2006/10/28

文化勲章・瀬戸内寂聴さん  本・文学

瀬戸内寂聴さんが文化勲章を受章することになった。

政府も寛大になったというか、昔だったら考えられなかった。やっぱり出家して法話をしたり、人生相談に乗ったりする宗教人としての側面が考慮されたかな。それと、長生きは名誉の必須条件だ。

別に受賞に反対しているわけではない。私は愛読者だった。でも感慨はある。

かつては不道徳で糾弾された人だ。いつだったか、村上龍がホストを務めるTV番組(Ryu's bar)があって、彼女がゲストだった。「僕はデビュー作で随分文壇から叩かれて」と龍さんが言うと、「あんなの叩かれたうちに入りません。私なんかひどかったですから」と語っていた。新潮同人雑誌賞受賞後の作品「花芯」で内容が過激であると批判にさらされた。作品の発表の場も奪われた。

彼女は夫と娘を捨てて若い男のもとに走り、やがて破綻。文学修行中に同人誌仲間の作家と不倫。更に別れた男が現れ、三角関係に・・・と、それらは彼女の私小説群に詳しい。だから、不道徳と指弾されても仕方なかった。母校の女子大では女性教授が「私の目の黒いうちは学内に足を踏み入れさせない」とキッパリと言っていた。それが今や文化勲章だ。

瀬戸内寂聴さんは好きな作家であり、出家する前にはそのほとんどの作品を読んでいる。「田村俊子」を初めとする女性の評伝は熱心に読んだ。

「青踏」の新しき女たち、文学者、社会運動家をモデルにした小説。
世の因習や矛盾に抵抗して自由を求めた女性たちを描こうとした寂聴さんの気持はよくわかる。

大杉栄とともに関東大震災の際殺害された伊藤野枝(美は乱調にあり、諧調は偽りなり)、幸徳秋水と伴に大逆事件で処刑された菅野スガ(遠い声)、朴烈とともに死刑宣告され自ら獄中で果てた金子文子(余白の春)、「青踏」という作品もあると思う。

金子文子は彼女自身の自伝「何が私をかうさせたか」があり、寂聴の小説より良いと思う。

その他祇園の名妓で後に出家した女性(智照尼)の一代記「女徳」も読んだ。「京まんだら」「鬼の栖」「中世炎上」なども雑誌連載中か発表直後に読んだと思う。

「ひとりでも生きられる」はベストセラーになった。私も読んだ。そんな娘のことを心配したのか、寂聴と同世代の母は、伝統的な女性の生き方を否定すると、この本を憎んだ。今でも寂聴のことは嫌いだ。寂聴の「源氏物語」は安っぽいという。

瀬戸内寂聴の著作を調べたら、私は最近の著作を全く読んでいないことに気づいた。仏教関係も源氏関係も全く読んでいない。だから、文化勲章につながるような著作は全く読んでいない。でも、もうそろそろあの世のことも考えないといけないので(?)「仏教」の本は読んでみようかと思う。

(蛇足)寂庵を時々テレビで見かける。嵯峨野で、とても趣味のいい住まい。あんな家に住めたらいいなぁ。

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ところで私の一番大切な本 ちくま文学の森第3巻「幼かりし日々」に、上の「金子ふみ子」の「何が私をかうさせたか」から「父」が載っている。読むたび胸が痛くなる。それにしてもこの文章の見事さはどうだろう。

話がどんどんずれていくが、
「幼かりし日々」は本当に大切な本で、この中に、宮沢賢治の「風に又三郎」があり、魯迅の「故郷」があり、ヘッセの「クジャクヤママユ」があり、カポーティの「クリスマスの思い出」がある。有島武郎「小さき者へ」、吉野せい「梨花」(洟をたらした神)、林芙美子「風琴と魚の町」もある。福沢諭吉「福翁自伝」や勝小吉「夢酔独言」山川菊枝「おんな二代の記」の一節もあるのだ。この編者たちはすごいと思う。
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