2005/4/29

『夕凪の街 桜の国』  マンガ

『夕凪の街 桜の国』こうの史代(双葉社)

今年の、朝日新聞社主催の手塚治虫文化賞「マンガ大賞」の候補作品にもなっている、ヒロシマを題材にした優れた作品である。
このマンガが優れているのは、『夕凪の街』という、これだけだったら中途半端に思われる物語を、現在の視点で描いた『桜の国』が補完することによって、ヒロシマの原爆の悲劇が終わらない、続いているものであることを浮かび上がらせていることだろうと思う。
主題的にはそういうことが言えると思うが、特に時制の処理の仕方が面白い作品にし得ているように思える。おそらくこれはマンガ表現ならではの独特の時制の処理の仕方なのかもしれない。
というのは、たとえば映像表現と比べてみた場合、映像は基本的に時間とともに流れて行くものなので、回想シーンを入れることはとかく流れを止めて観念的な背景を説明するものになりがちであり、使い方が難しい。シナリオ学校などでも、回想シーンはよくよく考えた上で使うようにと指導されているほどである。
それに対し、マンガ表現はもっと異なる時制の使い方が可能なものなのではないか。もちろん、マンガだって、基本的にはページの順番に進行するわけだけれども、コマ割りの配置によってそれぞれの画と文字の持つ意味合いを変えることができるし、それだけだったら映像表現だってアップとかロングとか、あるではないかと言われるかもしれないけど、ページによって読むスピードを違うものとして成立させられる要素がマンガの場合の方が自由な可能性としてあるように思う。読む方が時には休んだり、前のページに戻ったりすることも可能である。つまり、自分のペースでマンガは読めるので、回想などのフラッシュバックも映像とは異なる味わい方が出来るように思うのだ。
そして、『夕凪の街 桜の国』の時制処理は、このマンガ表現ならではの特性をうまく発揮しているものであるように思えるのだ。特に、『桜の国(二)』のクライマックスにおける不思議な時制処理の表現の仕方にそうしたものを感じるのだけど。
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2005/5/2  23:03

投稿者:kusukusu

今晩は。
今度、出た『少年文芸』という雑誌に執筆されてい
るようですね。
かなり個性派の作家を集めた雑誌のようです。

http://www.pub.co.jp/syonenbungei/

2005/5/2  5:46

投稿者:natunohi69

5月5日のコミティアでは、こうの先生の創作ノウハウの一部があかされそうですね。
http://www.comitia.co.jp/info_kono.html

http://kodanuki69.blog.ocn.ne.jp/natunohi69/

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