2018/4/4

ペンタゴンペーパーズ  映画

この時節柄、どうしても見ておかなくてはならないと思った。

平日の昼間、観客はシルバーが多い。半分は埋まっていた。

スピルバーグ監督、メリル・ストリーブ、トム・ハンクス主演。
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1971年、ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国内には反戦の気運が高まっていた。国防総省はベトナム戦争について客観的に調査・分析する文書を作成していたが、戦争の長期化により、それは7000枚に及ぶ膨大な量に膨れあがっていた。

ある日、その文書が流出し、ニューヨーク・タイムズが内容の一部をスクープした。

ライバル紙のニューヨーク・タイムズに先を越され、ワシントン・ポストのトップでアメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は、残りの文書を独自に入手し、全貌を公表しようと奔走する。真実を伝えたいという気持ちが彼らを駆り立てていた。

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映画は、文書を内部告発したエルズバーグがベトナム戦争を現地視察するところから始まる。彼はベトナム戦争の現実を米国民に知らせるべきだと考える。

このベトナム戦争分析文書についての責任者はマクナマラ国防長官だ。マクナマラ長官については「フォッグ・オブ・ウォー」(2005年)という長編ドキュメンタリー作品があり、ベトナム戦争についても語っている。

この映画を見に行った。90歳近くなっても明晰な頭脳に驚いた。彼はベトナム戦争について「ベトナム人の民族独立の気概を見誤っていた」と言った。

マクナマラ役はブルース・グリンウッド。スタートレックにも出てた。知性的で上品で、自信に満ちていて、でも内部文書が流出したと知って動揺する場面、政治家としての判断と個人の倫理観の矛盾もその一身で演じていた。

Mストリープなんて何本も見てるのに、全部違って、全部その人そのものに見える。

どなたかが言っていたが、街を行きかう人、働く人、デモ隊、みんなエキストラなのに、ちゃんとその時代のその人々になっている。演技できているのに驚く、とのこと。そうだねぇ。

あと、印刷機械や、コピー機、電話、公衆電話、新聞スタンド、さりげない小道具や大道具がきちんとしている。

内部文書をコピーするところから始まって新聞社のスクープ合戦はハラハラ。

一方、突然会社を引き継ぐことになったキャサリンの経営上の問題も描いていく。株式公開を決めて、NYの証券取引所に行くキャサリン。外は女性たちがいるのに、取引所には背広の男たちばかり。

この描き方、巧かった。

そこから、政府の記事差し止め訴訟、更なる文書入手、入手した文書7000ページの読み込み、記事作成、経営上の判断、次々、畳み込まれるように描かれていく。

脚本はハラハラさせながら、クライマックスに向けて盛り上げ、かつ所々息抜きのユーモアもあり、余分なことはそぎ落とし、もう見事な脚本です。

家庭、家族のことも忘れない。

記事を書き終え、印刷スタンバイとなった段階で、ベンの妻が、「ワシントンポスト社が倒産しても、あなたは記者として再就職もできる、でもキャサリンはすべて失うのよ、だから、彼女は勇気がある」という場面はとてもよかった。

この妻役は、「それでも夜は明ける」の農場主ファスベンダーの妻役で冷たい人格の役をやって人だよね。ジュリアン・ムーアのテレビドラマ「副大統領候補ペイリン」で、共和党員でペイリンの指導役を演じてた。あんまりペイリンが馬鹿なので、最後に私は「初めて民主党に投票した」と泣いた役。とても知的だった。

女性記者も、裁判所に入るキャサリンに関係者入口を教える女性も、裁判所外でキャサリンを待ち構える若い女性たちの表情も、みんなちゃんと描かれていた。

ウォーターゲート事件を扱った「大統領の陰謀」では、実在した女性記者の姿を消したという。この間、ハリウッドも進歩したんだな。

この映画を見ていると、やっぱりニクソンはアベに重なる。

マクナマラがケネディやジョンソンにも問題はあったが、ニクソンは違いすぎると怒る場面がある。邪悪さにおいて桁違いというのだ。

それと日本のメディアとアメリカのメディアの違い。

今でこそ、朝日新聞、東京新聞、毎日新聞が頑張っているけど、その前はひどかった。新聞社やテレビのお偉方はいつもアベと食事、NHKはアベ友が会長や理事になった。ありえない。

森友は市会議員が、防衛庁日報問題はフリー記者が、きっかけを作った。森友も最初はテレビは取り上げなかった。

初めはTBSラジオの荻上チキの番組、テレビはテレ東の夕方サテライトだった。視聴率が取れるとなってから他局も追いかけた。

司法。アメリカの最高裁は報道の自由を認めた。日本の司法は腰が引けてる。アベ友が最高裁判事になるのだものねぇ。

それとね、政府の欺瞞が明らかになると、すぐにデモが始まる。これは民主主義の当たりまえの姿なのだ。デモにケチをつける人たち、本当に世間知らず、歴史知らずよね。

報道の自由は、何よりも守らなければならない。報道の自由がなければ、国民は選挙で、政策の選択ができないのだ。

「報道が仕えるのは大統領ではなく、国民である」「報道の自由は、報道することで守られる」

今の日本の教訓になることが沢山散りばめられていた。

この作品をスピルバーグが早撮りで作り、大御所のMストリープ、T・ハンクスが出演し、脇もベテラン俳優がしっかり固めてる。みんな上手い。そして大ヒット。

映画館に行くと予告編を沢山見せられるけど、邦画は若者の恋愛、難病、熱血もの、あとは家族のしんみりした愛情物語や、お店もの、ミステリー、等々で、見たいなぁと思うものが本当にない。

昔はね、骨太社会派娯楽作品があったのにね。今は自主映画でないと見つけられない。

「否定と肯定」「ペンタゴン・ペーパーズ」と骨のある作品を続けて見られて本当に良かった。日本の映画界も社会問題を扱って、他の民主主義先進国に追いつけよ!

そして、メディアは本来の役目をはたして、でたらめアベ政権を追い詰めてほしいと思う。応援するし、市民として意思表示はするよ。
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