市販の囲碁ソフトで一般の人が普通に手に入れやすいものを、棋力の順に並べると、天頂の囲碁4(Zen)、世界最強銀星囲碁13(北朝鮮で作成、国際大会から締め出されているのか参加していない)、最強の囲碁2012(Crazy Stone)、碁雷神(データの互換性がなく、共通ファイルの読み込み活用ができない)、AI囲碁V19(Many Faces of Go)の順のようです。
ただ、囲碁ソフトの使い方は人によってそれぞれですから、ただ打ち碁対決で一番強いからと云って、最も良いといえるかどうかは人それぞれです。既にお持ちのソフトがあれば、欲目も贔屓目もあるのでお手持ちのソフトが劣るようなことを云われると非常に不愉快に思われる方もおられるかもしれません。
これはあくまでも現在市販のコンピュータ囲碁ソフト同士で初手は天元に限定して対戦した結果の順番です。
概ね傾向としていえることは新しく発売されたソフトが強いだろうということです。(2013年3月時点)
一台のパソコンで動かす市販囲碁ソフトと、300台とか800台のパソコンを繋いで最大限の能力を発揮する大会仕様の最強バージョンとは単純に比較できません。
現に市販版では三番手だった最強の囲碁2012(Crazy Stone)は今年3月17日に電通大で行われた第6回UEC杯コンピュータ囲碁大会では天頂のベースソフトであるZenを破って、19路盤で初優勝しています。元々囲碁ソフトと云えばZenとかManyFaceOfGoが圧倒的に先行していた老舗です。雌伏10年と云いますか、9路盤では力を発揮していたCrazyStoneでしたが、広い碁盤では天頂その他に完全に水を開けられ、もう追いつけないだろうと思われていました。いよいよ底力を見せた感じです。
ただし、これは大会仕様のソフト(64コアマシン用)であって、通常の一台のパソコンではマルチCPUの時代とはいえ、精々4台分相当の分担作業ですから、とても数百台を繋いだ大会仕様とは比べ物にならないし、市販用の簡素化は却って他のソフトよりも難しいかもしれません。
ましてやパソコンの能力そのものはXP32ビット時代から7の64ビット時代に変わったほどの劇的な変化は8にもありませんから、弁当箱の大きさが変わらないのにおかずのソフトだけを何倍にもすることはできないのです。
大会仕様の本体は相当なことができるところまで進んでいますが、市販版は一台のパソコンの能力でできる範囲に力が抑えられています。囲碁ソフトを買う人がみんながみんな最新のパソコンを使っているとは限りません。最新のパソコンでなければ動かせない囲碁ソフトでは一部の最先端の人しか利用できないことになります。広く普及させるためにはいろいろなタイプのパソコンでもそれなりに動くような仕様で出さざるを得ないわけで、いきなり最強のソフトをというわけにはいかないのです。せめて競争他社よりは少し強いものが理想的で、自社新製品を出すたびに少しずつ他社製品を追い越していればよいのです。
出しても売れなければ会社としては意味のないことですから宣伝効果の上がるタイミングを見ているのでしょう。
四子局でZen(天頂ではありません)に勝って、Crazy Stone(最強の囲碁ではありません)に負かされた24世石田秀芳本因坊の感想ではCrazy Stoneは「定石に明るいような気がする」(NHK教育囲碁ホーカス)とのことでした。Zenは一手一手目いっぱい時間を使って検討しているのに対して、Crazy Stoneは形の決まっているところはノータイムでぽんぽん打ってくるのでそんな印象なのでしょう。
開発者のレミー・クーロンさん(フランス リール大学)は「まだ人間相手では、コウ争いや攻め合いに課題が残っている」(NHK教育囲碁ホーカス)として、さらなる飛躍を誓っていた。
内ダメと外ダメの関係とか、損コウとか、フリカワリとか、人間ならできそうなことでも、コンピューターに作業手順を示す作文や言葉の定義づけとか、なかなか厄介らしい。つまり、同等の価値の見合いとか、同じ座標でも手順前後とか、コンピューターが苦手そうなのではなく、状況が毎回違っても最善の作業手順を作文して指示することが難しいのです。
プロの碁で実践に詰碁はできにくい。詰碁と云えば創作詰碁のことです。これには打ち碁とは別に専用の詰碁ソフトが必要です。
打ち碁ソフトについてくる付録の詰碁では問題になりません。書籍の詰碁には、はるかに立派な作品がいくらでもあるので、あれも解けないこれも解けないというレベルでは意味がないのです。
専門の詰碁ソフトは作っても売れませんから、開発費をかけて詰碁ソフトを作らせてくれる気のいい会社はないわけです。
詰碁以外にも囲碁棋譜のデータベースとか、形勢判断など、市販のソフトには特徴のあるものがあります。
解析機能もその一つです。天頂の囲碁4は次の一手候補の上位5位がシュミレーション回数と評価値(地合いの優劣)で表示されます。
最強の囲碁2012は20サンプルがきっちり取り上げられ、着手の得点も100点満点表示される。
相手の着手に対してどこに打つのが最善だったかも着手ごとに指摘してくれる。当たり外れはあるが一応参考にはなります。解析が最も充実しているのは最強の囲碁です。
sgfの共通ファイルにして最強の囲碁で読み込めば、他のソフトの着手分析を共通の得点で評価してくれるので比較もしやすいです。ただ、格上の棋力のプロの着手分析をして、こう打った方が最善だと指摘されても、にわかには信じがたい点もありますが、臆面もなく言い切るところが面白いです。
銀星囲碁は棋譜のスキャナーができるので入力の手間が軽減されます。コンピュータ同士対局ソフトもあって、マルチ機能という面では最も充実しています。
AI囲碁V19は他のどのソフトよりもプロの指摘する次の一手を当てたのですが、実践では最も弱かったです。正解を見つけ出す独特の方法を取っているらしく、モンテカルロ法とのハイブリッドとウィキペディアは紹介しています。折角見つけた最善手を継続することができなくて、棋力の違う人が組んでペア碁を打っている感じです。発展途上だが、将来大きく飛躍するタイプかも知れません。
囲碁は置いた手が動かないし、後戻りもしませんから、済んだ手段は消えても構わない。要するにメモリーを上書きで使えるので、処理スピードさえ速まれば、その先に正解を見つけ出すことも可能かもしれません。
口で言うほど単純じゃないですが、動きを伴う将棋の方が早くプロの領域に近づけたのに、動かない、後戻りしない囲碁がなかなか歩みがのろいのは、コンピュータチェスソフトのような先行したお手本がなかったからかもしれません。
勿論、一路増えるごとに膨大な順列組合せが発生して、初期のソフトでは手に負えなかったのでしょうが、これからのコンピュータの処理スピードの向上、CPUの多頭化は、まさに囲碁ソフトのためにあるといってもいいでしょう。
初手天元戦打ち込み十番碁は、最強の囲碁2012と天頂の囲碁3でした。すでにこの対局は十番すべて打ち終わりました。13路対局では最強の囲碁2012が二子に追い込まれましたから、19路でも圧倒的な実力差をつけられていると思っていたのですが、結果は結構伯仲でした。
第2回初手天元戦打ち込み十番碁
最強の囲碁2012五段無制限 白番天頂の囲碁3(五段格以上)120秒
手合 | 黒番 | 白番 | 勝敗 | 手数 |
第1局 | 最強2012 | 旧版天頂3 | 白33目半勝ち
| 260手 |
第2局 | 旧版天頂3 | 最強2012 | 白33目半勝ち | 186手 |
第3局 | 最強2012 | 旧版天頂3 | 黒3〜10目半勝ち | 209手 |
第4局 | 旧版天頂3 | 最強2012 | 黒24目半勝ち | 312手 |
第5局 | 最強2012 | 旧版天頂3 | 白24目半勝ち | 328手 |
第6局 | 旧版天頂3 | 最強2012 | 白8目半勝ち | 218手 |
第7局 | 最強2012 | 旧版天頂3 | 白38目半勝ち | 318手 |
第5局のb | 最強2012 | 旧版天頂3 | 白4目半勝ち | |
第8局 | 旧版天頂3 | 最強2012 | 黒37目半勝ち | 322手 |
第9局 | 最強2012 | 旧版天頂3 | 黒5〜18目半勝ち | 217手 |
第10局 | 旧版天頂3 | 最強2012 | 白4目半勝ち | 242手 |
成績 | 4勝 | 7勝 | 旧版天頂6勝 | |
| 7敗 | 4敗 | 旧版最強5敗 | |
次回は最新版の最強の囲碁(CrazyStone優勝記念版)と天頂の囲碁4の初手天元戦打ち込み十番碁を始めたいと思います。すでに第4局まで済んでいますが、意外に結果が偏って、天頂がカド番に追い込まれました。実際のところは100局くらいテストしてみないと分かりませんが、新しく出たソフトほど強い傾向があると云えるかもしれません。

para1002n(ぱら仙人)
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