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2007/2/25

「No Way,No Place & My Home9「言葉」  ショートストーリー

あぁ 言葉とはちっとも 友達になれない
心の中 1度も 上手に話せたことがない
鈴木祥子「言葉」

部屋のドアを開けた。ケンイチは、ヘッドフォンをつけてギターを鳴らしてた。
「何?」「晩御飯」「腹減ってない」弟はそう言うとまた弾き出した。
ワタシは部屋の中を見回した。海外のパンクミュージシャンのポスターだらけの部屋。
「なんだよ?」「冷めない内に食えよ」溜息をつくとワタシはドアを閉めた。

ワタシとケンイチは同じ高校に通ってる。ワタシは3年、弟は2年。
弟は・・夏休みから・・イジメられるようになった。どんなイジメに合ったかは、
弟の名誉のため書きたくない。ともかく酷かった。
それから・・・ケンイチは・・学校に行かなくなった。
1日中フラフラ出歩いたり部屋に閉じこもってギター弾いたり。
お父さんは怒りお母さんはノイローゼ寸前。ウチの中、一気に暗くなった。

学校が終わると街に出てフラフラしてると怪しげな一角に迷い込んだ。
飲み屋やヘンな店がイッパイあるとこ。通り抜けようとしたら弟がいた。
ワタシは慌てて隠れた。ケンイチはお酒のケースを片付けてた。
いかついオヤジが出てきて怒鳴ってる。ケンイチは謝ってる。
そう言えば・・あのときもこうやって隠れてたっけ。

ワタシは思い出してた。去年の夏休みのことを。やたら暑い日だった。
河原でケンイチがイジメられてた。みんなで囲んで吊るし上げてた。
弟は泣いて謝ってた。ワタシはジッと隠れて見てた。
泣いて謝る弟がサイテーに見えた何であんな奴等に頭下げるんだよ。
やり返せばイイじゃん。カッコ悪いよ情けないよ。その後弟は登校拒否になった。

ケンイチが働いてる店はライブハウスだった。
しばらくしてケンイチが学校を辞めると言い出した。あの店で働くらしい。
お父さんもお母さんも怒り叫んでもう滅茶苦茶。でも弟の言い分が通った

ケンイチが退学届を出す前日部屋を訪ねた。
「あんたさホンキで学校やめるの?」「そうだけど」「働くのはイイよ。でも卒業
してから考えればイイだろ。思いつきで決めていいのかよ?」「うるせぇ。関係な
いだろ?」カチンと来た。「このまま逃げるのか?やられっぱなしでいいのか?
悔しくないのか?少しは意地見せろよ」「ヤだ」ケンイチの声は震えてた。
びっくりした。「何言っても通じないんだ。あいつ等には応えないんだ。」
「ムダなんだよ。仕方ないんだよ。あいつ等とはもう関わりあいたくないんだ」
どう言ってイイかわかんなかった。ケンイチにもケンイチをイジメた奴等にも腹が
立った。「サイテ−!弱虫!!」ワタシはそう言うとドアを閉めた。

翌日、ケンイチは一人で学校に挨拶に行ったらしい。あわてて学校に行った。
ケンイチは朝早く来て挨拶してさっさと帰ったらしい。教室にはよらずに。
最後まで逃げっ放しかよ。ガッカリした。授業も身に入らなかった。
フと窓の外見ると校庭に誰かいた。ケンイチだ!派手なカッコでエレキ持ってる。
みんなもケンイチに気付いて騒ぎ出した。ケンイチはエレキを鳴らし始めた。
メチャクチャ音がデカイ。学校中が窓を開けてケンイチに物を投げつけた。
ケンイチは無視してギターをひたすら激しくかき鳴らしてた。
ギターのネックをみんなに向けて何人かを指差して睨みつけた。
まるで告発するように・・罰を与えるように。
ギターを弾き終わると、ケンイチは誇らしげに拳を突き上げた。
ワタシに気づくとニヤリと笑った。そして校門を出て行った。

みんなは何事もなかった様に席に戻った。ワタシは急に笑い出した。
先生はワタシを怒ったけどワタシはおかしくてギャハハと笑ってた。
ケンイチ、ヒドイこと言ってゴメン、あんた弱虫なんかじゃないよ、
サイコ−だよ。あのコは逃げなかった。最後はガツンとかましてくれた。
カッコよかった。イカシてた。
その日ワタシは何だか楽しくて1日中ニヤニヤしてた。

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