2010/5/25

美しき五月のこと〜その1  ツアー

五月にほとんど日記を書かなかった(書けなかった)のはツイッターのせいばかりではなく、まとまった形で何かを書く時間がほとんど持てないくらい忙しかったせいだ。連載してきた長篇のまとめと、そうは名乗っていなかったが本人の中ではそのつもりだった短篇連作の最終話のまとめが同時にあったし、シナリオの打合せ、映像作品の編集、鼎談の打合せ、と続いた挙句、カンヌ行きとなった。いやはや、かなりハードなスケジュールだった。どうせ呑んでる時間はあったくせに、とお思いでしょうが、呑むことも決して仕事と無縁ではなく……。
この間に起こったことで特筆すべきことを時系列順に書いておくと、まず3日。ちょっと手術を受けた梅本さんの快気祝いを中目黒で行った。久しぶりに樋口さんに会った。
4日はシナリオ直しのため中野の脚本家先生宅へ。5日は映像作品の音響打合せのために朝霞台の録音技師宅へ。7日はまたべつのシナリオの打合せ。
9日は友人である俳優・松本勝が出演するRISU PRODUCE公演「やすしくんへ」を観に下北沢へ。シネマ下北沢がいつのまにか劇場になっていた。劇の後半、ついにやすしくんに刑の執行が言い渡されるとき、突然「1900年」が鳴りはじめ、ほぼ反射的に涙が溢れてしまい、そこから最後まで涙腺は緩みっぱなしだった。感動を鎮めるために独り三軒茶屋まで歩いた。
11日はペドロと会った。途中で記憶をなくし、二日後にそこでひどいことをして友人やその連れの方、そしてお店の方に大変な失礼を働いてしまった、と知った。慌てて謝罪のメールやら挨拶回りやら。空白の12日にはすでに何食わぬ顔で鼎談の打合せに渋谷に出かけ、帰りに下北沢で山本政志監督と出くわしたりしているのだが。14日はまもなく発売の長篇『ストレンジ・フェイス』の装丁打合せ。15日は日本映画プロフェッショナル大賞授賞式に出席すべく、池袋・新文芸座へ。若松孝二監督と久しぶりにお会いし、夜更けのburaまで同行し、自主配給についての力強く貴重なアドバイスを受けた。

そうして16日からカンヌだ。行きの便で、この間ほとんど中断していた阿部和重氏の『ピストルズ』を読み終えた。大傑作『シンセミア』のあとをどう展開するか、がこの文豪の壁だったにちがいないが、頁をめくるたびに、題名どおり花をそっと置くようなはかなさとともに氏がその壁を乗り越える様を刻々と味わった。しばらく同時代の小説を読むのはよそう、と思った。飛行機のなかで映画を見ないつもりでいたが、小屋で見逃した『シャッター・アイランド』と『シャーロック・ホームズ』をやっていたので、吹き替え版だが見た。『シャッター〜』は『ディパーテッド』で完全に見放したスコシージではあるが、これはなかなかのものだと思われた。してやられた感もあるが、後半で全員のきまずい諦念を湛えた顔が続くのが印象的。なにより、ナチス批判がいつのまにか赤狩りへとすり替わっていく行程がスリリング。もちろん『リリス』や『ショック集団』が意識されているはずだが、それを気負うことなく丁寧に柔らかく仕上げている。『救命士』以来の力作であり、スコシージ最高傑作といっても過言ではない。『シャーロック〜』はホームズとワトソンのキャスティングとキャラクターを決定した製作者ジョエル・シルバーの勝利。これで面白くなかったらどうするんだ、という話だから、あとはガイ・リッチーでも誰でも大丈夫、といった寸法。内容はほとんど記憶にないが、記憶になくて全然大丈夫。その後さらに見た『笑う警官』の、へんに記憶に残ってしまうなんともしれない八〇年代感に較べたらずっとありがたい。
さて、その後カンヌに到着するわけだが……ここから先はまた今度。長くなりすぎるのもなんなので、日を改めてしっかり書く。
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