科学バラエティー番組としては、比較的良心的と、まーくも以前
F[2007.2(Feb.).19]に評価した、
日本TV系
『所さんの目がテン』
それが今回、[2008.06(Jun.).01]の放送は、レスリングのトレーニングを科学する!
レスリングといってもプロレスじゃないです、アマチュアレスリング。北京五輪へ向けてトレに励む、吉田沙保里.選手が出演。番組内容としては、埼玉栄高校に取材。
「腰高」の白人選手と違って、東アジア人の体型の方がタックルで倒されにくい、といった合理的な解説が続く。このあたりは、
『黒人アスリートはなぜ強いのか? その身体の秘密と苦闘の歴史に迫る』
とも共通する内容。
しかし、今回面白かったのは、レスリングの筋トレの仕方。
バーベルやマシーンを使ったウェイトトレーニングが全盛の今日。
ところが、「レスリング部」に限ってはなぜか、
昔ながらの、
人の体重を重りにする
「人」ったってもちろん、自体重じゃないよ、練習パートナーなりの体重をウェイトにする練習が盛ん。背負って、持ち上げて、だき抱えて、何かの運動をする、というトレの手法。
しかし、これには合理的な根拠(目的)があったのです!
目立たないながらアマチュアレスリングで極めて重要になるもの、それは、
握力
だったのです!
例えば番組内でデモンストレート(demonstrate)。(注:こういうのは、「実験」とは呼べないだろう。)
「柔道の道着を着た」 吉田選手 と
「レスリングのコスチュームを着た」 普通の選手 で
対戦。なんと、吉田沙保里.選手が格下相手に完敗。
∵なぜならば、
相手の柔道着をつかみ合うのが、柔道の組み手になる。
ところが、レスリングのコスチューム自体をつかむことは、まず無理。
腕なり脚なり腰なり、相手の身体の一部をつかんで、投げるなり持ち上げるなりで勝負が決まる。
柔道着ならつかみやすいが、相手の身体の一部をつかむのは、はるかに困難。 → 言葉を変えれば、それだけ強固な握力が要求される。
つーまーりー。他の格闘技系の種目と比べても、レスリングの場合、握力が要求される度合が激しい。
特に相手の身体の一部をつかんで、持ち上げる、引き上げる動作が必須。
ならば、普段の筋トレにあたっても、それに応じた手法を使うのが、合理的な方法となるわけでした。
なるほど確かに、バーベル・ダンベルにしろ、トレーニングマシーンのグリップ(取っ手)にしろ、
握りやすいようにできている
もんね。
あえて握りにくい、人の身体を持ち上げることで、握力を鍛え実践的な筋力をつけている。握力を補助するためのストラップを使う、なんて、レスリングでは論外もいいところ。
うーん、今回もまた、結構感心する番組作りでした。