2007/12/10

『やわらかい手』  映画

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これは本当に秀逸な作品。今年、一番の傑作かも。。
こんな題材、こんな視点があったとは。。
難病の孫の手術代を稼ぐ為に未亡人の中年女性が風俗店に足を踏み入れる・・なんて物語が、小津やカウリスマキみたいな乾いた大人のラブストーリーに仕上がってしまうなんて・・。
それまでごく普通の主婦として生きてきた、生真面目で平凡な主婦が、金が必要になってふと(というか、年なので他に仕事がなかったので)風俗の世界に足を踏み入れ、それまで知らなかった「裏側の世界」を知り、変わっていく(より人生の慈しみを知っていく)・・という実に面白い発想。世間の良識では負の存在であるはずの「風俗」の世界に足を踏み入れることがひとりの女の成長ものにーそれもかなり年輩の中年女性が成長する話にーなっているというのがなんともユニークな発想で、中年女性ものでは日本でも『いつか読書する日』があったけれども、あれはあまりにもヒロインの心情が初々しすぎて(娘のままで)ちょっと信じられなかったんだけれども、この『やわらかい手』はごく普通の生真面目な主婦が変わっていくというのがリアルに納得できるし、こういう観点で中年女性の生と性を描いたものってあまり見たことがなかったから新鮮。
これが最初から世間の良識を疑ったり反発したりしている型破りなヒロインだったら、こうした味わいは出なかったかもしれない。ごく普通に良識にそって生きてきて、そのような生真面目な、世間ずれしていない自分のことを不満に思っていたわけでもなくて、それなりに幸せに生きてきたような人が、ふと「風俗」みたいな世界に足を踏み入れ、自分がまったく知らなかった世界を知って、変わっていく・・というのがスリリングで面白いのだ。過激に良識に反逆するよりも、淡々としているからこそ、かえって「人生とは?」「男と女とは?」といったことについて、「裏側の世界」から発見、考察させるものになっているのではないだろうか・・。
かつこうした奇抜とも思える発想を、具体的な描写にして仕上げている作品だと思う。特に、小津やカウリスマキを引き合いに出したのは、この映画の描写は乾いたハードボイルドなタッチで淡々としているのだけれども、しかしたとえば随所で同じ事柄が2度、反復されていて、それが巧みに変奏(2度目は違った形で描かれている)されていて、人物の変化をつかまえ出しているのだ。この映画の監督と脚本家の腕には脱帽するしかない。
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