2017/10/12  22:58

アルファベット表記  読書
筆者の私が中学生の頃、松本清張の『歪んだ複写』は、雑誌に連載されたらしい。文庫は昭和41年の発行。松本清張の小説は概ね昭和40年前後までの作品は、カッパノベルスの「点と線」「眼の壁」を初めとして全部読破した気がする。その「歪んだ複写」は先頃、新装版を購入して一日で読破した。50年前に読んだ記憶は、蘇る気がする。3件の殺人事件の真犯人は若い東大法学部出身の税務署長だった。三つ目の殺人はだいぶ捻り過ぎでエンターテエインメントだ。

この頃の小説の書き方・表記に当時から違和感があった。殺人事件の場所が東京の西側、山手地区なのは解るが、その表記にうんざりするのが「P税務署」「R税務署」「R新聞社」「R大病院」「A刑事」「B刑事」「××番地」の類。大衆文学の推理小説だから、その表記は重要ではないことが、こんなことで知れてしまうのにうんざりする。このアルファベット表記は、松本の初期の作品の弱点に思う。中卒の学歴しかない松本清張が、霞ヶ関官僚の“悪”を追及してもそれは大いに納得するが、脱税に加担する官僚が当時多かったにしても、これは連載小説の長さに拘ったからだろうと思った。

三島由紀夫の『絹と明察』は紡績会社の社長の成功と挫折を余すところなく書き込まれている。松本清張と三島由紀夫では、その文学性は大いに異なる。大手の出版社では、おおむね名だたる作家を網羅した文学全集を編んだが、例えば昭和後期に新潮社には『新潮日本文学アルバム』(四六判)がある。森鴎外から檀一雄まで36人の作家が居る。この中には松本清張は収録されてない。序に云えば石川啄木・斎藤茂吉・正岡子規・与謝野晶子・北原白秋・折口信夫など6人の歌人も含まれる。

中央公論社が文学全集(箱入)を編むとき(昭和38年)監修の三島由紀夫は川端康成と意見が対立して松本清張を文学者として絶対に認めなかった。社会派推理というジャンルを確立してベストセラー作家となったが、三島由紀夫とは完全に文学の性質・資質に相違があったというべき。

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