「interest only loan ・ インタレスト オンリー ローン の暴発?」
経済
今回の金融危機と世界的な株安。その大きな原因が
サブプライムローン(subprime loan)にあったことは有名な話。
信用度の低い人たちに向けても、過剰に住宅ローンを融資してしまったわけですねえ。
ところが、さらに、、、、。
『SAPIO』[2008.10.08]によると、それを上回るトンデモないローンの種類が。その名も、
interest only loan ・ インタレスト オンリー ローン
“サブプライム危機「第4幕」
インタレスト・オンリー・ローンの一触即発=h
by 吉崎達彦
最初さあ、なんのこっちゃか分からなかったわけよ。名前を聞いても。interest(利子)だけのローン? どういう意味じゃい?
ところが、内容を読んでみて、驚愕。
文字通りです。
利子だけ支払えばいい ローン なのです!
いや、(住宅)ローンってものは、普通に、
「元利均等返済」 か
「元金均等返済」
の区別があって、元金を徐々に返していくもんだと思っていたら。
米国で2005年以来、販売されてきた、この恐ろしげなローン。なんと、
元金を返さなくても良い!
借入期間中、利子だけを支払っていればよい!
というものすごい存在。
ええ、当たり前ですけれども解説します。元金は、返済期限が来たときに、一括で返します。いくらなんでも、元金ガメちゃって良いわけじゃない。
しかし、サブプライム以上に危なげな顧客に販売した、
>「米国版ゆとりローン」 いや、 「超ゆとり返済」。
なにしろさあ。ローンってものは、「月賦」「割賦販売」って意味があるわけで。住宅ローンなら、1度に払えない金額を何十年にも分けて支払う、ってのが正常な意味づけでしょう?
しかしこのinterest only loan、最終的に一括で支払えばよい。
このあたり、気の利く皆さんなら当然、お気づきでしょう。
そう!住宅価格が上昇する(そうでなくても、あまり下落しない)ことを前提としたローンなんですね。
例えば、数値例を(まーくが勝手に)作ってみると。
2000万円の一戸建てを30年ローンで買います。
30年間は、2000万円に対する利子だけを支払います。
で、30年間貯蓄に励み、2000万円を一括で支払えば、、、。
こんな危なげローンの対象層で、まさかそんな消費者がいるわけ無い。例えば通勤に便利な土地に家を買って、30年間、ゆとりを持って利子だけ支払い。30年後(仕事をretire時)に、売り抜けて「→隠居所」に移る「出口戦略」だと思われます。
30年後、この土地・建物が、2000万円以上で売れれば、万々歳。
しかし考えてもみて下さい。30年後に建物の価値がどれだけ残っていますか?
ニューヨークなどの大都市部を除けば、米国の地価はたかが知れている。つまり不動産価値とは主に建物の価格。それが30年後に、維持されるはずがない。。
でも、「維持されるはずだ」「ことによると上昇してるかも?」という前提で作られたのが、このトンデモローン。
当然、焦げ付きが多数発生するものと思われます。
ここで一つ納得。これ、何んかに似てるね?そうか、株式市場における、
株の信用買い
にそっくりだ。
今の時点でお金も無いのに、(形の上ではお金を借りて)株式を買う。で、期日が来てその株価が上昇していたら、売却してお金は返済。差額は利益に。おわかりの通り、信用買いとは、株価が上昇すると確信がある株に対してやることです。もし、信用買いした株の値段が下がってしまったら、大損することに。
不動産、それも家(建物)に対して、お金借りて将来の値上がりを見越して信用買いするなんて、もうバカかアホか、自殺行為だと。
こういう、トンデモないローンで、破綻する個人が続出するものと思われます。
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と、思ったんだけど、そうならない事情があった!
そうです、日本の住宅ローンと違って、米国のローンは、ほとんどが、
nonrecourse loan ・ ノンリコース ローン (非遡及型融資)
だったのです。それはどんなものかと言うと、上記の数値例で例えれば。
30年後、その不動産に1000万円の価値しか残らなかった、とします。
(たしか日本の税法上、木造建物は定額法で4.5%×20年まで減価償却できます。ならば、↑の1000万円なんて、大甘の想定値。)
“おお、借金2000万、耳をそろえて返せ”
“申し訳ありません、この不動産には1000万でしか売れないんです”
“だったら、残り1000万、身体で払ってもらうぞ!”
となるのが、現代日本で主流のrecourse loan。破綻個人が続出します。
ところが、米国だとnonrecouse loanなので。
“この担保不動産は、銀行がもらっていくぜ”
“どうぞお持ち下さい。でもこれで、借金はチャラですね”
そう、借りていた個人は、担保を引き渡せばそれだけで借金から解放されます。これは、借り手にとっては当初の計画通り、再出発となります。個人は破綻せず、めでたしめでたし。
でもあれぇ?この場合、損失の1000万円は誰がかぶってるの?
そうです、もちろん、
無謀な融資をした銀行が、損失を蒙るのです。
interest only (トンデモ) loan。これが焦げ付くのは確実です。そしてそれは、、、
直接、directに、金融機関を襲うのです!
うーん、こいつの暴発は、ちょっと警戒かもしれないね。