(弥生廿壱日 みどりの日) 「松代大本営」の真実  読書

日垣隆著 講談社現代新書

まず驚かされるのは巻末の30頁以上におよぶ参照文献の圧倒的な量だ。それだけを見ても著者の本書におけるストイックさを感じさせる。教科書は現代史を試験にでないものと決めつけてほとんどまともに勉強させていない。したがって戦後のゆがんだ日本人の優越論が闊歩する原因になったのではないかと思う。なにも卑屈になる必要は全くないが、本当のこと、真実を丁寧に拾っていくことを怠ったのは云うまでもない。

その「真実」を探求する姿勢は本書で一番大事なことだろう。著者が本書を書くきっかけが在日朝鮮人の女性の遺言とも云うべきものであったという。米国公文書館での地道な調査には敬服するし、戦後生まれの多くの日本人が現代史をまともに学習していないなかで、定説を疑い疑問を解く過程を読むことは新たな日本史を勉強することにつながるものである。

長野県松代がなぜ大本営の候補となり、短期間に完成が急がされたのはなぜか。信州が「神州」につながるというのが当たり前に云われる時代である。近くに皆神山があるのも単なるこじつけでもない。ゲリラ戦の象徴である地下壕は郷土の名士、栗林中将の発案があったのかもしれない。理由はいろいろあるが、現実として大量の労働者が投入されて大本営が造営されたのである。そこでも真実を知るには本書を読めば理解出来る。しかし読後、この事実を知って、日本現代史を自分でどう捉えるかというのが命題になりような気がした。

戦後の東京の道路舗装に松代から掘り出された残土が利用されたという事実も、そこに埋もれた労働者の死体の一部が紛れ込んでいたかもしれないということを連想させる。この国は過去の一時期をばっさり切って、関連性を切断し、高度成長の道を進んだ。しかし過去を知らずしての将来も無いはずだ。敗戦までの約一年の間に何が松代で行われていたのか、戦後世代がしっかりと心に刻む必要があるのではないか。
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