2009/1/25

『戦場のレクイエム』  映画

このフォン・シャオガン監督の映画は中国本土ではすべて大ヒットしているという。多くの中国人はジャ・ジャンクーという監督を知らなくてジャ・ジャンクーの映画は見たことがないが、フォン・シャオガン監督は誰でも知っているのかもしれない。国際的な評価が逆であったとしても、そんなことは大衆には関係ないことなのだ。そして、その大衆の嗜好は別に間違っていないのだと思う。実際、これはいい映画だからだ。かといってとりたてて傑作と持ち上げるつもりもないのだけど、普通にいい映画なのだ。これは、普通に泣ける「男の映画」というやつである。男泣きしても全然、恥ずかしくない映画。たとえば、浅草の名画座でマキノや石井輝男の映画と並べてごく普通に目頭を熱くさせながら見たい。そういう映画だ。逆に言えば、そういう映画以上のものではない。
あと中国内の内戦という珍しい題材を扱っているという点での新鮮さもたしかにあるが、そしてその題材の新鮮な着眼点があったからこそ企画が通って映画化が実現したのだろうが、映画そのものはそういうことに関係なく、普通に泣ける、浅草の名画座にかかっている映画のようなものなのである。
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2009/2/16  0:30

投稿者:kusukusu

うわ、なかなか深いコメント、有難うござい
ます。
自分はそこまで体系的に戦争映画について考
えて来ているわけではないので、大変、勉強
になります。

答えになるかどうか分かりませんが、思った
ことを書くと・・
昨年、フィルムセンターの亀井文夫特集で上
映された『制空』はご覧になりましたか? 
これは戦時中につくられた中島飛行機半田工
場を舞台にした航空機のプロパガンダ映画と
言われるものです。亀井文夫と言えばもちろ
ん戦争中に投獄までされた映画人なのです
が、その亀井文夫にして一方では戦争のプロ
パガンダ映画もつくっていたのか?と思って
見に行ったのですが、たしかにプロパガンダ
映画かとは思ったのだけど、戦局の不利を認
めて指摘しているナレーションもあり、その
意味では(大本営発表とは異なることをナ
レーションに盛り込んでいるという意味で
は)全面的にプロパガンダ映画とは言えない
のかもしれないと悩んでしまいました。
もう1本、田坂具隆監督の『土と兵隊』で
す。これもプロパガンダ映画とされるもので
すが、かなり微妙な感じで、本当に全面的に
プロパガンダ映画なのかどうか、個人的には
悩んでしまうところがあります。
以上のような例から考えて、戦時中に日本の
映画人の多く(ほとんど)がつくっていたと
言われている戦争のプロパガンダ映画とされ
るものは、実際にどうであったのか、見てみ
て考えてみなければならないのかもしれない
とも思います。
しかし、それにしても、まずそういう映画を
上映しなければいけないでしょう。そういう
映画がなかったものとしてしまうことがたし
かに一番、まずいことなのかもしれません。

http://blue.ap.teacup.com/documentary/

2009/2/15  13:54

投稿者:zames_maki

(続)
>戦争映画としては、たしかに高い評価を出来るものではない
戦争映画としてどのようなものが高い評価を受けるべきかは、第1にはその社会全体の戦争への意識に関わる事、その上で第2に一個人の又は映画評論家の行う前記の作業結果に関わってくるでしょうね。歴史上もっとも効果的で観客に深い影響を与えた優れた戦争映画とは「意志の勝利」や「民族の祭典」であるのほぼ間違いないでしょう。また日本では「ハワイマレー沖海戦」や「明治大帝と日露大戦争」でしょう。しかし今の映画評論家はそれを戦争映画としてまともに扱わず殊更に情報を提供しない。こうした映画評論家やメディアはどうしようもなく不勉強だし政治的に不正だと思える。貴殿の誠実な回答に本当に責任を持つべきなのはそうした先人や日本社会にあると思いますよ。


>内容的な面では疑問を持つんだけど、かつて好きな作品を撮った監督のものなのでけなしたくない
上記にかぶるがこれも貴殿だけの責任ではないように思う。もし黒澤明が「虎・虎・虎!」を撮っていたら今では歴史修正主義的な監督として批判されていたかもしれない。そんな戦後の例でなくても小津安二郎、木下恵介、溝口健二、マキノ雅弘、今井正、山本薩夫などほぼ全ての黄金期の日本の監督は戦争中の自分の責任について口をつぐみ、戦後の映画評論家とメディアはそれに何も言わなかった。更に時代を経て情報を入手しやすくなった現代の評論家・研究者も貶さない、そのメカニズムの大きな一つは「好きな監督を貶したくない」でしょう。ですのでこれを乗り越えるには一映画ファンや職業的評論家を離れた立場と覚悟が必要なのでしょうね。これも先人やメディアに責任が大きいと思いますよ。

2009/2/15  13:53

投稿者:zames_maki

回答有難うございます、非常に素直な回答で感動しました。普通ならこれでコメント投稿はおしまいにすべきだと思いますが貴殿が映画について真面目に考えているようなので敢えて追記します。

>この映画はもちろん反戦映画ではまったくない
反戦映画である必要があるのですか?私は前回も敢えて「無邪気な日本人の平和主義」と書いてそれを刺激したつもりです。日本では戦争映画とは反戦を訴える映画の事であるという暗黙で広く行き渡った認識がある一方、「史上最大の作戦」や「プライベートライアン」を平気で誉めそやす事が個人でもメディアでも一般的=普通でしょう。
 それはどういう事なのか?そうした日本社会という背景を考えれば貴殿がこの映画を「普通の映画」と表現することは至極当たり前でしょう。実際佐藤忠男氏も朝日新聞に掲載したこの映画の評ではその程度の認識で誉める事しか書いていない。
 こうした戦争を扱った映画を「どう評価するか」において、日本社会は2つの面を持っており、ある意味非常に卑怯でしょう。好戦的なものでも商業的に成功する映画は誉めそやし、一方低予算でつまらない映画でも反戦的な主張が明確だと、時として誉めたりする。映画に感想を述べる個人はこうした矛盾を全て自分の中で整理し解決しないと感想が述べられない、それは一般的な個人には重すぎる作業でしょうね。

2009/2/13  23:47

投稿者:kusukusu

コメント、有難うございます。
すみません。言われていることはたしかに当
たっている面はあると思います。この映画は
もちろん反戦映画ではまったくないし、戦争
とは何か?ということを深く突き詰めて考え
て描いている映画とは言えないでしょう。戦
争映画としては、たしかに高い評価を出来る
ものではないような気はします。
ただ、言い訳にしかならないかもしれません
が、なぜ僕がこういう書き方をしてしまった
のかというと、実は、このフォン・シャオガ
ン監督の映画は、『イノセントワールド ー
天下無賊』を一昨年、見て、それがけっこう
好きだったんですよ。僕は、だから、戦争を
扱った映画だからと言うよりも、『イノセン
トワールド ー天下無賊』というけっこう好
きな映画を撮った監督の作品だからというこ
とで見に行ったのです。それで、内容的に
は、たしかにこういう戦争の描き方はどうな
んだろう・・と思ったところはあるんだけ
ど、でもやっぱり『イノセントワールド ー
天下無賊』を撮った監督の作品なんだからあ
まり悪くも書きたく無いみたいな気持ちも同
時にあって、それであまり映画の内容的な面
の考察には触れずに、「普通にいい映画」み
たいな書き方をしてしまって、実は内容的な
面では疑問を持つんだけど、かつて好きな作
品を撮った監督のものなのでけなしたくない
という気持ちを適当にごまかして書いてし
まったところがあるのです。
こうしたコメントを受けて、やっぱりそうい
う僕のいい加減さがばれたのかな、痛いとこ
ろをつかれたなと思ってしまいました。

http://blue.ap.teacup.com/documentary/

2009/2/13  15:01

投稿者:zames_maki

貴殿はパレスチナ問題に関心があるようですが、この映画を「普通のいい映画」と評価してしまうとは、やはり戦争と映画の関係を知らなさすぎますね。
 これは中国でくりかえし描かれてきた中国の関係した戦争を描いた一連の映画の最新の作とみなすべきでしょう。描写方法はぐっとアメリカ流となり、特撮を多用しアクション映画の興奮と同時に、謎解きの面白みを加えクライマックスへ興奮を誘う判りやすいストーリーという、日本人などの外国人にもわかる娯楽的要素の多いものですが、その本質は変わっておらず愛国的映画ですね。
 したがってパレスチナ問題で焦点になるような、どう描くことが公正なのか?本来何を描くべきなのか?という政治的問題性はまったく検討されていない/進歩していない。そこでは台湾の中国人(国民党兵士)の観客は考慮されていないし、同時に共産中国の成り立ちや、戦争をどう記憶すべきなのかという自身の問題にも何も立ち入っていない。
 そうした映画を日本人が「いい映画」と言ってしまうのはあまりに愚かだ。これは題材が国共内戦ではなく抗日戦争であったならすぐわかること。日本人はその映画をけして誉めず、まったく違う視点から問題視するからですね。
 あるいは無邪気な日本人の好きな平和主義からしても、これは友情という題材で観客を騙し、結局背景である戦争を観客に肯定させる恐ろしいプロパガンダと言える。パレスチナ人が殺される事に異議を唱える人が、この映画では台湾人が一方的に殺されることには喝采を叫んでしまう。これが映画の魔力ですね。

http://d.hatena.ne.jp/zames_maki/20090117

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