◆ボードゲームの索引・話題はこちら→ボードゲーム総合案内
 ◆伊集院光深夜の馬鹿力Podcast版一覧はこちら→深夜の馬鹿力Podcastメモ
 ◆最新記事は左側の「近事」、最新コメントは「諫言」を参照ください

2009/1/22

勇者は斡旋しておりません  趣味

「英雄の実像」という古今東西ありふれているとも言えるテーマ。膨大な、心底膨大な手間とコスト。余りにも圧倒的な映像。壮大かつ軽快な楽曲。それらをまとめてあの仕上がりとは。凄いものを観た。

何の話かというと、朝から新宿に出かけてテアトルタイムズスクエアにて『アラビアのロレンス・完全版』ニュープリントヴァージョンを観てきたわけだ。私個人にとって、世の中は別に観なくてもいい映画とDVDとかで観ればいい映画とでほとんど占められているのだが、どうしても劇場で観なければならない映画というものも若干数存在する。『アラビアのロレンス』はおそらくその希少な作品のひとつのはずで、今回の劇場公開を逃すと一生観られないかもしれないからには(ちなみに「4時間の歴史映画を観に行きたいんだけど一緒に行く?」とやや恣意的に相方に訊いたところ「別にいい」との返答だったので晴れて平日の朝から独り観賞となった)。

新宿高島屋の10時開店と同時に12階に上がり、一番乗りで劇場に入った。観客は100人前後くらいだったろうか、平日の朝だからか年配の方がほとんどだった。スクリーンがでかい。説明によると横幅16m、都内でも随一の大きさだという。映画は途中5分のインターミッションを挟んでほぼ4時間あり、外に出たのは2時半。途中でだれることもなく、むしろ4時間じゃまだ短いと感じたほどだった。

ロレンスについてご存知ない方はWilipediaを参照あれ(映画のページにはストーリー解説があるので閲覧注意)。

★↓ここからネタバレ注意↓★

アラビアの砂漠をラクダで行くシーン、地平線の向こうからアリが近づいてくるシーン、撮影用に造られたアカバの町を攻撃するシーン、砂漠の中に船が現れるシーンなどを観られただけでも大スクリーンの劇場に来た甲斐は充分にあった。これだけは自宅の20インチテレビでは決して味わえない。『ロード・オブ・ザ・リング』の風景描写も凄かったけれど、CGを使えない40年以上前の映画であれば感動もひとしおだ。ストーリー展開にもまったく無駄がなく、4時間があっという間に過ぎてしまう。それでいてアリの登場シーンやトルコの将軍がロレンスを品定めするシーンなどではじっくりとカメラを回して観客の緊迫を高める。緩急が巧い。

この映画はほとんど英雄譚ではなかった。デヴィッド・リーン監督が描きピーター・オトゥールが演じたロレンスは、丈の合わない軍服を着てイギリス軍にいるときには周囲から浮いているオカマじみた気持ちの悪い人物であり、アラブ人の装束をまとって砂漠にいるときには一見すると砂漠の民を心酔させる英雄に見えるが自信過剰でお調子乗りで時に殺戮に酔う扇動者にも見える。戦争映画でもあるはずなのに、具体的な戦闘が描かれるのはトルコの列車を襲撃する場面とトルコの敗走兵を虐殺する場面のみで、ロレンスを英雄化したアカバ攻略戦やダマスカス占領の過程についてはかなり(後者に至っては完全に)端折られている。

アリを始めとするアラブの民や一部のイギリス人将校がロレンスという英雄像を崇拝する一方で、アラブの王子は為政者として、イギリスの将軍は軍事指導者として、イギリスの外交官は政治家として、アメリカの新聞記者はマスメディアとしての顔を保ち、「英雄ロレンス」に引っ張られることなく自分の仕事をしている。しかし、「英雄」という職業などこの世のどこにもありはしない。それは、イギリスでもアラブでも居場所を得られなかったロレンスが無謀な勇気を代償としてたまたま与えられた仮初めの衣装に過ぎない。だからこそ、冒頭に描かれるロレンスの事故死への道筋が映画の文脈のなかで腑に落ちてくるのだ。

観賞後、あれこれと思い巡らせながら本当に戦慄したのは、これだけの手間と金をかけた超大作でありながら、当時無名の俳優を抜擢してお世辞にも「英雄」とは呼べない英雄像を描ききったデヴィッド・リーンの心胆だ。『戦場にかける橋』もそうだが、この監督が描く「この世の無常」や「アイデンティティの欠如」は現代においてもまったく色褪せていない。凡百の薄っぺらい英雄譚の作者や、俳優のネームバリューに頼ったクソ映画を垂れ流す映画人や、やたらと芸能人を声優に当てたがるプロデューサーはこの映画を10回くらい観たほうがいいんじゃないですかね。

★↑ここまでネタバレ注意↑★

私の映画鑑賞経験(数少ないが)のなかで3本の指に入るくらい素晴らしい体験だった。公開は2月13日までなので、東京近郊にお住まいで少しでも興味を抱いた方にはぜひ実際に観に行くことをお勧めしたい。


終劇間際には空腹で腹が鳴っていたため劇場を出てすぐ食事をし、高島屋9FのHABAコーナーやハンズや紀伊国屋を物色してから帰宅した。

★今日の残念賞★
クリックすると元のサイズで表示します
【ハンズのゲーム売場にて】
0



2009/1/26  17:03

投稿者:hirocean

客席の傾斜がきつくてお年寄りには危ない感じでしたが、個人的には前の人が一切気にならなくてよいと思いました。それはそれとして、今年はもっといろいろ映画を観に行きたいと思います。

2009/1/24  9:07

投稿者:海長とオビ湾

固さと背もたれの角度がちょっと独特だと思います。でも音響は良いですよね。そういう映画が選ばれて上映されてると思います。

2009/1/24  3:04

投稿者:hirocean

あまりあちこちの映画館に行ったことないんですが、テアトルの椅子は硬めなんですか?確かに最後はちょっと。

2009/1/24  0:47

投稿者:海長とオビ湾

おお!私も観にいきたいと思ってるんですよえねぇ!
しかしテアトルで長時間・・・・。
おしり痛かったでしょう^^

コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL





AutoPage最新お知らせ