「Discovery by Electric Light Orchestra (Blu-Spec CD)」
Move/ELOに関わる話題
いつの間にかアメリカスギが消えていた

先週発売になった、Blu-Spec CDでのリリースです。マスターは2001年時点のものを使っている筈なので、マスターレベルでの音質の改善が見込めるわけではありませんが、Sony Music Entertainmentが謳うところのハイテクによって高音質を実現したとのことです。ただ、ここでは音質の違いについてはあまり云々していませんので悪しからず。
なお、昨年発売された紙ジャケシリーズでは1890円でしたが、今回の製品は2500円となっています。
Buy From Amazon:Blu-spec CD ディスカバリー
Buy From HMV:Discovery

(CD)
なお、こちらは1月発売のOut Of The Blue。
Buy From Amazon:Blu-spec CD アウト・オブ・ザ・ブルー
Buy From HMV:Out Of The Blue

(CD)
音は現在聴いている最中なのですが、大概こういう製品を聴く時にはボリュームを上げて聴いてしまうので、どうしても「これまで聞こえなかった音が聴こえた!」とぬか喜びしてしまいがちです。ですから音については、「いいのかな、いいような気がするな。なんだかキレがよくなっているような気がするんだが、自信を持って言うのもよくないな」くらいの感想に留めておきます。もともと私は耳がいい人間じゃありませんから、あまり私の感想をあてにしないで下さい。
でもって、例の如くパッケージングのお話。基本的に2001年のパッケージングをそのまま踏襲しており、クリアトレイの下にはMusiclandでの写真(Jeff、Bev、RichardとMack。Kellyがいないのはそういうものなのか、なにか意図があるのか)で変わっておらず、ピラーのところにはELECTRIC LIGHT ORCHESTRA COLLECTIONと記載されています。オビも紙ジャケではなく、SRCSに準拠していくらか足し引きをしてある感じです。ディスクのデザインもほとんど同じに見えます。
ブックレットも2001年準拠であり、あのあまり評判のよくない折り畳み式のものです。記載内容もほとんどかわっていなかったようです。しかし、日本語ブックレットは逆に紙ジャケ準拠となっています。ライナーは村上さんではなくて岩本編集長。どっちにしても再録なので、あまり珍しさはありません。そうやって今回日本語解説などをぱらぱら見ていて、先日の紙ジャケで実は些細だが気になる変更点があったことに今さら気付きました。
というのも、Discoveryの訳詞は、1979年の発売時にはいくつかの誤訳を含んでいました。恐らくアーティスト側からの正式な歌詞が提供されない間に訳詞を用意しなければいけなかったのだと思われ、訳者の山本沙由理氏は聞き取りで和訳を作ったようです。On The Runでは英詞に書かれていない歌詞まで翻訳されています。この作業、かなりたくさんの人の目に触れることが予想される製品で、プレッシャーもかかったでしょうが、いくつかミスも犯してしまっておられます。そんなえらそうなことを言えるのも、歌詞と照らし合わすことができるからなんですが。
その中での最たるものは、Need Her Loveで、"I'm like someone who's left out in the rain"というところ、「彼女のマイクは雨の中たった一人取り残されてしまうことになるんだ」と訳してしまっておられます。likeをMikeと聴いてしまわれたんでしょうね。
Discoveryはこれまで何度か再発されていますが、最初にCDになった35DP 24ではライナーも訳詞もそのままの再録になっていて、マイクはそのまま残っています。しかし、さすがにこれは誰かが気にしたと見えて、2001年のSRCS9848では「僕は雨の中たった一人取り残されてしまうことになるんだ」と訂正されています。On The Runはそのまま。そして、訳者の名前は消されてしまっています。なお、私は1990年代の再発時には購入していないので、この頃にどんな変更になったのかはよく知りません。
ところが、紙ジャケでは歌詞は左に、訳詞は右にというように対比するようなレイアウトが取られ、On The Runでは「歌詞にないところまで訳出してあるのはおかしい」と誰かが思ったのか、余分な訳詞は消されてしまったのでした。それともう一点。2001年の訳詞ではそのまま残っていた和訳ですが、Confusionで"Dark is the you wander"という部分、もともと「暗さとは、君の頭上にあるアメリカスギのことさ」と訳されていて、このアメリカスギというのがどこから出てきた単語なのかが私にはよくわからないのですが、ここが紙ジャケでは「暗いのは、君がさまよっている道さ」と変更されていました。ここについても、誰かがおかしいから直そうと言ってくれたんでしょうね。ただ、やはり訳者の名前はクレジットされていません。和訳も、1979年の訳を残したままで部分部分を変更してあるだけというハイブリッドになっています。(なお、誤解のないように書いておくと、Jeffのコメンタリーを訳しておられる方はKyoko Minesimaという人です)

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