2018/9/10

1987、ある闘いの真実  映画

韓国・光州事件を描いた「タクシー運転手」を見逃してしまった。

だから、「1987年ある闘いの真実」が公開された、素晴らしいと聞いて絶対に行くぞ!と思った。

しかも横浜駅近くの「ムービル」で上映するではないか。

なので、行ってきた。
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これ、映画ファンの方が「韓国すげぇー」と感想を言っていたが、まさにまさに。

「全斗煥政権下ソウル大学生の拷問死を警察は隠蔽しようとするが、検事、新聞記者、医師、刑務所看守らは、真実を公表するべく奔走する。また、殺された大学生の仲間たちも立ち上がり、事態は韓国全土を巻き込む民主化闘争へと展開していく」

実話を元にした映画。

「韓国すげぇ」とは、

まず、映画として「すげぇ」
フィルムノワールのような強面男たちの暴力、脅迫、威圧、ハラハラドキドキ、サスペンス仕立て。

悪の権化のような治安本部のボスにもその背景があること。

そして家族愛。ソウル大生の母親の嘆き・号泣もそうだが、遺灰を川へ流す時の父親の慟哭の痛切さ。涙なくして見られない。

(追記:ソウル大生の墓が聖地となることを怖れた権力によって墓に埋葬できず散骨させられたとのこと)

更に人としての誇り。検事や看守の職業の誇り。「ペンタゴンペーパーズ」や「スポットライト」にも通じるメディアの矜持、使命感。

淡い初恋。

これらを一篇の映画に盛り込んで、社会性とエンタメを見事に両立している。

俳優さんが「すげぇ」

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「小沢一郎と梅宮辰夫を合わせたような」パク所長を演じたキム・ユンソク。存在感ありまくり。冷血のようで部下を庇う時は庇う、残酷の裏にある心の傷。見事でした。

チェ検事(ハ・ジョンク)。エリートのはずなのにどこかタガが外れている。はみ出し者のようでいて職務に忠実、パク所長を怖れない。変わった人物を魅力的に演じた。

看守長、平凡な官吏のようでいて、気骨がある。看守(ユ・ヘジン)、家族を愛し、職を遂行しながら、ひそかに活動をしている。こういう平凡な一般人そのものなのに芯の通った人物であることを納得させる演技

拷問死の罪を一身に背負わされる刑事(パク・ヒスン)。国を信じる心(愛国)、職務に忠実であろうとするが、良心の呵責、政権への幻滅に向き合う。にもかかわらず権力に屈服させられる屈辱無力感、それでもなお、と揺れる心情表現は素晴らしかった。

指名手配中の民主活動家キム・ジョンナム(ソル・ギョング)。ちらっとしか映らなくてもオーラがあって、只者ではないと感じさせる。さすが名優。

若者二人、カン・ドンウォンとキム・テリ。気恥ずかしいような場面もあるけれど、美しい二人であるからこそ、映画のテーマがより浮き彫りになったと思う。

そして韓国社会に「すげぇ」

徹底した「赤狩り」と「拷問」。懐柔と脅迫、家族愛を逆手にとっての拷問はひどいけど、そういうことをしたのだろうなぁ。軍事独裁国。悪い意味で凄いと思った。

それにもかかわらず、抵抗する社会各層の人々の良心。検事や医師、できる範囲で自らの職業倫理に忠実であろうとする。民主闘争を命がけで行う人々、民主活動家、宗教家、学生。それらの人々に敬意を持つ市井の人々。

少しの勇気や良心が合わさって大きな民衆運動になって行く。

もちろん、無関心、無気力、積極的に政権を支持する人もいただろう。

それでも不正義に立ち上がる人々、民主主義を実現しようとする人々、ここが韓国の凄さだと思う。

デモの場面は感動。この力で100万人のキャンドルデモがあり、パククネを退陣に追い込んだのだ。

映画を見ながら、日本のことを考えずにはいられなかった。韓国のように軍部がクーデターを起こす国ではない、分断国家ではない、思想を理由の拷問はない、

しかし、良心を貫く官僚は?メディアは?

緩い柔らかいファシズムに取り込まれているのではないか。改めて、日本の今を考え、こんなでたらめ政権に負けてはいけないと思った。

(追記:荻上チキsession21で韓国研究者の話では、亡くなった遺族はその後も監視され、社会からも距離を置かれて非常に苦労されたとのことだ。
また、好意的に描かれた看守たちについても、この看守たちに暴力を受けた政治犯たちもいて、未だに彼らを許していないそうだ)。

神奈川ではムービル、横浜シネマリン2館の上映。もっと観客動員が増えれば上映館も増えるだろう。ぜひ見に行ってください。

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