2009/8/2

益田ミリ『結婚しなくていいですか。』  マンガ

傑作。
淡々としていながら(淡々としているように表面的には見えながら)、これ程、巧みに伏線や、登場人物達の偶然の出会いなどを張り巡らせた物語作品はちょっと珍しいのではないか? このマンガ作品で描かれる「偶然の出会い」は、トレンディドラマとかで「偶然の出会い」によって展開していくような「偶然の出会い」とは違う「偶然の出会い」であるのではないかと思われるが、淡々としていると書いたが、淡々とした日常描写に徹した作品のように一見、見えるからこそ、それが巧みな伏線であったことにその瞬間には気がつかなくて、読み進む内に、あっとたびたび思わされることになるわけだけど。この絶妙さ。マンガだからこそ達成できたものなのかもしれないが(たとえばモノローグの手法などはマンガでないとちょっと出来ない)、そうしたマンガの表現手法としてのユニークさ(絵は決して上手くはないが、逆にそれがヘタウマ的な味わいになっている)、物語の語り口の巧みさという点で斬新な作品だと思うのだけど、このマンガでさらに長所であると思われることは、そうした手法や語り口ばかりが突出しているわけでもなく、そうした斬新な語り口が確実にある種のテーマ的な達成に至っていると思えることだろう。
たとえば、伏線の張り巡らせ方とかの語り口の巧みさということならば、映画で言えばリチャード・リンクレイターのような巧みさをちょっと思わせるものなのかもしれないが、この『結婚しなくていいですか。』は、リンクレイターの『恋人たちの距離』のような「恋愛もの」ではなく、むしろ、「恋愛もの」の対極にあるような、「反(アンチ)恋愛もの」と言える。いや、「反(アンチ)」というのとも違うのかもしれない。「反(アンチ)」というより「非」であり、「非恋愛もの」とでも言うべき作品なのかもしれない。
その意味では、リンクレイターよりもエリック・ロメールにまだ近いのかもしれないが、しかし、ロメールとも異なるものである。
何より、そうした「非恋愛」の日常の時間の素晴らしさ、豊かさを描き出したという点で優れている作品とも思える。つまり、この『結婚しなくていいですか。』というマンガ作品は、「恋愛」を抜きにしても女性の人生には豊かなディテール(瞬間)があるのだということを描き切った、真の意味で現代的な女性賛歌であるとも言えるのではないだろうか。
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