3団体、選手会が強く望んでいたもの。一応の前進を見たと評価している」と話した。
一方、FA短縮を条件にした待望枠撤廃に反対してきた広島も、了承する姿勢を見せた。松田オーナーは「世論を考えると希望枠は無理。今の混乱を収めるには撤廃してもいい」と語った。
選手会長
待望枠の即時撤廃を訴えてきた選手会の宮本慎也会長(ヤクルト)は「アマチュアやファンからの信頼という部分で、希望粋が撤廃されたことは素直に評価したい。野球界にとって、第一にやらなきゃいけないことは出来た」と一定の評価をした。
ただ「(高校生と社会人・大学ドラフトの)一本化がされてないのが、ひっかかる。何とも中途半端、というのが正直な気持ち」と懸念も口にした。「FAなどリンクすることは多くあるし、まだ議論されるべきことはたくさんある」とし、今後の経過を注意深く見守る姿勢を示した。
この日、宮本会長は根来コミッショナー代行の記者会見があった午後5時には神宮球場で練習の真っ最中。何度も報道陣に評細を逆質問するなど気をもんだ横手だった。
アマ球界
高校、大学、社会人のアマ側3団体は早大選手への裏金問題発覚以降、「不正の温床」として希望枠撤廃を訴えてきた。それだけに、「撤廃はよかった」とそろって前向きに受け止めた。
日本高校野球連盟の脇村春夫会長は「今後はプロアマが協力し、絶対に違反行為が起きない仕組みを作らないといけない」、社会人を統括する日本野球連盟の松田昌士会長も「希望枠即時撤廃は第一歩。不適切な利益供与問題を根絶させることが重要」とコメントし
た。
全日本大学野球連盟の八田英二会長は「大学側も襟を正し、よりよいプロアマ関係を築いていきたい」との談話を発表。08年以降の新制度について、同連盟の内藤雅之常任理事は「プロから意見を求められれば応じてい
きたい」とした。
仲裁案に盛り込まれた「潅外流出対策」には反発も出ている。日本高野連の田名部和裕参事は「ドラフトの段階で入団待望が受け入れられないために、選手がメジャーに流出した例はない。まず日米が対等な立場でルールを作るのが先だ」と主張した。
巨人も同調
巨人の滝鼻卓雄オーナーは28日、今ドラフトからの帝望枠撤廃という根来コミッショナー代行の仲裁実に同調する意向を示した。巨人は選手の職業選択の自由を理由に、FA期間の短縮が待望枠撤廃の条件としていた。
滝鼻オーナーは「コミッショナー代行が、そういう案を発表されたということであれは、巨人としても従う」と話した。また、「新人選択(ドラフト)制度、FA制度など、選手の夢動に関する問題は、しつかり議論しなければならない。部分的なつなぎではいけない」とこれまでの主張も繰り返した。
総意に従う
西武・太田秀和球団社長の話 ドラフトに関してコミッショナー代行から仲裁案が出たことを真摯に受け止めています。各球団の総意に従わせていただきます。

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