2009/9/3
「ニュルの思ひ出 最終回」
ニュル24hレース 2009

みなさんご存じのとおり、オレのニュル挑戦は全て1回ポッキリ。
何とか続いてはいますが、それぞれのオファーは完全に独立したもので、オレには次のレースってのは基本的にないんですよ。
だからそのレースで結果を出さなけりゃそこでジ・エンド。タイムを出さなければいけない局面、順位を上げなきゃいけない局面、反対にキープすることが大切な局面、それぞれで必要なことをできて、はじめて次のレースの話が出ます。
そうするとさ、背筋がゾクッとする瞬間があるんですよ。
果たして自分がチームの期待に応えているか、もっとわかりやすく言えば、ケチがつかないドライビングをできているのか、不安になるときが。
そこで思い出すのがMr.Gのお言葉です。
「富士スピードウエイの全長6キロ(当時)を1メートルきざみにしたとしよう。どの部分を取り出してもタイヤ性能を最大限に発揮させて走る自信がある。だから、誰が来ようと同タイムは出てもそれ以上は絶対にない。」
『ドライビングメカニズム』(黒沢元治著 勁草書房)より抜粋
千変万化していくニュルブルクリンクでこの言葉はとても大きな意味をもちます。
誰が何秒出したといってもコンディションが違えばタイムは違う。コーション区間があれば10秒や20秒はすぐに変わる。そんな状況を無視してタイムだけを追いかければ、レース後半にトラブルが必ず出るでしょう。
その前にそのスティントを無事に終えられるかどうかが問題だな。それではニュルでは通用しないのですよ。
ドライバーがやらなきゃいけないのは、自分が置かれた状況でいかにクルマの限界を使うか。いや使い続けるか。タイムなんか知ったこっちゃねえですよ。限界で走ってりゃ勝手に出るんだから。それでダメならオレのせいだから、不安になってもしょーがないしね。

オレがニュルのチームから信頼を得ているのは、速くて壊さないから。この一点に尽きます。壊すドライバーっていうのはどんなタイムでも「遅いドライバー」だからね。
やる気や努力はビタ一文関係ありません。いいヤツだからでもありません。性格が良くても遅くて壊すヤツにゃ用事はありませんよ。がんばります? がんばらないでいいからタイム出して来い。
でもお互いさまだね。オレだって雰囲気良くて遅いクルマしか作れないレーシングチームには用事ねえし。
あの熱いレースの裏には、こんなヒンヤリしたものがあったりします。
そんなオトコ達を熱くするには、そりゃ熱くなるにふさわしい実力を見せるしかありませんよ。速さに最大の価値を見出すオトコ達が遅いヤツに熱くなるわけないんだから。
ここまでわかっていながら、次のオファーがフレパーでもマトールでもなくまた新チームなのは、オレがドMだからでしょうか(笑)。
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