2006/7/1

柄谷行人『世界共和国へ』  

*柄谷行人『世界共和国へ』(岩波新書)、これはすごい。柄谷氏が到達している考えを新書1冊で平易に読める!

(毎日新聞の記事)
柄谷行人さん:初の新書『世界共和国へ』を語る カントの構想、生かし国連の強化を
 評論家の柄谷行人さんが、現代世界が抱える諸問題について、自らの思考の骨子をまとめた『世界共和国へ−−資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)を出した。マルクスやプルードンの議論から、カントが唱えたいわば国連の発展形態「世界共和国」へ向けた道を説く。柄谷さんに、初の新書である本書の執筆動機や狙いを聞いた。【鈴木英生】

 戦争、環境破壊、経済格差など、現在の差し迫った諸問題を考えていくと、個々人の意思を超えて人々を動かす構造にぶつかる。それは単に資本主義経済ではないし、単に国家や民族でもない。むしろ、それらが互いに補い合うような構造である。本書は、それを「資本=ネーション=国家」と呼ぶ。

 「たとえば、資本主義を国家によって規制したり廃棄したりすることは難しくない。しかし、それは国家を強化することになるだけです」

 00年の時点で、国家権力に訴えることなく資本主義を揚棄する(乗り越える)方法を考え、社会運動体「NAM」を結成した。NAMは、さまざまな市民運動の連携と「市民通貨」による代替経済を目指した。だが、01年の米国同時多発テロで、認識が甘かったと悟る。NAMも解散してしまう。

 「01年までは、グローバル資本主義が国民国家の意味を失わせ、各国の運動が国家を超えて連合していけるだろうと見えた。しかし、9・11以降はその流れが否定され、国家が前面に出てきた。今回の本は、国家の自立性について十分考えてこなかったことに対する自己批判でもある」

 本書が参照するプルードンやマルクスは、国家の揚棄を考えた。しかし彼らは、社会における経済的な階級対立が消えれば、国家も消えてしまうだろうと考えていた。ところが、国家は消えない。国家は独自の存在理由をもっているからだ。国家やネーションはそれぞれ、商品交換とは異なる「交換様式」に根ざしているという。

 「国家を否定するのはいい。しかし、国家が何であるかという認識がないと、それを否定することにはならない。逆に、国家を強化することになってしまう」

 国家はしばしば、政府と混同されている。だからしばしば、真に民主的な政府を作ればよいと考えられる。しかし国家は何よりも、他の国家(敵)に対して存在する。それがはっきりするのは、戦争の時だけだ。

 「一国だけで国家を揚棄するという考えは無効です。だから、マルクス主義者はいつも世界同時革命を唱えてきた。しかし、それは実現不可能な夢想にすぎない」

 ではどうすればよいか。その鍵をカントが1795年に書いた『永遠平和のために』に求める。フランス革命の中で書かれたこの本の理念は、以後しばらく無視されたが、第一次大戦後に国際連盟、第二次大戦後に国際連合として実現した。

 「カントの構想は単なる平和論ではなく、世界共和国にいたる世界史の哲学であり、資本=ネーション=国家を揚棄する構想として見るべきです」

 現在の国連にはさまざまな批判がある。だが、国連を強化し再編成していく方向にしか将来の望みはない。それは、諸国家の主権を制限する「上からの運動」であり、環境保護や反戦など、各国におけるさまざまな「下からの運動」と相まって力を持つ。

 「僕が学生だった60年代前半、東大の経済学部と法学部は『資本論』に基づく経済学原理が必修だった。つまり、当時、官庁や大会社の中枢に入る人は、資本主義経済が根本的な欠陥を抱えていることを一応は承知していた。今はそうではない。だから、僕の本は、むしろそういう人たちに読んでもらいたい」
(毎日新聞 2006年6月21日 東京夕刊)
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2007/8/6  10:37

投稿者:kusukusu

コメントとリンク、有難うございます。
短い文に難しい内容をよく整理してまとめられていると思いました。

柄谷氏は難しい本を書くだけではなく、自らも運動を実践されていて、そういう点には批判がある(むしろ、学者は学問、研究のみに勤しむべきではないか?という)人もいるかもしれませんが、僕は好感を持っています。

2007/8/5  4:56

投稿者:Sakura Plan

はじめまして。
「世界共和国へ」の検索結果からここにきました。
この本は私も非常に興味深かったです。私なりにこの本について記事を書いてみましたので、ぜひ一度サイトを見てみてください。

http://ameblo.jp/sakura-plan/entry-10042233020.html

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