2007/10/18

『パンズ・ラビリンス』  映画

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圧倒的なクオリティのファンタジー作品であることは疑いようがなく、一見の価値があることは間違いないだろう。

しかし、個人的にはどうにも引っかかりを残す作品であったのだ。どういうことか・・。
宮崎駿アニメからの影響もかなりあるようだけれども、宮崎駿の作品が興味深いのは、善と悪の観念が渾沌としている領域にまで踏み出して描いているからだと思うのだけれども、この『パンズ・ラビリンス』の場合は、けっこう、幻想を夢見る少女は無垢なもので善、フランコ政権に心酔している大尉は悪というように、善人と悪人の区別がはっきりついてしまっていて、ダークファンタジーと言いながら、人間というものが善の要素と悪の要素をあわせ持っている渾沌とした存在であることこそが本当の意味での人間存在のダークさだと思うので、この作品はそういう人間のダークさをとらえそこなってしまっているような気がするのだ。
また、これはそれだけこの作品が周到につくられているということであるのかもしれないけれども、何か、現実が厳しいものだからこそファンタジーの夢をみる・・という形でファンタジー性を肯定しようとしているようなのだけど、その論理でいくと、結局のところ、どんな不可思議なことが起こっても、それは厳しい現実の中で生きている少女の夢想ということになってしまうので、不可思議なこと、わけが分からないことに接してしまったという衝撃、もしかしたら人間が分かっていることなんてほんの一部で、世界には人間の理解をこえたことが存在しているのではないか?という畏怖や恐怖というものが薄れていってしまうと思うのだ。たとえば『サイレントヒル』のほうが、一体、何がなんだか、わけが分からない作品だからこそ、真に人間が存在している世界のわけが分からなさ、渾沌をとらえ出してしまったという衝撃があったように思う。もしかしたら、『サイレントヒル』よりもこの『パンズ・ラビリンス』のほうがより周到につくられている、出来がいい作品なのかもしれないが、周到につくられているからこそ、結局のところ、この作品はつくりての頭の中の計算を見ているような気がしてきてしまって、人間の理解や存在をこえる真の「わけが分からないもの」を見てしまったという衝撃と感動にはついには僕は至ることが出来なかったようである。よく出来ている作品が優れているとは限らない・・という僕が以前から考えてきていることを再度、確認することになった次第。

*関連する前記事
宮崎駿の野心の一考察
http://blue.ap.teacup.com/documentary/796.html

『サイレントヒル』の衝撃と『霧の旗』
http://blue.ap.teacup.com/documentary/724.html
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2007/10/27  22:04

投稿者:mirokuninoti

>人間の理解や存在をこえる真の「わけが分からないもの」を見てしまったという衝撃と感動にはついには僕は至ることが出来なかったようである。

 あまりに、すべてがいちいちリアルすぎますもんね、これ。
 「わけが、わからない」というところが少ないような。
 
 それか〜見ている私達の方が年を取ってしまったのかもです。
 
 この監督は、少女の夢想の方に完璧に理論があると、思っているようですから。
 
 つ〜かこれで行くとやっぱ宮崎駿の「千と千尋…」に軍配が上がるのかもしれませんね。
 あれは多くの大人も引き込まれたということでしょう?
 私は引き込まれなかったが。

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