水族館は裏もおもしろいんです。
展示水槽の上にはたいてい、昔の裸電球のようなシンプルな照明がぶら下がっていて、床は、お客さんがご覧になる場所より、一段高くなってます(水槽を上からのぞき込めるくらい)。
その方が、魚が見やすいし、餌やりや掃除もしやすいからなんでしょう。
水槽によっては、展示に必要な波を作る装置なんかもついてます。
裏には、表からは見えない水槽もあります。
まだ来たばかりの展示を控えた魚たち、ちょっと具合の悪い、特別な世話の必要な動物、予備の魚、展示には不向きな動物など。
ある時、本来コールドマリン(寒帯生物の展示)にはいない、甲イカの赤ちゃん集団が持ち込まれました。
赤ちゃんでも、ちゃんと格好は一人前の甲イカ、神経質で環境の変化にさっと体色が変わる気性もたぶん、もう大人。
でも小さいんです。
足をのばしても1〜2cmくらい!
その甲イカたちの餌はブラインシュリプというミジンコで、それを水槽(といっても、小さな箱みたいな)に流すと、甲イカの赤ちゃんたちは揃って、きゃあ〜っ!と一目散に逃げ出し、固まってしまいます。
しばらくすると、やっと勇気のある1匹が、集団避難所から出てきて、そして、すばやく足をのばし、ブラインシュリンプ獲得!
そうなると、今度は他の甲イカたちが、「あたしにちょうだい、僕にちょうだい」と、よってたかってその甲イカの餌をとろうとするんですが、必死の思いで捕った餌を、そう簡単に他の子に渡すわけがありません。
ぷっ!とスミを吐いて逃げます。
こんな小さな小さな甲イカから出るスミですもの、ほんの5mmくらいの固まり。
かわいいの〜!
水槽に突然やってきた異邦人たちが、実はおいしい餌だったと分かってからは、あちこちで、こういうちいさな戦いが繰り広げられます。
別の一角には、1匹のロブスターがいました。
展示水槽にもロブスターはいるんですが、これは漁師さんから持ち込まれた、片方の腕から枝腕が2度分かれているロブスターです。
ちょうど木の枝が分かれるように、一つのメインの腕から、別の腕が生え、そこからまた別の腕が生えています。
持ち込まれた当初、海洋汚染と関係があるのかと話題になりましたが、明らかではありません。
ロブスターは脱皮して大きくなるんですが、脱皮、大変だったろうなあ。
予備のヒトデやウニやカブトガニたちは、お客さんに直接触っていただける”潮だまりの生物”の展示で働いた疲れを、ここでいやしています。
”潮だまり”は、子供たちはそのつもりでなくても、ヒトデの足を引っ張ったり、なまこをぎゅっとつかんだり、私たちとは逆に水の中でしか息ができないのに長い間水から出されたり、動物たちにとっては結構ハードな仕事ですから疲労もたまるというものです。
新着の動物は、病気を持ち込んでないか、しばらく様子見。
なれるまでは餌もやらずにそっとして置いて、水槽にふれた場合は、長靴や手を消毒しないと、他の水槽はさわれません。
いろんな理由で裏にいる動物たちの数は、おそらく展示されている動物と同じくらいです。
もしバックヤードツアーがあったら、是非、ご参加くださいませ!

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