2009/7/29

『早春』の超絶技巧  映画

ファックスを取り、郵送し、文庫本用のゲラを直し、宅急便で発送し、読まねばならない戯曲を読み、新着のシノプシスを読み……とやっていたらもう夜更けだ。見たい映画がやっているのはわかっていてもまったく見ることができない。仕方がないので夜更けにDVD。再び小津。先週も同じような夜があってそのときはルビッチ『天使』で飢えを満たしたが、昨夜は『早春』。池部良が好きな私はこの映画を偏愛してきたが、今回見直して池部とその周辺にはじゅうぶん説得力があるものの、岸恵子の造型がもうひとつうまくいっていないのではないか、とも感じられた。まあもっとも女の来歴を語るは野暮というものという見方もあり、そこはいいとして、ややヒステリックに過ぎないか。すぐ傍にいる高橋貞二(言うまでもなく、名演!)とまでは言わないが、もっと鷹揚に謎めいた金魚というのもありではないか、と思えた。また、このころすでに「脱サラ」という事態があったのか、と驚かされる山村聡のバーのマスターが絶妙だった。ともあれ『早春』は、厚田雄春のモノクローム照明の最高峰でもあるけれど、同時に劇作上最も技巧を凝らした一本とも思われ、撮影・照明技師およびシナリオライターの卵はみな本作の成り立ちを徹底研究してみるといい。
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