カナダは移民の受け入れ規制がゆるく、合法的にも”難民”としても、いろんな国の人が集まっています。まずはその国の言葉を話せるようになる必要があるので、場所や期間や教育方法、金額が、対象者によって異なるタイプの語学教室が開かれていました。
モントリオールに住んでいた頃通っていたフランス語教室には、これからの一生、カナダに移り住む覚悟でやって来た人が多かったので、早くフランス語をマスターして仕事に就きたい人がほとんどで、中には、国に帰ったら殺されるとか、逮捕されるとか、そんなせっぱ詰まった人も何人かいました。
“逮捕される”とか“殺される”というと、政情の不安定な国から来たという印象を受けるし、そういう国から来た人もいましたが、その中に、アメリカ人男性が一人いました。理由は、兵役が嫌で逃げてきた、ということでした。彼は、そのために、モントリオールから車を走らせても5〜6時間で入国できる、地続きのアメリカに帰れないのでした。
ジェンキンスさんが無事お母さんと再会できたことに、アメリカでは賛否両論だそうですが、それは、ジェンキンスさん以外の、こういう母国に帰りたくても帰れない人たちには、帰国が許されてないことを考えると頷ける面もあります。
ここですべての兵役拒否のアメリカ人に帰国を許すと、軍の運営が成り立たなくなってしまう、かといって、帰国を許さずに頑なに規律を守ろうとすると、その人たちの家族や友人からしだいに、軍の存在に疑問を持ち始めることになるかも知れません。
愛国心を持って、愛する人のいる国のために、自ら志願して入隊するというアメリカ人もいるようですが、一方で、どうしても戦うのは嫌だと思う人もいて当然だと考えられるべきだと思います。
今回のニュースを見て、あのアメリカ人男性は、今もモントリオールにいるのかしら、と、ふと思い出しました。

0