既に今月の10日(4日後)には、国際会議の場で「野ダメ」こと野田総理はTPP交渉参加を表明すると報道されてますが、反対の声は(私が表のブログに記事を書いた去年に比べて)高まってきつつはあるとは言え国民の過半数には及ばず、まして未だに国民的議論は成熟しておらず、反対派は未だ烏合の衆というのが実態です。
今回のTPP交渉参加問題では、恐らく(谷垣)自民党は様子見であり「不信任案騒動=政局」にはならないでしょう。
TPPの問題に関しては、既に本ブログでは昨年12月に「
TPPに反対する諸党・諸兄に問う」という記事をUPして、これまでの出鱈目農政を批判して、本気で農業の再生を図る【展望】を掲げる事を抜きにしては、単なる「TPP反対」が国民の大多数の支持を取り付けていく困難を指摘して、私案ではありますが第一次産業に従事する人々への「ベーシック・インカム」を保証する事と、将来的には公共財である「土地私有制度」の見直しをする事にまで踏み込んで、労働人口の第一次産業への流入や、文化的水準の生活保障が得られる事によって生まれた余力によって、農林水産業の国際競争にも勝てる【産業育成】を図る事を提案していました。
しかし昨今の情勢では、未だ国民的な議論が熟さないままTPP「交渉」参加表明をするとの事であり、私は「交渉」に当たっては日本国内での第一次産業の「抜本的テコ入れ」を図る事を首相官邸にもメールしましたが、その気概やら該当する【産業育成策】は示されず、野田総理は更に国会で、医療の分野でも現在の日本では「国民皆保険制度」によって保障された平等に定額に定められた医療点数制度からは例外であった「自由(に値段が決められる)診療」の拡大を(非関税障壁として)迫られる事についても言外に否定はしませんでした。
このままでは「バスに乗り遅れるな」式に、農業でも医療でも将来への「展望」が無いままに、問答無用に「交渉」などロクにせず、米国式のグローバル戦略に従属してしまうのは、明白になりつつあると思います。
私の
【2011-11-03日付けの日記のコメント欄で、投稿者の方とも議論しましたが、このTPPに関して、特に問題となるのが、米国が今回のTPPの要(かなめ)としている
ISD条項である事の周知は、未だに為されていない事は明白でしょう。
(以下は、私の日記での討論からの一部転載になりますが、中間的な総括として、本ブログでも展開させて頂きます)
この
ISD条項とは「国家と投資家の間の紛争解決手続き」の事で、投資家が協定締結国の政策によって【損害】を被ったと告訴すれば、
その政策を実施した該当国の民衆の事情などお構い無しに、【国際投資家の損害の有無だけを論点】に、非公開で審理されて判決が下され、国家に損害を賠償する義務が課されるという、実質的に自国の自主的な政策決定すら、国際的投資の資本に逆らえずにしてしまい、独自の産業育成策も公的福祉も不可能にする恐れの大きい、
非常に重大な問題である事をまず強調します。
この
ISD条項について、TPP推進論者である【自称・経済学者】池田信夫が…「
世の中におかしな判決はいっぱいある。「ISDによる**の決定は気に入らないからISD条項はやめろ」というのは「ホリエモンの判決はおかしいから裁判所を廃止しろ」というのと同じ」…などという意味不明の【妄言】を吐いてますが、そんな批判は全く見当違いである事は、下記のリンク先の…
【投資家対国家の紛争解決 - Wikipedia】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%95%E8%B3%87%E5%AE%B6%E5%AF%BE%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E3%81%AE%E7%B4%9B%E4%BA%89%E8%A7%A3%E6%B1%BA
…の中の【投資家-国家間紛争解決と人権】の項を読んで頂ければ明白です。
**************(以下引用)****************
民主主義的な選挙により成立した政府が有する公衆衛生、環境問題及び人権に関連した改革や立法・政策方針を実施するための能力に投資家対国家条項が及ぼす影響について、多くの議論が巻き起こった。投資家の国家に対する請求(のおそれ)は、国内政府の公衆衛生や環境保護法案の通過に係る能力を顕著に抑制する可能性がある。そうであるにもかかわらず、これらは秘密裡に、公衆に対して責任を負わず、広い憲法的・国際的な人権規範というものを考慮に入れて行動する必要のないビジネス・ロイヤーによって行われている。
**************(以上引用)****************
この
ISD条項とは、米国とカナダとメキシコの自由貿易協定であるNAFTA(北米自由貿易協定)において導入され、先日の米韓FTAでも導入されたものです。
以下は(また引きになりますし著作権の侵害と問われれば弁解できませんが)…
【第28回】 2011年10月24日 中野剛志 [京都大学大学院工学研究科准教授]
米国丸儲けの米韓FTAからなぜ日本は学ばないのか
「TPP亡国論」著者が最後の警告!
…からの引用だそうです。
**************(以下引用)****************
たとえばカナダでは、ある神経性物質の燃料への使用を禁止していて。同様の規制は、ヨーロッパや米国のほとんどの州にある。ところが、米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとして、ISD条項に基づいてカナダ政府を訴えた。そして審査の結果、カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払った上、この規制を撤廃せざるを得なくなった。
また、ある米国の廃棄物処理業者が、カナダで処理をした廃棄物(PCB)を米国国内に輸送してリサイクルする計画を立てたところ、カナダ政府は環境上の理由から米国への廃棄物の輸出を一定期間禁止した。これに対し、米国の廃棄物処理業者はISD条項に従ってカナダ政府を提訴し、カナダ政府は823万ドルの賠償を支払わなければならなくなった。
メキシコでは、地方自治体がある米国企業による有害物質の埋め立て計画の危険性を考慮して、その許可を取り消した。すると、この米国企業はメキシコ政府を訴え、1670万ドルの賠償金を獲得することに成功したのである。
要するに、ISD条項とは、各国が自国民の安全、健康、福祉、環境を、自分たちの国の基準で決められなくする「治外法権」規定なのである。気の毒に、韓国はこの条項を受け入れさせられたのだ。
**************(以上引用)****************
まさに国家の主権が侵害される事態が起きているのです。
この論理でいけば、日本が独自に農業を「振興」する目的で、私が主張したような「農林水産業者」への「ベーシック・インカム」という所得再分配政策を実施したり「土地の公有化」を実現したとしても、それが米国(の投資家)にとって不利益だと判断されれば、提訴され敗北し、自主的な「再分配政策」や「公共政策」は実行できなくなってしまいますし、また「国民皆保険制度」も、現在の日本の医療の様に「自由診療」の範囲が極めて限定されている状況は、保険会社への投資家達にとっては、充分に…この
ISD条項によって損害を受けたと主張できる余地がある訳です。
また、納豆などに使われる大豆に対して「遺伝子組み換え食品」を使っているか否か?が日本では「表示義務」になっている事も、表示義務の無い米国の農業への投資家からすれば、損害を蒙ったと提訴できるワケです。
(この「表示義務」の例は、有名なHPなので紹介するまでも無いかもしれませんが…「
サルでもわかるTPP・第7章TPPと遺伝子組換」…からの援用です。まぁ経済学以外の事実認識としては大いに使えるHPです)
もし
ISD条項が無ければ、これまでも非関税障壁を撤廃せよとの主に米国からの「外圧」は過去にも有りましたが、選挙を意識しなくてはならない【政権】としては、例えば…先程の「大豆の遺伝子組み換え表示義務」にしても、表示義務が無い米国の方が【消費者保護】の観点に立っていないとの立場を示して、ある程度は「外交」を通じて拒否も出来ましたし、場合によっては米国内の消費者団体と協力して、米国内でも「表示義務化」をさせる事で、もはや「非関税障壁」を障壁では無くすという結果を勝ち取り、最初は一国だけの国民擁護政策を【良い意味でのグローバル化】させる事も(可能性としては)出来たでしょうが、単なる国際投資家の利益の為だけの
ISD条項が盛り込まれれば、これは「圧力」ではなく「強制力」になりますから、その道すら断たれたも同然です。
そういう意味で、単なる関税撤廃の国際条約と、
ISD条項が有る現状のTPPの枠組み(TPPに条項を盛り込んだのは米国)とは、一線を画すと言って良いでしょう。
だからといって(上記を区別する事によって)誤解しないで欲しいのは、私は…こういう現状の非関税障壁「一般」を一律に排除しようというTPPの【枠組み】を肯定したり推奨する立場では有りません。
(また、これまでの出鱈目農政を改めて国内第一次産業の抜本的な振興策を示さないままの今の【政権】が、これからの「交渉」で内容の改善を図ると素朴に信じられる程の…お人好しでも有りませんから、現在の反対運動の掲げる「交渉参加反対」には一定の理が有ると思います)
しかし、日本共産党員である私の言う事では無いかもしれませんが、これまでTPP反対派は、ただ「反対」しているだけで多数派が結成できると楽観視して、ここまで追い込まれた=国民の多数派が未だにTPP賛成で、交渉参加にまで時間が無く、更に反対派は左右の野合した【烏合の衆】という状況…を創り出したのは、グローバル化に対応した競争力を備えた自主的な産業育成とも両立する「展望」を示さずに、既存の農政の齎した700%の関税という異常にも目をつぶり、ただ単に「反対」だけを唱えていれば(展望に関する議論を成熟させずとも)票が集まると考えてきた、在野の勢力にも責任は大きいと思います。(自省を含めて)
これを挽回するには、私としては(今後は)、ISD条項に【的】を絞って(万一TPP交渉に入ってしまってからでも)問題点を炙り出して、米国の肝である「ISD条項」の削除を求めて、国民世論からの圧力による【一点突破】を図り(ニュージーランド等とも連帯し)、TPP自体を単なる関税撤廃だけの米国の思惑からすれば「骨抜き」にするという点に活路を見出す事かもしれないと考える様になりました。(肉を切らせて骨を断つという)
その為の圧力を政府に強いる為に【必須】の課題は、野合しているだけの烏合の衆の反対派陣営自体の内部で、ISD条項に関する議論だけでなく…「経済・社会の長期構想をどう展望するべきかについて、国民的討論を活性化する事」…によって得られた【展望】を「新しい旗」として掲げる事であり、それによって初めて未だ国民多数を占めるTPP賛成派からも、そういう展望が有るならば…と共感も広がって、賛同も(過半数に)広がるでしょう。
私自身が反省している点は、その「展望」を(自分なりには)模索はしていたものの、それがグローバル化という時代の流れに充分に対応した物になっておらず、せいぜい自国の再分配政策強化による「産業育成策」に留まっていた事です。
「グローバル化」の負の側面に対する対応を、本当に既存の独立した諸国家の自主的な内政まかせの内向きな議論だけで良かったのか?、グローバル化でリスクを負うのは何も一国だけの問題では無いにも関わらず、世界的な規模の敵に対応するのに、それでは…【各個撃破】…されるだけでは…という点でしょうか。
繰り返しになりますが、結論として、今からでも求められるのは、
ISD条項が【毒まんじゅう】である事を周知させてTPPへの【交渉】において合意を拒む様に圧力を掛けつつ、今からでも…今はまだ烏合の衆に過ぎないTPP反対派の中で…「経済・社会の長期構想をどう展望するべきかについて、国民的討論を活性化する事」…によって得られた【展望】を「新しい旗」として掲げる事であり、それによって新たに未だ国民多数を占めるTPP賛成派からも、そういう展望が有るならばと共感を広げる事を目指し、賛同を(過半数に)広げる事でしょう。
TPPへの反対が広がっているというニュージーランドの在野勢力とも共闘していく事で、その成果によっては…現状の米国の資本家のエゴの押し付けに過ぎない「TPPの枠組み」自体が【破綻】もしくは【大幅な変更】を強いられるという…反対運動の【挽回】の可能性は、まぁ過ぎてしまった時間は取り戻せませんが、上記で述べた様な今後の闘いの「戦略」次第では、まだ大いに有ると思います。
しかし、どうも敗色濃厚になりつつある現在においては、もう猶予は無いと言うべきでしょう。
どうか皆が周囲の人達と「対話」する事から始めて、皆が出来る事から声を挙げていくことで、既存の左派リベラル運動の敗北の歴史に、今度こそ終止符を打つ事を希望します。

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