(神無月廿七日 振替休日) 数学者の死  金融

京都東山の銀閣寺の近くにその閑静な住宅はある。今からちょうど10年前にNHKで放映されたNHKスペシャル「マネー革命」の第3回「金融工学の旗手たち」で伊藤清氏は、数学の門外漢である取材班に対して、「伊藤の定理」と呼ばれる微分方程式に確率の概念を導入し、不規則な現象を数学的に表す確率微分方程式を熱心に説明していた。前年の1997年にノーベル経済学賞を受賞したマートン、ショールズ両教授の功績に欠かせない理論であった。

2006年に国際数学連合が数学の応用に関する最高の貢献者を称えて贈る第1回ガウス賞に選ばれ、今年の文化勲章を受章していたが、今日新聞を整理していたら、今月10日にお亡くなりになっていた。謹んでお悔やみ申し上げます。合掌。

もう10年になるが、あの放送が昨日のように思い出される。その後マートン、ショールズ両教授はあのLTCM騒動で栄誉が形無しになったりしたが、それまでは巨額の報酬を受けていた。それに比べて京都の質素な住宅で名誉欲とも金銭欲とも無縁で生きておられた。その伊藤先生が金融危機で世界中が大混乱の中で大往生されたことは何か因縁を感じるのは私だけだろうか。

ここにマネー革命の文庫がある。戦時中の昭和17年に「伊藤の定理」を考案したときの20代の写真がある。そこには坊主頭で晩年と変わらない人のよさそうな笑顔がある。戦時中の慌しい日本で、一人の数学好きのサラリーマンが悪戦苦闘の末に思いついた定理を金融工学に利用されたことを、伊藤先生は天国でどのようにお考えなのだろうか。

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