2009/3/16

緊急!水俣病 こんな幕引きは許されない  公害・薬害・環境・医療問題

*与党は、水俣病の問題に決着をつけるため、<水俣病幕引き法案>(もちろん、正式な名称はこのような名前の法案ではありませんが)を3月13日に国会に上程しました。その内容は、水俣病被害者救済どころか、加害企業チッソを分社化することでその加害責任を曖昧にするというものです。何十年もかかって、この決着ではあんまりです。

(朝日新聞 記事)
水俣病認定で与党PT検討、3月法案提出   終了手順、明文化案  被害者団体反発
2009.02.14 朝日新聞東京朝刊
 水俣病未認定患者の救済問題で、新たな救済策を検討している与党プロジェクトチーム(PT)は13日、原因企業チッソの分社化などのための特別措置法案を3月上旬に国会に提出する方針を決めた。「真の最終解決」を掲げ、水俣病の認定審査を終了させるまでの手順を明文化することも検討しており、被害者団体などは「完全な幕引きになる」と強く批判している。
 PTの方針では、救済対象者を公的診断で四肢末梢(まっしょう)優位の感覚障害と判定された人とし、一時金などは基金を通じて給付。救済は「遅くとも3年以内に完了する」と期限を設ける。一時金の原資と想定されるチッソ分社化後の株式の売却については、景気悪化を受け、市況好転まで3年をめどに凍結するとしている。
 救済策の実施にあたって、「最終解決」を掲げた95年の政治決着時には示さなかった認定審査終了までの手順を明記する方針に踏み込んだ。ただ、04年に国の認定基準とは別の基準での幅広い救済を求める最高裁判決が出され、新たな認定申請者は6千人に上る。今回の救済策受け入れを拒む被害者団体もあり、実際の「解決」には遠い状態だ。
 水俣病患者連合の高倉史朗事務局長は「水俣病はこれで終わりということになり、今被害を訴えている人、訴訟をする人、これから被害の声をあげるかもしれない人にとっては絶対に許せないと思う」と話した。               

水俣病審査、終了の方向 救済策は3年限り 与党チーム明示へ、幕引き狙いか
2009.02.14 朝日新聞西部朝刊 
 水俣病未認定患者の救済問題で、与党プロジェクトチーム(PT)は13日、被害者救済と原因企業チッソの分社化のための特別措置法案を3月上旬に国会に提出する方針を決めた。厳格な認定基準で水俣病と認められない被害者救済の最終決着にとどまらず、水俣病問題全体を終わらせるため、認定制度を終了させるまでの道筋を明文化する方針を示した。だが、民主党や被害者からは「強引な幕引きを図るものだ」と批判も強く、救済策が実現するかはなお不透明だ。  (中島健)

 PTによると、救済対象は公的診断で四肢末梢(まっしょう)優位の感覚障害と判定された人で、水俣病被害者との位置づけを検討。一時金150万円などは基金を通じて給付。救済は「遅くとも3年以内に完了」と期限を設ける。一時金などの原資と想定されるチッソ分社化後の株式売却は、経済情勢の悪化を受け、救済が終了し市況が好転するまで、3年をめどに凍結するとしている。
 未認定患者の救済を巡っては、「最終的・全面的解決」として95年に政治決着が図られ、いったんは混迷がおさまった。だが、04年に最高裁が行政とは別の基準で幅広い救済を命じた後、認定申請が急増、熊本、鹿児島両県で6千人を超える。訴訟も起こされ、「解決」にはほど遠い状態だ。
 今回、PTは救済策の実施にあたって、認定審査終了までの手順を明記するとの方針に初めて踏み込み、「水俣病問題を終わらせる」という強い意思を示した。認定申請者について審査が進めば認定申請の受け付けを終える方向。損害賠償を求めて国などと争っている被害者団体との訴訟の解決にめどをつけ、「最終解決」を打ち出す意向だ。
 ただ、法案成立のカギは民主党が握っており、PTは法案審議前に協議したいとの意向だ。民主党水俣病対策作業チーム座長の松野信夫参院議員は「認定申請の窓口を閉ざす幕引きの意図を感じる。補償の窓口は開けておくべきで、慎重に対応を検討したい」と話した。
◆チッソ生き残り優先
《解説》与党プロジェクトチーム(PT)が掲げる「真の最終解決」は、救済策の検討を始めた当初からの方針だった。ただ、水俣病の症状を極めて限定的にとらえた現行認定基準の見直しなど、被害者側の要求は無視。加害企業チッソの生き残りを優先させた内容だと受け止めざるを得ない。強引な「最終解決」は95年の政治決着と同様、火種を残すだろう。
 なかでも重大な点が、「認定審査の結了」を盛り込んだこと。それは、認定制度という水俣病被害者救済システムの廃止を意味するが、チッソの分社化にも絡んでくる。
 分社化するには、チッソが抱える債務を確定させる必要がある。後年、新たな被害者が増えると債務が膨らむため、認定制度をなくして被害者救済の門戸を閉じる。なかなか名乗り出られない被害者側の事情より、チッソの債務確定を優先させるわけだ。
 さらに、認定基準の妥当性を考えるのに必要な「水俣病とはどういう病気なのか」という検討が、PTの議論から一切抜けていた。
 救済対象を手足の先の感覚が鈍くなる四肢末梢優位の感覚障害がある人に限ったが、地元で診療を続ける医師らは、全身の感覚障害や感覚障害がみられないケースなど多様な病像を指摘する。だが、こうした見解を持つ専門医らも交えて基準の再検討を求めた声は、黙殺された。
 公式確認から半世紀以上。今なお、6千人を超す認定申請者のいる「闇」を抱えた公害事件を、チッソの分社化=チッソの生き残りを優先させて幕引きしていいのか。人命より経済成長を重んじたかつての日本の誤りを、忘れ去ることにつながりはしないだろうか。 (編集委員・野上隆生)
■与党PTの水俣病問題解決の方向性骨子
(1)対象者は、公的診断で四肢末梢(まっしょう)優位の感覚障害を有すると判定された者。基金を設けて、一時金150万円、医療費、医療手当を給付する。速やかに実施し、遅くとも3年以内に完了する。
(2)救済策の終了、認定審査の結了、訴訟の解決など救済が終了する手順を示し、最終解決だと明らかにする。
(3)チッソの支援と分社化を実施する。分社化後の株式売却は、救済の終了及び市況の好転まで3年をめどに凍結する。

「幕引き許さない」 被害者、実態解明ないまま 水俣病審査終了へ
2009.02.14 朝日新聞西部朝刊 
 13日の与党プロジェクトチーム(PT)の会合で「水俣病問題の最終的包括的解決」の方針が示された。被害の全容を解明せず、未認定患者の救済を機に水俣病問題そのものを終わらせようとする内容。PT救済策に前向きな被害者団体が歓迎する一方、怒りの声も噴出した。=1面参照
 PT救済策に期待してきた水俣病被害者芦北の会(熊本県津奈木町、270人)の村上喜治会長は「救済策の法案化は評価できる。分社化は国会で十分議論してもらいたい。認定審査を結了し水俣病問題を終わりにすることは、地域の発展を考えればいいことではないか」と歓迎した。
 一方、同様にPT救済策を望んできた水俣病出水の会(鹿児島県出水市、3400人)の尾上利夫会長は「個人への一時金に加え、団体加算金の話が出ないのは納得できない。これでは救済策に乗れない」と憤った。
 訴訟派団体の批判は強い。国、県、チッソを相手に損害賠償訴訟を争う水俣病不知火患者会(熊本県水俣市、2100人)の園田昭人弁護団長は「被害者より加害企業を優先する姿勢が鮮明になった。与党との意見交換にやぶさかではないが、距離が広がった。司法救済を求める立場は変わらない」。
 同様に訴訟を争う水俣病被害者互助会(水俣市、150人)の谷洋一事務局長は「与党PTと環境省、チッソは患者を切り捨て、水俣病問題を終わらせようとしている。私たちは訴訟を続ける。こんな案が通るはずはない」と話した。
 95年の政治決着にかかわった関係者も疑問の声を上げている。当時、水俣市長だった吉井正澄さん(77)は「国の責任が明確にされないままの幕引きだった95年の決着には課題が残った。04年の関西訴訟最高裁判決で国、県の責任が確定し、被害者が声をあげた。水俣病に必要なのは恒久的な対策。今回の案では95年の二の舞いにならないか」と懸念を口にした。
 政治決着に応じた水俣病被害者の会全国連絡会(水俣市)の中山裕二事務局長は「哲学がない。最高裁判決も考慮されていない」と批判。「認定審査の結了」を打ち出している点についても「全員が新救済策に応じて認定申請を取り下げるわけではない。検診医がいない現状で、どう審査を終わらせるのか」と話す。
 政治決着に応じた水俣病患者連合(水俣市)の高倉史朗事務局長は「被害実態の全体が分からない中、救済策実現に乗じて、直接関係のない認定審査を終わらせ、水俣病問題すべてを幕引きしようという卑劣なやり方であり、許せない」と語った。
また、長年、水俣病問題に取り組んできた熊本学園大の原田正純教授は「被害の全容がわからないのに、救済期限を区切るべきではない。認定審査の結了などできるはずがない」としたうえで、医学面については「公的診断というが、水俣病の診察歴のある医者が少ないのに、誰が診るのか。胎児性患者で感覚障害がない人は救済対象から漏れてしまう」と指摘した。
■これまでの動きと救済内容
56年 水俣病を公式確認
68年 政府がチッソによる公害病と認定
77年 環境庁が水俣病の認定基準を通知
  【基準】四肢末梢(まっしょう)優位の感覚障害など二つ以上の症状の組み合わせ
  【補償内容】慰謝料1600万〜1800万円、手当、医療費など
  【対象人数など】約2300人
95年 政府が「政治決着」めざし解決策を決定
  【基準】(1)感覚障害(2)それ以外の神経症状(公的診断)
  【補償内容】(1)一時金260万円、手当、医療費(2)医療費
  【対象人数など】(1)約1万人(2)約1100人
04年 関西訴訟最高裁判決で国、熊本県の責任確定。国とは別基準での救済求める
  【基準】一定の条件を満たせば感覚障害のみ
  【補償内容】賠償金450万〜850万円、手当、医療費
  【対象人数など】51人
05年 環境省が新保健手帳の交付など新対策を発表
  【基準】一定の神経症状(主治医の診断)
  【補償内容】医療費
  【対象人数など】約2万人
07年 与党PTが未認定患者の新救済案示す
  【基準】感覚障害
  【補償内容】一時金150万円、手当、医療費
  【対象人数など】?
(人数は熊本、鹿児島両県の被害者の合計。認定者数と新保健手帳の交付者数は昨年末現在)


(毎日新聞 社説)
社説:水俣病最終解決 認定基準見直しはどうした
2009.03.08 毎日新聞東京朝刊 

 自民、公明両党の水俣病に関するプロジェクトチームが6日、最終解決のための特別措置法案を了承した。水俣病は公式確認からまもなく53年となる。被害者の高齢化も進んでいる。そうしたことを勘案すれば、抜本的な救済を急ぐことは当然だ。問題はその内容である。
 第二次世界大戦後の経済復興から高度成長の過程で発生し、被害が拡大したのが水俣病である。責任は水銀をたれ流しにしたチッソ、それを規制しなかった行政が負っている。最終決着というのであれば、真に被害者の立場に立ったものでなければならない。ところが、与党の特措法案には、まだ問題が多い。
 第一は、公害健康被害補償法の認定基準に踏み込んでいない点だ。
 現在の国の公健法認定基準は二つ以上の症候があることだ。水俣病関西訴訟の最高裁判決(04年10月)は大阪高裁の一つの症候でもメチル水銀中毒と認められるとの判断を追認した。公式確認50年に向け環境省が設けた検証のための懇談会も、救済・補償の恒久的枠組み作りを提言した。
 ともに、公健法の認定基準見直しを求めていることは容易に想像できる。しかし、与党は今回も77年に提示した「二つ以上の症候」という判断基準は変更しなかった。
 特措法には3年以内に救済措置を講じ、終了時点で水俣湾沿岸地域や阿賀野川下流地域の公健法地域指定を解除することが盛り込まれている。
 そこで、第二の問題が出てくる。熊本・鹿児島両県で1月末時点で、公健法認定申請者は6200人に達している。3年で公正な認定審査作業ができるのか。現在提訴されている3件の損害賠償訴訟はそれまでに終わる保証はない。
 加えて、最終解決の柱である、公的診断でメチル水銀の影響がみられると判断された被害者への救済が一時金150万円、療養費・療養手当月1万円で十分なのかも争点だ。ちなみに、95年の政治解決時には一時金260万円、医療費、療養手当月約2万円だった。
 第三は、一時金を負担する原因企業への支援策としての、チッソの分社化容認である。いまのチッソを補償のための会社とし、収益を上げる事業会社を分社化する構想はチッソが求めていた。
 与党は救済を確実にするため、子会社の株式売却は救済の終了まで凍結するなどの条件は付けた上で、認めた。救済のための基金も設ける。しかし、裁判が長引いた時などに、責任の所在が不明確になりかねない。
 水俣病を巡っては、いまだに被害の全容は明らかになっていない。関西訴訟以降の認定申請者急増は、隠れていた被害者がいたからだ。早期に救済枠組みを作ると同時に、被害の実態把握も急ぐべきだ。
1



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ