2006/2/11

水俣病懇談会関連記事(1)  公害・薬害・環境・医療問題

*熊本日日新聞の水俣病懇談会関連記事です。

(ニュース)
懇談会報告要旨 新潟患者団体 両方の水俣病重ね合わせて

【新潟水俣病被害者の会、新潟水俣病共闘会議の高野秀男氏】
 アスベスト問題など、水俣病に類似した社会的事件は頻発している。懇談会の提言が、環境省設立の原点に戻り、被害者や国民の立場に立った環境行政に取り組むきっかけになることを切望する。
 新潟の被害者には「いつも熊本の付け足し。もう少し新潟の方を向いて」という思いがある。両方の水俣病を重ね合わせることが、解決の参考になる。公害が起こったとき、まずなすべきことは、行政の責任できちんと調査し、被害者全員を無条件で救済すること。関西訴訟最高裁判決で国の責任が確定した以上、被害の実態調査を行って救済措置を取るべき。

【新潟水俣病安田患者の会の旗野秀人氏】
 安田患者の会は、新潟水俣病二次訴訟に新潟水俣病被害者の会安田支部として参加したが、独自の運動も並行して続けている。
 患者は裁判中、温泉や歌を楽しむのも我慢してきた。救済実現に向けた過去の運動の中で「水俣病患者はこうあるべきだ」という理想の患者像を求め過ぎていたことの誤りに気づいた。現在は映画上映や歌、さまざまな交流などを通して「水俣病で大変だったけど、幸せだった」と感じてもらえるような運動を展開している。(久間孝志)
(熊本日日新聞、2006年1月18日朝刊)

懇談会報告要旨 加藤たけ子委員 尽きない親亡き後の不安
 胎児性水俣病の発見は、人類史を覆す重大な出来事。胎盤が母体に宿った生命を守ると信じられてきた人類の法則が崩れ去った。胎児性患者の存在は、生命の危機を警告している。
 しかし、被害の全容は未解明。胎児性患者らには、通常の加齢では考えられない急速な身体機能の低下も目立ってきた。そこで、彼らが望む、地域で暮らすために必要な質の高い生活支援と介護医療を導き出すことなどを目的に、実態把握に取り組んだ。
 両親、家族のほとんどが水俣病被害を受け、調査対象者十九人全員が肢体、言語など二つ以上の障害を併せ持つ。幼少期より家族から離れ長期入院を余儀なくされた精神的苦痛、地域社会の無理解に傷付けられてきた。
 中には、働く場を自ら切り開く活動などに積極的に参加した人もいる。働く場の確保は、生活基盤安定や地域の人たちとのつながりを生み、社会参加と自己実現にとって不可欠な条件といえる。
 緊急課題としては、親亡き後が現実になっていることだ。ヘルパー派遣などを得て一人暮らしを選択しても不安は尽きず、兄弟姉妹との同居も気遣いが多い。心身の不調を引き起こした例もある。水俣病の差別の中で受けた痛手を丁寧にカバーできる体制が必要だ。
 中学校特殊学級を卒業後、約三十年間、差別や偏見に打ちのめされ、どこにも行き場がなかった人もいる。本人や家族に原因があるのではなく、社会的対策の欠如、不備の結果だ。さらに地域で孤立し、健康や生活の面で困難や不安を抱えながらも、周りに伝えることさえできない重篤な患者や家族がいるはずだ。
 一九五〇(昭和二十五)年以降生まれの認定患者百十二人のうち、現在の生存者は七十九人。死亡年齢、原因などを明らかにすることで、彼らが安心して暮らしていく上での大事なポイントを見出せると思う。
 胎児性患者への国や自治体の福祉施策は乏しかった。五十年たった今、彼らを取り巻く状況の厳しさが如実に物語っている。国は、胎児性患者らの実態に即した福祉支援対策を充実していくことが急務だ。(亀井宏二)
(熊本日日新聞、2006年1月18日朝刊)

水俣病懇談会 加藤委員が胎児性患者の自立支援訴え
 環境相の私的懇談会「水俣病問題に係る懇談会」(有馬朗人座長)は十七日、東京・霞が関の環境省で第七回会合を開いた。水俣市の小規模通所授産施設「ほっとほうす」代表の加藤たけ子委員が、胎児性患者らを取り巻く課題について報告。「胎児性患者らは自立するための福祉体制を望んでいる」と社会的な自立支援の必要性を訴えた。
 加藤委員は、ほっとはうすに通所する胎児性患者ら十九人とその家族からの聞き取りを中心に報告。現状の緊急課題として、十九人のうち既に三人の両親が亡くなるなど数家族の親の死亡が続く一方で、行政の既存の福祉施策では対応しきれていない現状を指摘した。
 その上で、幼少期から治療や就学のため家族と離れ、さらに地域社会の無理解の中で傷付けられてきたという二重三重の痛手を丁寧にカバーする体制として、小規模ながら「住む」「泊まる」「通う」など多機能な福祉サービスが提供できる「サービスのコンビニ化」を提言した。
 行政の胎児性患者対策が不十分だった原因として、加藤委員は「認定問題に目が奪われ、胎児性患者の問題が地域福祉の問題というとらえ方ができていなかったのではないか」と説明。前水俣市長の吉井正澄委員は「患者支援団体と、市民や行政の連携、交流が進まず、福祉分野のもやい直しが欠けていた」と指摘した。
 また、新潟水俣病患者団体からのヒアリングもあり、新潟水俣病被害者の会と新潟水俣病共闘会議事務局の高野秀男氏、新潟水俣病安田患者の会事務局の旗野秀人氏が、それぞれ設立経緯や活動内容などを報告した。
 次回は二月七日。懇談会として、どのような提言をまとめるかを中心に議論する。これに関連し、国と熊本県の責任を認め現行の水俣病認定基準を事実上否定した、一昨年十月の水俣病関西訴訟最高裁判決について、元最高裁判事の亀山継夫委員は「環境省は判決に対決する姿勢のようだが、同省が判決をどうとらえるのか明確にしてもらう必要がある」と注文を付けた。(久間孝志、亀井宏二)

懇談会の委員(▼は欠席)
▽有馬朗人(元文部相、元東京大総長)▽嘉田由紀子(京都精華大教授)▽加藤たけ子(小規模通所授産施設「ほっとはうす」代表)▽金平輝子(元東京都副知事)▽亀山継夫(元最高裁判事)▽鳥井弘之(元日本経済新聞社論説委員)▽丸山定巳(久留米工大教授、熊本大名誉教授)▽柳田邦男(ノンフィクション作家)▼屋山太郎(政治評論家)▽吉井正澄(前水俣市長)
(熊本日日新聞、2006年1月18日朝刊)

水俣病懇談会 「認定制度へ提言必要」 委員の半数が見解
 環境相の私的懇談会「水俣病問題に係る懇談会」(有馬朗人座長、十人)の少なくとも半数の委員が、水俣病認定制度をめぐる問題に関連し、何らかの提言や方向性を示そうとする見解を持っていることが十八日、明らかになった。環境省は同懇談会設置当初から「認定制度を議論するための懇談会ではない」と消極的な姿勢を示していたが、委員の多くは認定制度への言及が避けられないとの見方に傾いている。
 懇談会は、水俣病公式確認五十年を迎える五月までに意見の集約を目指している。有馬座長が昨年十一月、各委員に議論の進め方や具体的な提言について意見を募り、十八日までに八委員が意見を文書で提出した。
 提出文書などによると、熊本大名誉教授の丸山定巳氏は「三千三百人を上回る認定申請者が滞留し、(熊本、鹿児島両県の)認定審査会が機能していない現実をみれば、現行の認定制度は破たんしている」と指摘。「新たな補償体系を構築する必要がある」と方向性を示した。
 水俣市の小規模通所授産施設代表の加藤たけ子氏は、現行の公害健康被害補償法(公健法)に基づく認定基準の見直しを提言の一つに挙げた。
 元最高裁判事の亀山継夫氏は、二〇〇四(平成十六)年十月の水俣病関西訴訟最高裁判決以降に認定申請者が増え、損害賠償訴訟が新たに提起されたことを重視。「五十年の節目をうたい、提言を出しても、未解決の事案が相当数残り、国側敗訴の判決が出るような事態になれば、提言自体、茶番劇と化す」と、認定制度の議論は避けて通れないとの見解を示した。
 最高裁判決による「司法認定」と公健法に基づく「行政認定」のずれを問題提起する意見や、水俣病を踏まえ、社会的危機が発生した場合の基本的考え方を懇談会で取りまとめる中で、その検討項目の一つに「被害判定・認定の在り方」を挙げる意見もあった。
 懇談会は四月までに計三回会合を開き、提言をまとめる方針。環境省は最高裁判決後も現行の認定基準を見直す考えがないことを一貫して繰り返している。(亀井宏二)
(熊本日日新聞、2006年1月19日朝刊)

懇談会 地元委員3人からの報告
 これまでに七回開かれた会合では、地元から参加した委員三人が、調査結果や見解を報告した。
 吉井正澄氏は一九九五(平成七)年の政治解決時の首相談話は「行政責任に触れず道義的、心情的な謝罪」とした上で、関西訴訟最高裁判決で断罪された行政責任を踏まえた首相の反省と謝罪を要求した。時期は今年五月の犠牲者慰霊式と明示。水俣病の新たな定義づくりのために「医学や法律の専門家による議論の場づくり」も提案した。
 丸山定巳氏は、代表を務める研究グループ「不知火海研究プロジェクト」が、最高裁判決後に認定申請した二百七十四人を対象に実施した調査の結果を発表。「政治解決が、自らの不健康を水俣病と関連づける動因となった」と分析。「補償を受けている人たちと同じような食生活をし、自覚症状が同じなのにもかかわらず、自分は補償を受けていないという不公平感が大量の認定申請につながっている」と述べた。
 胎児性患者を取り巻く課題を取り上げたのは、加藤たけ子氏。水俣市の小規模通所授産施設「ほっとはうす」に通う胎児性患者ら十九人とその家族への聞き取りを中心にしながら、親の死亡が続く一方で、行政の既存の福祉施策では対応しきれていない現状を指摘。「胎児性患者らは自立するための福祉体制を望んでいる」と、社会的支援を訴えた。
(熊本日日新聞、2006年1月22日朝刊)
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