2012/6/15

原田正純先生関連新聞記事(1)  公害・薬害・環境・医療問題

慕われた笑顔に別れ 水俣病研究者・原田正純さん死去 /熊本県
2012.06.13 西部地方版/熊本
 半世紀以上、水俣病の研究に尽くした元熊本学園大教授で医師の原田正純さんが77年の生涯を閉じた。悲報から一夜明けた12日、多くの水俣病の患者や関係者たちがその死を悼んだ。
 ●死去前「やりたいことやった」
 「常に弱者に寄り添い、反骨の医師として生涯を閉じられた」。12日午前、熊本学園大(熊本市)で記者会見した同大水俣学研究センター長の花田昌宣教授(59)は人柄をたたえた。
 同センターによると、原田さんは11日夜、熊本市の自宅で妻の寿美子さん(68)や2人の娘らに囲まれ、最後は孫の手を握って静かに息を引き取った。亡くなる数時間前には、寿美子さんが手入れした庭を眺めて、「きれいだね。ありがとう」と話したという。
 死去前は「やりたいことはだいたいやった」と話す一方で、「唯一の心残りが次世代への経験の伝承だった」と花田教授。「公害などの悲劇を二度と繰り返さないで欲しい」との思いから、自らが見聞きした経験を子どもたちに伝える本の構想も温めていた。13日には鹿児島県の母校の小学校を訪ね、子どもたちに思いを伝えるテレビ番組の企画も予定していたが、かなわなかった。
 花田教授は、水俣病の経験から学問の枠を超えて教訓を学ぶ「水俣学」を02年から原田さんとともに発展させてきた。「先生と同じ仕事はできないが、気持ちをついでいきたい」と語った。
 ●患者「待ち受け」に写真
 水俣市の水俣病患者たちも、長年慕ってきた原田さんとの別れを惜しんだ。
 胎児性水俣病患者の坂本しのぶさん(55)は「何でも話せる方。懸命に患者を診てくれて、おつかれさまと言いたい」。胎児性患者で1977年に21歳で亡くなった上村智子さんの父好男さん(77)は「いつも優しく『智子ちゃん、おるね』とリュック姿で家を訪ねてくれた」と懐かしんだ。「水俣病を通じて、原田さんは熊本だけでなく、世界の医者になった」
 原田さんが理事を務めていた水俣市の事業所「ほっとはうす」も12日、会見を開いた。
 ほっとはうすに集う患者らは5月、原田さんが入院していた熊本市の病院を訪れた。原田さんは「みんなが来てくれたから元気になった」と大喜び。患者らが帰りの車に乗り込もうとしても病室の窓から手を振り続けた。松永幸一郎さん(48)は「逆に私の体調を心配してくれた。本当に残念」と振り返った。
 長井勇さん(55)は昨年3月、体に力が入らなくなり、3カ月間入院。病院を訪れた原田さんは、長井さんの主治医に対し、「水俣病は世界初の病気。(長井さんは)世界で大切な人だから治療は慎重にしてほしい」と伝えた。長井さんは「先生は本当に優しい人だった」と涙ぐんだ。
 原田さんが体調を崩してから、携帯電話の待ち受け画面を原田さんの顔写真にした加賀田清子さん(56)は「先生の笑顔が好きやったもんね。(亡くなったことが)信じられない」。携帯電話を手にする度、原田さんの回復を祈り続けてきたという。
 施設長の加藤タケ子さん(61)は亡くなる2日前、原田さんを見舞った。原田さんは「僕は久しぶりに泣いたよ」と語りかけてきた。加賀田さんが、自身の写真を携帯電話の待ち受け画面にした思いを知り、深く感激していたという。加藤さんは「みんなを気遣ってとにかく笑顔を絶やさない。本当に純粋でした」。
 ■原田正純さんの歩み
 1934年 出生。鹿児島県さつま町で育つ
  53年 熊本大医学部に入学
  56年 水俣病公式確認
  60年 医師免許取得、大学院に進学
  62年 胎児性水俣病の存在を立証する発表
  63年 三井三池炭鉱の炭じん爆発事故で一酸化炭素中毒患者を診察
  65年 胎児性水俣病の論文で日本精神神経学会賞を受賞
  68年 カネミ油症の被害が発覚
  69年 水俣病第1次訴訟提訴
  72年 スウェーデンで国連人間環境会議が開催、現地へ
  74年 長崎県五島でカネミ油症患者を調査
  75年 世界環境調査団に参加、カナダ先住民居留地などを調査
  85年 インドの有毒ガス漏出事故を調査
  88年 ベトナムで枯れ葉剤被害を本格調査
  95年 政府が水俣病未認定問題の解決案を決定(政治決着)
  99年 熊本学園大教授に就任(2010年まで)
 2002年 熊本学園大で「水俣学」を開講
  04年 水俣病関西訴訟最高裁判決で国と県の行政責任が確定
  10年 水俣病被害者救済法に基づく未認定患者の新救済策開始(第2の政治決着)
  11年 「水俣学」の提唱と深化で朝日賞受賞
  12年 急性骨髄性白血病のため死去
 【写真説明】
 原田さんの写真を携帯電話の待ち受け画面に。これを知った原田さんは「久しぶりに泣いた」と感激していたという=水俣市
朝日新聞社
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