2006/9/3

水俣病懇談会 提言書、まとまる   公害・薬害・環境・医療問題

(ニュース)
水俣病 認定基準見直しは求めず 環境相懇談会
 水俣病問題を検証する小池百合子環境相の私的懇談会「水俣病問題に係る懇談会」(有馬朗人座長)が1日、最終会合を開き、提言書をまとめた。焦点だった国の認定基準については見直さず、現行基準で救済されない被害者を補償・救済する恒久的な仕組みを構築するよう求めた。取りまとめを受けて小池環境相は「真摯(しんし)に、その実現に向けて、努力したい」とコメントを発表、提言を最大限尊重する意向を明らかにした。環境省は今後、与党とも協議し、新たな救済策の検討を本格化させる。
 提言書はA4判で約60ページ。被害を拡大させた行政の責任、被害者の苦しみを救う制度、未来へのメッセージなど全7章。
 現行の国の認定基準は、手足のしびれなどの感覚障害に加え、視野狭窄(きょうさく)や難聴など複数の症状が求められて厳しいため、水俣病の公式確認から50年を経ても救済されない認定申請者が4200人以上に上る。
 このため認定基準が議論の焦点になったが、結局、「(チッソとの協定に基づき)補償を受ける症状のボーダーラインとしては機能する」と維持を容認した。しかし、被害者が多数存在する現状を早急に解消し、被害者を漏れなく適切に救済・補償する恒久的な枠組みを急いで作るように求めた。
 救済策の具体的な言及はないが、▽従来の補償・救済策の対象者が不利にならないようにする▽異なる枠組みで救済された人々の間で公平感を保つ▽認定基準による「患者」と、それ以外の「被害者」を、統一した名称にする−−などの点を考慮するよう要請した。
 このほか熊本、鹿児島両県の認定審査会を再開させる▽被害者が安心して暮らせるよう水俣地域を「福祉先進モデル地域」に指定する−−などを提言した。
 懇談会は、水俣病の経験と教訓を後世に引き継ごうと有識者10人を集め設置された。当初は公式確認50年の今年5月1日までに提言する予定だったが、議論がまとまらず大幅に先送りされ、この日は5月下旬以来、約3月ぶりの公式会合だった。【江口一、平野美紀】
(毎日新聞) - 9月2日10時26分更新

水俣病の未認定患者、全員救済求める…有識者懇報告書
 水俣病問題を検証する小池環境相の私的懇談会「水俣病問題に係る懇談会」(座長・有馬朗人元文相)は1日、現行の認定基準では救済できない2万人ともされる未認定患者すべてを補償・救済する枠組みを作るよう国に求める報告書をまとめた。

 しかし、最大の焦点だった認定基準の見直しには踏み込まず、新しい枠組みの具体策も示さなかった。今月中に小池環境相に提出する。

 報告書は、2004年10月の関西水俣病訴訟の最高裁判決で、水俣病の被害を拡大させたことに対する行政責任が認定されたことを重視。原因企業のチッソが補償費用を負担するのは当然とする一方で、新たな枠組みでは、国が前面に立つことを提言。水俣病の被害者を「国全体が経済成長の恩恵を受けた陰で犠牲となった」と位置付け、国の新たな財政負担を求めた。
(読売新聞) - 9月1日23時38分更新

救済「政治決断で」 水俣病懇が12の提言 全面決着へ 恒久的枠組みを
 小池百合子環境相の私的機関「水俣病問題に係る懇談会」(座長・有馬朗人元文相)の最終会合が1日、都内で開かれ、小池環境相に提出する提言書を取りまとめた。多数の患者認定申請者が放置されるなどしている現実を踏まえ「水俣病は今も終わっていない」との認識を確認。焦点だった認定基準見直しについて直接的には記述しなかったが、政府全体の責任で「被害者をもれなく適切に救済・補償できる恒久的な枠組みを早急に構築」するよう迫っている。ポスト小泉政権発足をにらみ、月内の早い時期に提出したい考えだ。

 提言は「公害の原点」とされる水俣病問題について、今年で公式確認から50年を迎えてなお混迷している実態も含め検証。失敗に学び、将来に向けて生かすべき教訓として、真の福祉国家づくりと、国民の「いのちの安全」を守る危機管理体制整備を唱え、12項目の取り組みを提唱した。

 2万人を超えると推測される被害者を救済し、問題を完全解決するには「高い次元の政治決断」が必要と指摘。現行の患者認定基準については、それに従い救済されている被害者の存在や歴史的経緯などを考慮、見直し不可能とする環境省との調整も経て、基準維持を容認することに一定の理解を示したが、国の損害賠償責任を認めた関西訴訟最高裁判決などを踏まえ、この基準だけで解決できないのは明らかとし、被害者をもれなく公平に救済・補償する枠組みづくりを提起。国がその前面に立つよう求め、財政負担も「当然と考えるべきだ」としている。

 他に、社会的弱者や被害者の声をくみ取れるよう、自身(1人称)や身内(2人称)といった当事者の切実な視線と、他者(3人称)の冷静なまなざしを併せ持つ「2・5人称の視点」を備えた行政組織新設や、見過ごされがちだった胎児性患者の支援、水俣を「環境モデル都市」として福祉と合わせた先進地とする構想なども提案した。

 有馬座長は「3―5年たって提言がどのように実行されたか、報告をお願いしたい」と述べ、環境省に提言具体化に全力で取り組むよう求めた。

■実現へ真摯に努力 小池百合子環境相の話
 有馬座長をはじめ委員の尽力に感謝したい。今後、提言を正式にいただいた上で、しっかり受け止め、真摯(しんし)に実現に向けて努力したい。

▽水俣病問題に係る懇談会
 水俣病の公式確認から今年5月1日で50年の節目を迎えるのを機に環境省が2005年4月に設置した、小池百合子環境相の私的懇談会。水俣病の被害拡大に対する国と熊本県の責任を認めた04年10月の関西訴訟最高裁判決を踏まえ、行政の過ちや課題を検証し、今後の施策の在り方を探るのが狙い。委員は有馬朗人元文相を座長とする計9人(途中で1人辞任)。

■水俣病懇主要な提言
 (1)行政官に、命を守る視点の優先を義務付ける「行政倫理」を作る。「乾いた3人称の視点」ではなく「潤いのある2・5人称の視点」で対処する。
 (2)各省庁に「被害者・家族支援担当部局」を設ける。
 (3)公害、薬害、食品・産業被害者らを支える「被害者支援総合基本計画」(仮称)の策定。
 (4)公害、薬害などの原因究明、安全勧告の権限をもつ「いのちの安全調査委員会」(仮称)の常設。
 (5)すべての水俣病被害者に対する公正・公平な対応。そのまま維持するにせよ「認定基準」では救済しきれない被害者をもれなく、適切に救済・補償できる恒久的な枠組みを早急に打ち出す。
 (6)国と県は連携し、早急に認定審査再開の方策を立てる。
 (7)国は水俣地域を「福祉先進モデル地域」(仮称)に指定。胎児性患者の福祉対策に格別の配慮をする。
 (8)水俣地域の「もやい直し」を積極支援。
 (9)国は水俣地域を「環境モデル都市」(仮称)に指定する。
 (10)両モデルを一本化して「環境・福祉先進モデル地域」とする。
 (11)水俣病被害の全貌(ぜんぼう)を明らかにする総合的な調査研究の推進。
 (12)「水俣病・環境科学センター」(仮称)など、首都圏にも水俣病研究、情報発信拠点を設置する。
=2006/09/02付 西日本新聞朝刊=
(西日本新聞) - 9月2日10時7分更新

環境省が水俣病担当室 熊本県、水俣市も職員派遣
 小池百合子環境相は1日午前の閣議後記者会見で、水俣病の被害発生地域の再生と地域福祉の拡充に取り組むため今秋、環境省内に部署「水俣病発生地域環境福祉推進室」(仮称)を新設する方針を表明した。新部署には、地元の熊本県と水俣市も職員を派遣、国と関係自治体が連携して対策の拡大を図る。
 新部署が担当する業務は(1)水俣病発生地域のもやい直し(再生・融和)(2)被害者医療と地域福祉の連携−に関する施策の展開。水俣病対策などを担当している同省の環境保健部内に設置する。
 発足の具体的な時期や陣容などは調整中。当面、職員を派遣する自治体は熊本県と水俣市にとどまる見通し。鹿児島県や同県出水市、新潟県など他の被害発生地域は、職員派遣はしないものの、政策の検討や実施の段階で同推進室と連携していく方向という。
 小池環境相はこの日、国、県、市と共同の新組織を新設する狙いについて「それぞれの連携で大きな力が出てくるのではないか。地域における血の通った対策へ連携したい」などと述べた。
 被害発生地域の再生・融和は、熊本県、水俣市や被害者団体などが要望していた取り組み。新部署の業務は、患者認定基準などをめぐり混乱している救済策の問題とは切り離す方針で、環境省は「救済策は与党プロジェクトチームの議論も参考に別に検討したい」(幹部)と話している。
=2006/09/01付 西日本新聞夕刊=
(西日本新聞) - 9月1日17時6分更新
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