やりたいことはわからんでもないが下らない映画だ
2005年のアメリカ映画で、主演はニコール・キッドマンとウィル・フェレル。言わずと知れた大ヒットテレビシリーズのリメイクですが、今回は魔女が人妻になる映画ではなくて、「奥さまは魔女」の番組に抜擢した新人女優が実は魔女だったという話です。
ストーリーです。イザベル(キッドマン)は魔女の世界から人間界にやってきたての魔女で、魔法に頼らない恋愛を夢見ています。一方、ジャック(フェレル)はもともと映画俳優ですが、大コケ映画のせいでテレビドラマに都落ちしています。彼がオファーされた仕事は「奥さまは魔女」のリメイク(でダーリンの役)。しかし相手役に有名女優を配されてサポートに回るより、サマンサには新人女優を起用してほしいと注文をつけ、イザベルをスカウトしました・・・
なんだかね、お話のフォーカスが見えないんです。もともとこのお話は人間と魔女の間でのカルチャーギャップを扱ったものであるわけで、サマンサ宅にやってくる魔女が自分たちの価値観に基づいて魔法を使ってしまうところを、そのままにしておけば人間界は大変なことになると予見したサマンサが阻止に走り、でもその思惑はなんだかおかしな方向へそれていって、でも最終的にうまく収まる、というパターンの繰り返しの筈。でも、この映画におけるテンションとしては、イザベルを魔女だと知らず恋に落ちたジャックが、彼女を魔女だと知って拒絶する、というものであり、テーマが乖離しています。そりゃ、恋人が魔女だとわかればうろたえるのは当たり前にせよ、わかった時の彼の行動パターンに前フリがないので、唐突感しかありません。さらに、初登場時のジャックはあれほど自己中心的な描かれ方をしていなかった筈なのに、どうして性格が変わってしまったんでしょうか。
私の古い頭からすれば、こういう話の類型では終盤20分を引っ張るのは主役ふたりのうち「より普通じゃない方」、この場合で言えばイザベルだと思うのです。彼女がジャックを拒絶したため、彼女の親戚がジャックに対して取り返しがつかないような魔法をかけてしまい、しかしその魔法が破滅をもたらす前に彼に対する気持ちを取り戻したイザベルが回避に走る、という展開で丸く収まると思うのですが、そういうのじゃ受けないんでしょうね。
なお、本筋とは関係ないところで気になったことなどみっつ。
1)アメリカ独特の、笑い声などが入るテレビショー、観客に生の声を出させていたんですね。てっきり録音を使ったSEだと思っていました。
2)テレビセットの中で踊るシーン、Xanaduみたいだと思いました。
3)英語力のない私は、字幕と台詞のギャップに気付くことはあまりないのですが、この映画で「私はC型肝炎よ」という台詞がありました。これに対し字幕は「私は酒豪よ」。まあ、病気をネタにしちゃいけないのは理解できるにせよ、それ、翻訳になってないんじゃないかと。
評価は☆☆*です。面白くなかったけれど、腹は立たなかったということで。

0